トマト風味のシーフードパスタ中編
拙作をお読みいただきブックマーク、感想、評価ありがとうございます。又、誤字脱字報告ありがとうございます。見直していても誤字。パソコンで仕事ができないはずです。
最初はおっかなびっくり出かけていた自動車校も免許証を取得する頃には少々の人がいるくらいは耐えられるようになっていた。
わらしさまの指令でミッション免許を取得したので長く車校に通い詰めたから慣れたのだろう。人間て慣れる動物なんだね。
のり子さんの家の裏には新しく大きなガレージが建てられて、小回りが利く小さな車から人外4人も乗せて走れるファミリーカーまで駐車されてる。
どう見ても値段の高そうなその車で庭を練習で運転させられた時には肝が冷えた。わらしさま曰く「これは練習用の車だからいくらぶつけてもいいからのりちゃんを安心して乗せれるくらいの運転技術を身に着けろ。ここにある車はただのおもちゃだと思え。」……マヂ無茶振りがっぱねーっす。ちょっと僕がやさぐてしまったのはしょうがないと思う。
試験場の電光掲示板に自分の番号が表示された時はほっと胸をなでおろした。LINEでわらしさまに合格を告げ帰路へ着いた。
帰宅したら人外4人とのり子さんがガレージに僕を引っ張って行きみんなでちょっとしたしたドライブを楽しんだ。夕飯の時間だから帰ろうとのり子さんが言うのでみんなを玄関先で降ろして僕はガレージに車を停めに行った。手を洗いダイニングに向かうと所狭しとテーブルにご馳走が並んでいた。これからは『アクティブな自宅警備員』に昇格だとわらしさまがふんぞり返って訳の分からない称号をつけてくれた。なんだかんだ言っても僕ってみんなに大切にされているんだなと気付くと不覚にも目にじんわりと涙がにじんできた。会社を辞めてからリアルで感動したの初めてだな。
それから『アクティブな自宅警備員』になった僕はのり子さんと2人だったり、わらしさまと2人だったり、大勢だったり、いろんな場所へ赴きいろんな経験をすることが出来たんだ。そんな経験を執筆して小説になろうへ投稿するくらいテンションが上がっていた。
その頃にはもう僕はのり子さんの事が好きだったんだと思う。ただ、5歳年下の僕の事をのり子さんはきっと弟くらいにしか思っていないと思う。せめて嫌われてはいないだろうと思いたい。
どうしたらのり子さんは僕を「男」として見てくれるんだろう?当時の一番切実な悩みだった。
ある晩わらしさまが僕んお部屋にやってきて
「大介。明日のりちゃんと出版記念パーティーのスーツ注文してこい。」
「のり子さんのせっかくのお休みなのにそれは悪いですよ。」
「四の五の言わずに明日のりちゃんに頼め。いいか、のりちゃんの事しっかり守れよ!」
いつものわらしさまからの無茶振りだった。トホホホ。
断られたらどうしようと、バクバクと暴れる心臓を胸の上から押さえつけ勇気を出してのり子さんにお願いすると快諾してくれた。緊張が収まり我に返った電車の中でもしかしたら『第三者からは僕達カップルに見えるかもしれない。』なんて考えられるくらいには平常運転に戻れた。ヤバイ顔がにやけてしまう。
のり子さんにとってはただの買い物だろうけど僕側からしたらバーチャルデートをしっかり堪能出来てホクホクしていたら、のり子さんが「AirDrop痴漢」にあった。すぐさま設定を変えて僕は無事にのり子さんを守れたはずだったのに最後の最後でのり子さんが半泣きになる事件が起きたん。
「異動で4月からまたこっち勤務に戻ったんだ。休みの日なのに淋しく一人でお出かけか?お前もいい年なんだからいい加減に身を固めたらどうだ?お前の相手をしてくれる奇特な男が居たらいいけどな。」
「大きなお世話よ。急いでるんだから手を放して。」
この無礼な物言いをした男は、のり子さんの元カレだそうだ。僕はオロオロとうろたえる事しかできなかった。悔しい。
のり子さんの事を守れなかったふがいない自分に自己嫌悪しながらのり子さんを盗み見すると、いつも穏やかな彼女からは想像もつかないほどのドス黒いオーラをまとっていた。何とか励まそうと
「のり子さんの作る料理は美味しいし、朗らかだしあの家も居心地がいいですし、きっといいお嫁さんになれます。」
と言うのが精いっぱいだった。
どうしたらアイツにざまぁしてカッコよくのり子さんのヒーローになれるだろう?




