ムール貝の白ワイン蒸し
無事にIKEAデビューを果たした私達は、大介君の運転で業務用スーパーに寄ってもらった。
急遽決まったBBQの足りない肉の分を埋めるべく冷凍コーナーで大量のムール貝を買う。胃袋に限界が無い『チームわらし』の面々の為に今回はムール貝を酒蒸しにするのだ!!!
それでも足りなかったらパスタを投入してボンゴレにしてしまえば良いもんね。
「のりちゃん。のりちゃん。」
「ん~わらしさまどうしたの?」
「アイスも買っていい?」
さっきソフトクリーム食べたばっかしなのに、5リットルサイズのデカイアイスクリームを抱えて走ってきたわらしさま。
「アイス買ってもいいけど、その大きさはうちの冷凍庫に入りきらないから2リットル2個にしてくれないかなぁ。」
「あ、そっか。替えっこしてくる。」
てててて~っと走って行こうとするわらしさまに
「わらしさま、お店の中走っちゃダメだよ。急いでないからゆっくり選んでおいで。」
「は~い。」
ゾロゾロとみんなアイスクリームコーナーに移動して行った。チョコがいい、バニラがなどとそれぞれの主張をしている。うん。冷蔵庫に入る分だったらいくらでも買えばよいと思うよ。どうせわらしさまが稼いだお金だもの。
その間に冷凍のフライドポテトを探す。普段来ないお店の陳列ってどこに何が置いてあるか分からなくてウロウロ行ったり来たり探すのに手間取るよね。
結局、バニラもチョコも持ってきた3人は新たに買い物かごを取ってきたようだ。そうだよね。私の持ってる買い物かごムール貝とフライドポテトでパンパンだもん。徒歩で買い物に来てた時にはこんなに大量の食糧を買い込むことが無かったから、車って便利だなぁってしみじみ思ってしまった。
業務用スーパーから帰ってきても、まだ胃袋の中は消化されてないけど、ボチボチとBBQの準備を始める事にした。
もう今日はチビチビお酒を飲みつつダラダラ肉を焼こう。何でもない日の気取らないBBQだ。
『チームわらし』はダイニングテーブルにマイ包丁を持って並び野菜を切ってくれている。他に切るものが無いか聞きに来たカハクちゃんがニンニクをみじん切りにしている私に、不思議そうに問うた。
「のり子ちゃん、その大根の切れ端どうして水につけているの?」
「これはね大根の葉を育てているんだよ。」
「それならすぐに大きくしてあげるよ。」
「これはね、のんびり育っていくのを眺めたいからこのままでいいよ。」
「ふ~ん。」
ベランダガーデニングならぬキッチンガーデニングなのだ。豆苗も2度は収穫できるから包丁で切った後の根っこ付きの袋もキッチンの窓際でお水を入れて育てちゃうもんね。ビンボー臭いと笑われたって良い。キッチンガーデニングは、朝起きて成長具合を確かめるのがお手軽に楽しめるのだ。
誰が一番沢山野菜を切れるか競っている『チームわらし』は、なんでもゲーム感覚で楽しめる遊び名人だと思う。そして大介君は自室に追いやられている。朝方までゲームに付き合わされていたんだから少し惰眠を貪ればいい。
シチュー鍋にオリーブオイルを入れて温めみじん切りにしたニンニクで香りをつける。冷凍のムール貝を投入して白ワインをぶっこんだら蓋をしてコトコトする。冷凍のムール貝は身が小さいから物足りないって人もいるけれど、生のムール貝と違って貝の表面をたわしでこすって汚れを落とさなくていいし、ボイルしてあるから温まれば出来上がりだし、身が小さい分たくさん鍋にぶっこめばいいのさ。
野菜を切り終わって、スマホでゲームしていた3人が同時に
「「「あっ!!!」」」
と叫んでててて~と走ってきた。
「「「今日のBBQローズガーデンでやりたい。」」」
スゲー前のめりに3人が異口同音。仲がよろしい事。
「じゃぁ、BBQコンロとか運んでくれる?」
「「「は~い。」」」
いそいそと3人がローズガーデンにBBQグッズを運んでいくのを尻目に私はフライドポテトを油で揚げた。このフライドポテトは、ムール貝の鍋に突っ込みながら食べるから塩は振らない。レモンはお好みで付けてもらう。
「のり子さんこんにちは~。」
「チコちゃんいらっしゃい。」
「兄さまから、BBQ用に日本酒を持って来いとLINE来たので持ってきました。」
「ありがとうね。今日はローズガーデンの方でやるからそっちに運んでくれる?」
「は~い。」
夕焼けが赤から紫に変わる頃には、皆でチビチビお酒を飲みつつ肉を焼いたり、ムール貝をぱくついたりしてまったりとしたBBQを楽しんでいると、何やら人だかりが出来始めた。
「ちょっ。皆お酒隠して。」
慌てて『チームわらし』を振り返るといつの間にか大人サイズになった4人がスマホをスチャッと出して何やら待機している。
「大介も早く起動させろっっ。もうすぐメガモンスターが出現する。」
あ、歩くだけでモンスターが倒せてツボも割ってアイテムゲットするアレのイベントする為にここでBBQだったのね。しかし焦ったわぁ~。




