ケバブ
拙作をお読みいただき、ブックマーク、評価、感想ありがとうございます。毎度おなじみのROM専に戻ります詐欺が続いてしまいました。何故ストックが無くなって書ききったぜと思うたびにちょろちょろと末席にランクインしてしまうのでしょうか。でも自分が読者だったらお礼投稿してほしいもんなぁと言う思いだけで書きました。
新聞の集金に来たおねぇさんが良かったらドウゾと『ミニチュア展』のチケットをくれた。わらしさまと大介君は、男同士の外せない用事があるそうで、遊びに来てたカハクちゃんが前のめり気味に食いついてきたから女子2人で見に行くことにした。
思い返してみればカハクちゃんと2人きりでお出かけするのはお初。ウキウキしてしまう。お出かけ当日カハクちゃんは成人女性のサイズで現れた。確かに平日の昼間に小学生低学年の子供を連れ歩いてたら変だもんね。公式サイトで見てもあんまり詳しく紹介してなかったからどれくらい規模の展覧会なんだろうねぇなどと、行く道語り合いながらカハクちゃんと会場入り口前で貰ったチケットを渡す。
「全作品撮影可能ですのでSNSなどにUPして下さいね。」
受付の男性がにこやかにそう告げた。
撮影OKって最近多いけど、そういう展覧会はカメラが趣味の団体さんが作品前を陣取っていて順番待ちに時間が取られて疲れるんだよねと一瞬ひるんだ。し か し今日はカハクちゃんと来ていたのだった。そう。カハクちゃんは恐ろしくビジュアルに拘る子であった。
1.5センチ程度の小さなフィギュアが日常に使われている物や、食品サンプルなどを身近にある一コマに見たてられた作品が展示されている場所で、どの方向からどのアングルで撮影するか鞄からスススとスマホを取り出したカハクちゃんの異様な気迫に圧倒されてしまった。
壁にはその作品を撮影したものが所狭しと展示してあって、どこにフォーカスあてるかで全然雰囲気が変わってしまうんだなぁと実物と写真を思ったことは、マクロレンズ付けないとピンチアウトするだけでは限界があるって事。なので実物を撮影する事を早々に諦めた私はカハクちゃんが撮影をしている周りの作品をウロウロと行ったり来たりして時間を潰した。
一つ一つの作品をじっくり見ると、作品名がおやじのダジャレみたいでクスッと笑える。この写真家の人はとてもユーモアがあって遊び心満載だ。女性には無い感性だと思う。引き出したトイレットペーパーが雪山になっていてスキーをしていたり、黒いテーブルの上にスプーンから散らばった砂糖が天の川になっているのをソーサーから天体観測してる人が居たり一つ一つの作品からストーリーがいくつも作れそうでいつまでも眺めていたくなる。
ふと気が付くとカハクちゃんは随分順路を進んだ展示物を熱心に撮影していた。写真よりも実物を撮影することに重きを置いているみたい。
帰ったらきっと自分でも作品作っちゃうんだろうなぁ。
思う存分作品撮影を堪能したカハクちゃんはグッズ売り場であれこれ物色し始めた。せっかくだから写真集を数冊買って行くことにした。まだ欲しかったら取り寄せればいいもんね。
「のり子ちゃん楽しかったね。」
「カハクちゃんノリノリで撮影してたもんね。満足いく写真は撮れたの?」
「うん。」
「じゃぁ、ケバブでも食べながらカハクちゃんの写真見せてもらおうかな。」
「ケバブ食べたいっっ。」
あの店は確か17時からだったからタラタラ歩いて行けばちょうどいい時間になるはずだぞっとタラタラぺちゃくちゃ歩いてお店に到着したらシャッターが閉まっている。
あれ?ここ日曜定休だから今日は営業日のはずなのにWHY?
「のり子ちゃん閉まっているね。」
「営業日のはずなんだけど、おかしいなぁ。カハクちゃん他に何か食べたいものある?」
「う~ん。何がいいかな……。」
二人で途方に暮れていたら向かいの歩道でタバコを吸っていたおじさんが声をかけてきた。
「そこのお店?」
「そうなんですけど、お休みのようだから他のお店に行こうかと思って。」
「あと10分で来るよ。さっき電話したらそう言ってたから。」
「ありがとうございます。」
なんであのおじさんケバブ屋の店主に電話したんだろう?不思議に思っていたら、ケバブ屋のタラタラ歩いてご出勤。遅刻しても走ってこないんだ。お国柄なのかしら。
店の前で待っていた私達に流暢超な日本語で
「ちょっと待ててね。」
軽い。シャッターを開けた店主の後からさっきのおじさんが食材を台車に乗せて店内に入っていった。業者さんだったのかぁ。しばらくしてお店に入ってきていいよと呼ばれたので早速注文をする。
「ケバブのバターライスをスープ付きで。」
「ゴメンナサイ。スープまだ無い。」
どうやら17時OPENは17時から仕込みと言う意味だったみたい。お詫びのつもりなのかいつもより多くよそわれた辛いソースをチマチマ混ぜてカハクちゃんとクスクス笑って今度はみんなでもう少し遅い時間に食べに来ようねと約束をした。
スピンオフは飯テロになりそうもなかったので「かはくちゃんの少し不思議なハンドメイド」として別掲載にしました。
おつきあいいただきありがとうございました。




