IKEAのソフトクリーム
拙作をお読みいただき、ブックマーク、評価、感想ありがとうございます。なんと、総合評価が7000pt超えました。ハロウィンが終わる前にお礼投稿出来て良かったです。BBQと台所栽培している大根の葉っぱの行方まで年内に書けたらいいなぁと思っていますが、覚書から漏れてる事を改稿作業しつつ『かはくちゃんの少し不思議なハンドメイド』も年内にはもう1話書きたいし、「白銀の墟 玄の月」11/9発売の3〜4巻も読みたいので、ショートスリーパーになりたいです。(憧れ)
「大介起きろっっ。」
スターンと襖を開けて僕に叫ぶわらしさま。あれ?10時出発ならまだ早いんじゃないかな?昨日も狩りに突き合わされて明け方までプレイしていたからまだ頭が働かない。起きがけで声もうまく出ない僕に、業を煮やしたわらしさまがずんずとロフトベットの梯子を上ると、勢いよく布団をべりっと剥がされた。
「おはようございます。今何時ですか?」
「7時。」
「今起きたら10時の出発まで暇を持て余しますよ。まだ狩り足りないんですか?」
「かはくちゃんが、土、日、祝は9時オープンだって教えてくれたんだ。」
嗚呼、巷では今日祝日なんですね。カレンダーが関係あるのはイベント発生の時だけって言う僕らにはノーチェックな案件でした。
「わらしさま~。朝ごはんまだ出来ていないから、大介君の事もう少し寝かせてあげて。どうせみんなで遅くまでゲームやってたんでしょ?」
開けっ放しの襖のせいで台所からからのり子さんの声が聞こえてくる。まだ煮炊きする香りはしないから今朝の朝ごはんの予想がつかない。勢いをつけて起き上がった僕は、
「顔洗ってきます。」
「駐車場に入るまで物凄い渋滞するらしいから急いで支度しろよ。」
低い声で捨て台詞を残すとあざといくらいのあどけない声で
「のりちゃ~ん。ボクお手伝いするよ~。」
着替えた僕はわらしさまの後に続いて、自分の部屋から出るとのり子さんに挨拶をし、ダイニング側のドアから洗面所に続く廊下を歩く。この家玄関からどの部屋に行くにしてもリビングダイニングを横切らないと行けないんだよな。荒ぶる魂(反抗期とも言う)の少年にはウザイ構造だと思う。
顔を洗ってダイニングテーブルの自分の席に着くと、フルーツグラノーラのココアかけだった。あれ?これだけ?早起きしたのに?
「大介君。フルグラだけ?って思ったでしょ。今日はみんな買い食いに燃えてるからこれでいいんだよ。」
「そうだぞ。ソフトクリームの他にもホットドックやミートボールも食べなくちゃいけないんだからな。」
「みんなって……。『チームわらし』も行くんですか?」
「そうだぞ。夜はバーベキューなんだからな。ねっのりちゃん。」
「今度からバーベキューはお出かけじゃない日にしてね。あるだけのお肉はタレに漬け込めたけど、足りない材料を業務用スーパーで買って来なくっちゃ。あやうくショボいバーベキューになるとこだったよ。」
「は~い。」
IKEAの滞在時間を短くしたくなくて前倒しなスケジュールにしたのか。納得。
ちっとも進まない渋滞の列をしり目に、わらしさまは場所取りをして先にレストランでぱくつき始めた『チームわらし』のグループLINEに上がってくる画像をのり子さんに1つ1つ見せてはどんな味なんだろう?とウキウキしている。1秒でも早く駐車場に向かえとごねられなくて本当に良かった。
思ったよりも『チームわらし』と合流できた僕達は、買い物の前にわらしさまの買い食い魂をある程度満足させる事にした。
「のりちゃん。のりちゃん。悠ちゃんはソフトクリームがおススメって言ってたよね。50円でソフトクリームが食べれるんだねっっ。何個食べよう。」
「溶けちゃうから1個ずつでいいんじゃないかな。」
悠さんは味よりコスパでおススメしたんだと思った。食べた事無いけど。
黙って二人の後ろに立っていると、
「でもさ、わらしさま普通のソフトクリームはいつでも食べれるから、こっちのハロウィン限定にしたら?」
「うわぁ。ピンクのお化けが黒い帽子かぶってる。」
きっとわらしさまは目をキラキラさせてるんだろうな。ピンクならイチゴ味だろう。ニコニコ笑顔なのり子さんがくるりと振り返った。
「大介君はカップに入ったお化けにする?イチゴソフトにする?」
50円のソフトを頼む選択肢は無いようだ。
「目玉を食べる気にはなれないのでイチゴソフトでお願いします。」
「「「「大介は意気地なしだなっっ。」」」」
いつの間にか場所取り3人組も集まってきてお化けソフトを注文していた。
この時期は飲食店のアトラクションとして、棺桶、こうもり、蜘蛛の巣、ミイラ、お化けがデコレーションされているメニューが多いんだからまだかわいい方なのだろう。
味よりヴィジュアル重視ですよね。わかります。
ミートボールやサーモンなどは冷凍が売っているから買って帰ろうと、買い食い魂よりも、初めてのIKEA探検に没頭し始めた3人を追いかける僕。のり子さんはキッチン用品コーナーを物色している。みんな自由だ。のり子さんの元に見つけた商品を持って行ったり腕を引っ張って現物を見せたりして買ってアピールをする度に却下されていた。
家具屋に来たはずだったが、結局この日購入したのは、数々の食材と、のり子さんが抱きしめて離さなかった白熊のぬいぐるみだけだった。




