鉄板ナポリタン
拙作をお読みいただき、ブックマーク、評価、感想、誤字脱字報告ありがとうございます。又、ローファンタジー日間ランキング100に何度かランクインさせていただきありがとうございました。今回作中に出てくるゲームは実在しませんのであしからず。
今晩から1週間イベントがあるから合宿をしたいとわらしさまが鼻息荒く告げてきた。
「のりちゃんも、専業主婦になったんだから一緒にイベントに参加してよ。」
「う~ん。わらしさま達と違って私、睡眠取らないとミスプレイが増えるから足手まといにしかならないと思うよ?」
「大介は3徹余裕そうだよ。のりちゃんも仕事行かなくなったんだから寝なくても平気じゃないの?」
「イヤイヤ、歴史上の拷問のメニューにも”寝かさない”と言う項目が存在していたからね。それから男性と女性じゃ体力も違うからね。」
「ふ~ん。そうなんだ。」
「カハクちゃんとチコちゃんは女性だけど人外だからね。そこを基準にされるととっても困るからね。」
ガチ勢で24時間戦える彼らと対等についていけてる大介君はもう人外かもしれない。イベントの下準備とアイテムなどを『補充』と言う名の課金でクリックしまくっているわらしさまのモニターを背後から眺める。自分のスマホでそのゲームをwikiってみると、シナリオライターが私が一時期ドはまりしていた小説家だったことが判明した。高校在学中に3つの賞を取り、西尾維新にも負けず劣らずの筆の速さに当時既に社会人だった私は戦慄を覚えた。そう言えばあんなにドはまりしていたのに新刊チェックとかいつの間にかしなくなっていたなぁ。
今の時代読める文章が氾濫しているから書に対しての渇望感が薄れている。戦時中に読んだ1冊の方が今の時代の100冊よりも濃厚だったという様な意味のエッセイを思い出す。
どんどん新刊が発売され、売れてる作品は意味もなく話を引き延ばされるから飽きる。完結を読まずに途中でご無礼させてもらう作品が大人になって物凄く増えた。ゲームだってそう。途中で飽きてエンディングを見ていない作品がどれほどあるんだろう。作り手の皆さんには申し訳ないけど、我慢が出来ない大人になってしまった。反省。
ファンであった作家のシナリオならばプレイせねばなるまい。早速インストールして攻略サイトを閲覧する。フハハ。私はネタバレ全然OKだもんね。と言うか展開を知って安心プレイをしたい派。フムフム。キャラクターを自分で選べるんだ。最近ガチャのリセラマばっかりだったから自分好みのキャラクターを選択できるのは嬉しいね。へ~モンスターをテイムして冒険をしていくアクションRPGなんだ。アクションは苦手だけど、モンスターは指示だけ出せば勝手に戦ってくれるみたいだから何とか操作できるかな?
思いの他のめり込んでしまって気が付くばとっぷり日が暮れていた。
ヤ バ イ。夕飯の支度していない。フードファイターな『チームわらし』の胃袋を満たす為に今から米を炊いていたら間に合わない。
ダダダっと走ってキッチンのストックを確認すると、まとめ買いしたパスタの大袋を発見。良かったぁ。何とか今晩を乗りきれそう。
「のりちゃん、ボクお手伝いする事ある?」
なんていいタイミング。『補充』と言う名の課金作業はとっくに終わっていたらしい。
「わらしさま、大鍋にお湯を沸かしてパスタを茹でてくれる?」
「アイアイサー。」
わらしさまがパスタを茹でている間に、赤いウインナー、玉ねぎ、ピーマンを大量に切っていく。温めたフライパンにバターを溶かしまずは、斜めに切ったウィンナーを炒める。火が通ったら、薄切りした玉ねぎを加え、しんなりしてきたら千切りピーマンを投入。
全体に火が通ったところで、ケチャップで下味を付ける。
「のりちゃん、パスタ茹であがったよ~。」
「ざるに湯切りして、今度は卵を4個割ってかき混ぜてね。」
湯切りしたパスタを具材と混ぜる。水気が無い具材なのでパスタと混ざるのに少し時間がかかるけど根気よく混ぜて更にケチャップをかけて、全体に赤色が行きわたったら真ん中にパスタを集めてフライパンのフチをドーナツ状に空ける。
「わらしさま、フライパンの空いているところに卵液をぐるっと流し込んでね。」
「イエッサー。」
流し込んだ卵が半熟になったら鉄板ナポリタンの完成。本当はステーキを乗せる鉄板に一人ずつ作るメニューだけど、大食いな『チームわらし』の面々にそれをしていたら間に合わないもんね。鍋敷きの上にドンとフライパンを置いてタバスコと粉チーズはお好みで。
いつの間にかダイニングテーブルの指定席にみんな着席していた。
……。フライパン何回分鉄板ナポリタン作れば足りるかな?今のうちに夜食用にお米も炊いておこう。こっそり自分用に鉄板ナポリタンを取り分けてチョイチョイ摘まみながら、予備のフライパンで鉄板ナポリタンを作り続けた。




