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座敷童が小豆ご飯に飽きたと言っています。  作者: ヴぃc
大介のプロポーズ大作戦
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トマト風味のシーフードパスタ後編

「京極院先生新作読まさせていただきましたが、このテイストのままでガンガン書きまくって下さい。」


 『京極院』は僕のPNです。本名が普通っぽいからつけたPNは、若干厨二臭がするかもしれないが反省もしてない。キリッ。冷静になって考えてみたら、座敷童が住んでいる家に下宿している僕にも幸運はもたらされているのだろう。毎日下僕扱いされたとしても、幸運は訪れる。まだ1冊も売り出されていないのに新作の出版まで決まったという事は、僕自身に収入が発生するっていう事だ。

 のり子さんの憎き元カレに会ったあの日、わらしさまに事のあらましを報告したところ


「大介はのりちゃんの事が実は好きなんだろ?」

「すいません。わらしさまの大事なのり子さんの事がいつの間にか好きになっていました。」

「ボクの大好きなのりちゃんに惚れない奴なんていないぞ。とりあえず今は勝の事は放っておいて今は新作をガンガン書け。」


 出ました!いつもの無茶振り。PCの前に座っているだけでプロットが浮かんでくるわけもなく、こんなストーリーいいんじゃね?ってひらめいたつもりでいたプロットの文章を起こしてみたら昔読んだ作品のあらすじだったわ。とがっくりし物凄い産みの苦しみにもがき七転八倒して執筆した2作品はどちらも編集さんに好感触だった。

 何せ時間だけはたっぷりあったから作者さんの「多忙につき更新が亀になります。でもエタリません」なんて前書きは僕には存在しない。そして1時間おきに僕の部屋に進行具合を確認にくる鬼マネージャーの様なわらしさまのお陰でキーボードをひたすら打ち続けた。労働奴隷になった気分を骨の髄まで味合わせてもらった日々にさめざめと涙が出る。


「今度の出版記念パーティーはTV局からも取材が来ますからジャンジャン宣伝してもらいましょうね。」

「緊張してどもったり、つっかえたりする自分しか想像できません。」

「その方が初々しくていいですよ。」


 対人恐怖症を克服しきれていない僕が大勢の前でフラッシュをたかれ眩しさにひるまずインタビューに答えられるんだろうか。不安でしょうがない。

 編集さんとの打ち合わせも終わって青ざめた顔で帰ってきた僕を見てわらしさまが、


「大介なにか心配事か?」

「実は出版記念パーティーにTV局からも取材が来るらしいんです。」

「これからいくらでも取材が来るようになるから練習だと思って気軽にいけよ。ここの店、かはくちゃんのおススメだから予約してカットして髪も染めてもらってこい。」

「……。」


 知らない美容院の椅子に長時間座っていなくちゃいけないなんて拷問でしかない。行かなかったら行かなかったでもっと恐ろしい目に合うのは目に見えているので僕は素直にカハクちゃんおススメの美容院に断腸の思いで予約を入れた。

 予約当日、不安過ぎてのり子さんについて来てもらった。こんなふがいない所ばかり見せていてはいつまでたってものり子さんに告白なんてできないけど、怖いものは怖いんだ。

 美容師さんに仕上がりを鏡で見せられた時にはやっと帰れると言う安堵感でいっぱいだった。


「大介君かっこいいよ。」


 のり子さんが労いの意味を込めて褒めてくれた。


「わらしさまも満足してくれますかねぇ?」


 わらしさまにお土産のマカロンを買って帰ると、


「雰囲気イケメンくらいには変身できたな。」


 雰囲気だけでもイケメンに見えるんだったら良かったと胸をなでおろした。

 出版記念パーティー当日。緊張しすぎて朝ごはんが喉を通らない。


「大介君空腹で出席したら貧血で倒れちゃうよ。スムージー作ってあげようか?」

「のりちゃんボクも飲みたい。」

「冷凍フルーツ切らしてるから、粉の方だからね。」


 のり子さんは美容ドリンクをシェイカーにドボドボ入れてスティック2本分の粉も入れるとシャカシャカ振り、出来たスムージーをわらしさまと僕のコップに注いでくれた。

 緊張してる間にあっという間に夕方になった。スーツに着替えて髪の毛もWAXでセットしていたら、いつの間にか遊びに来ていたカハクちゃんにダメ出しをされ、カハクちゃんがセットしなおしてくれた。今日は嫌に優しいな。

 付き添いでついて来てくれるのり子さんもよそ行きのワンピースに着替えていつもより念入りにお化粧をしていた。いつもは「かわいい」イメージなのに、今日は「綺麗」だ。僕の知らないのり子さんをまた一つ知る事が出来た。いいな。こんな風にいつまでも一緒に過ごしたいな。そうだのり子さんとしたい事を妄想していたら出版記念パーティーも倒れず乗りきれるかもしれない。出でよ我の妄想力。


 司会者の人が僕の経歴と本の紹介を終えると記者会見が始まった。僕はなんとか倒れずに妄想力でこの場に踏みとどまっている。


「ご自分の作品が出版される事についてどう思われましたか?」

「のり子さん!ぼ、ぼくと結婚して下さいっっ。」


 あ、これ全国放送だった。

 こうして僕はのり子さんとの幸せな生活を妄想しすぎて告白をすっ飛ばして公開プロポーズをしてしまったんだ。



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