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座敷童が小豆ご飯に飽きたと言っています。  作者: ヴぃc
第1章 アラサー無職彼氏ナシから頑張るゾ
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卵焼きのサンドウィッチ

 朝日が目にしみる。

 慣れない作業に右往左往しながらもなんとか悠ちゃんの案件は完成させれた。まだ手伝ってほしいらしく午後から事務所に呼ばれている。9時くらいまで寝てもバチはあたらないよね?つくづくお布団ってヤツは人をダメにする。


 ~~♪~~♪~無情にも下品なアライグマと自分の名前しか言えない木の宇宙人が出てくる映画の挿入歌が流れてくる。好きなんだよ。ああいう下品なジョーク。しゃべるクマのぬいぐるみも好きだけどさ。瞼がくっついて開くのを必死に抵抗してるけど、そろそろ起きないと。


「わらしさまおはよ~。」

「のりちゃんおはよう。」

「今からブランチ作るから待っててね。」

「は~い。」


 ボーキサイトが溜まったのかまた船が擬人化したやつやってるよ。わらし提督頑張ってくれたまえ。それ私のアカウントだけどな。

 卵焼きを焼いて、パンにバターを塗る。片側にはケチャップとからし。卵焼き、ハム、きゅりを重ねて、こっち側のパンはマヨネーズとからし。学生時代に喫茶店で食べたこのサンドウィッチ最近『ご当地限定シリーズ』でコンビニに売っててびっくりした。炒めたウィンナーと常備菜の人参のマリネを添える。うちのマリネは、レーズンとくるみが入っているから、レーズン嫌いな人には出せれないんだけど、小豆ご飯じゃないからわらしさま的にはOKなはず。


「わらしさまできたよ~。テーブルに運んでね。」

「待って。今戦いの途中。」

「さいでっか。沈没するといけないから夜戦が済んでから来てくれて構わんよ。」

「は~い。」


 ゲームの途中でご飯に呼ばれる苦悩はゲーマーにしか解ってもらえない。私はもちろんせかさないよ。嫁を沈没させられたらたまったもんじゃないもん。紙パックに入ったコーンスープを注ぎ冷凍庫のパセリを振りかけながら生暖かい目でわらしさまを見守ってあげた。


「のりちゃんお待たせ。このお皿運ぶね。」

「お手伝いありがとね。」


 それぞれテーブルに運んで手を合わせる。


「「いただきます。」」


 大きく口を開けてサンドウィッチにかぶりつこうとしたわらしさまは、ハッとしてあわててiPadを取りに行く。


「わらしさま食べながらゲームはダメだよ。」

「違うよ。ご飯の写真撮るんだよ。」


 最近?の妖怪は機械に慣れるのが早いのかな?ゲームと電子書籍以外でiPadを使ったことがない私は、わらしさまの順応性がうらやましい。こだわりがあるのか、お皿の位置をずらしたりしながら真剣な様子でサンドウィッチを撮影している。人参のマリネをもぐもぐしてわらしさまを眺めていると、満足したのか、


「ふぅ~。いい写真が撮れた。いなりのLINEにこの写真送って自慢するんだ!」


 LINEのアカウントまで変更されてたよ。そうだね。毎日小豆ご飯じゃ写真撮る気にもならないもんね。不憫なわらしさま。


「いなりは、毎日油揚げで飽きない。っていうけど絶対強がりだと思うんだ。」


 くぅ。他にもかわいそうな子がおった。


「もしも、稲荷様がうちに遊びに来たら、油揚げ以外のご飯作ってもてなしてあげようね。」


 ちょっとおセンチになったけど気を引き締めて悠ちゃんの勤める事務所にいざ出陣。とは言え迷子検定1級保持者の私は、事務所の最寄り駅の改札で待ち合わせなんだけどね。


 キャッチの人に声をかけられないようにイヤホンをつけて壁を背中にして立っていると、向こうから悠ちゃんが手を振りながら近づいてきたので、イヤホンを外しながら手を振り返した。


「おつおつ~」

「のり子お待たせ。昨日はありがとうね。助かった。さ、行こうか。」


 平日なのに都会は人であふれかえってるなぁなんてキョロキョロしながら悠ちゃんについて行った事務所には、もう他の人が着席してパソコンのモニターとにらめっこしていた。


「林君お疲れ様~。助っ人連れてきたよ。」

「田中さんお疲れ様。どうも初めまして林 拓也(たくや)です。今日はよろしくね。」


 にっこり笑って挨拶する林さんは、眼鏡にネクタイ&ベストのイケメンでした。ある一定の層に凄く人気があるイケメン。眼福です。


「渡辺 のり子です。どこまでお手伝いできるかわかりませんがよろしくお願いします。」


 ぺこりと頭を下げた私の心臓はバクバクしています。










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