手抜き焼きそば
お久しぶりです。「座敷童が毎日小豆ご飯でもいいと言っています。」の完結に伴いこちらも末席ながらランキング入りしていましたので、お礼投稿です。
拙作をお読みいただき、ブックマーク、評価、感想ありがとうございます。
なんだか、体がだるくてご飯を作る気になれない。大介君に言えば作ってくれるんだろうけど、大介君は、わらしさまの指令で、車校に通っている。
あれ程、人と目を合わせず、おどおどしていたのに凄い進歩だと思う。わらしさまは『ヒモの大介』の分までボクが稼ぐと、今日もデイトレードに勤しんでいる。PCのモニターをにらめっこしている様子は、ゲームをプレイしている時と変わらないので、働いている風にはちっとも見えない。
冷凍庫から、焼きそばの麺ともやしを取り出して、麺はチンする。もやしは一旦水洗いしてざるに開けておく。野菜室を覗けばしめじも居たのでしめじも洗ってもやしのざるに乗っけた。大きなフライパンに焼きソバの麺、もやし、しめじ、水、ほんだし、鰹節を加えて蓋をして蒸し焼きにする。
もう一つフライパンを出して、弱火で目玉焼きを焼く。良い感じに半熟になってきたところで、焼きそばのフライパンのふたを開けて塩コショウ、焼きそばソース、ケチャップをかけて混ぜ合わせた。
全く包丁を使わない手抜き料理だけど、これがまた何でか美味しいんだな。
「わらしさま~。今日は手抜き焼きそばだけど、ご飯も食べる?」
「ボク、焼きそば定食がいいな。」
「じゃぁ、お味噌汁も沸かすね。」
「うん。大介も、もうすぐ家に着くって。」
「いいタイミングだったね。」
「のりちゃんお手伝いある?」
ててて~と走ってきたわらしさまに、冷凍ご飯の解凍をお願いした。
お鍋に湯を沸かして、出汁と乾燥ワカメを投げ込む。小皿にお漬物を取り分けて、焼きそばをお皿によそって目玉焼きを乗せた。阿吽の呼吸で、そのお皿をわらしさまが食卓テーブルに運んでくれた。
今日は焼きそば定食だから赤味噌にしよう。味噌を溶き、冷凍庫の刻み葱をお椀に入れてお味噌汁を注ぐと、
「ただいま帰りました~。」
「「おかえりなさ~い」」
大介君が丁度帰ってきた。
ててて~と走って大介君を迎えに行ったわらしさまが、
「大介仮免受かったか?」
「はい無事受かりました。」
「もうすぐ納車されるから、敷地内で練習しろよ。」
「はい。がんばります。」
わらしさまは、何故か大介君に対してはいばりんぼうだ。
「のりちゃん、大介が免許とれたら、旅行に行こうね。」
「えっ?わらしさま家から出れるの?」
「のり子さん、僕とわらしさまが検証した結果、渡辺家の所有物内なら移動できることが分かったんです。」
「そうだよ。のりちゃん、だから大介に車校行かせてるんだよ。」
えっへんと、得意気にわらしさまが背中をのけぞらす。
「そうなのね。じゃぁ、大介君が免許取れて、運転に慣れたらみんなでお出かけしましょう。まずはご飯にしようね。」
「「いただきます。」」
「はい召し上がれ。」
人口冬民ポッドの故障で一人だけ目覚めてしまった青年が、孤独に耐え切れず、美しい女性の冬眠から目覚めさせてしまう話を再生しながら、いつか宇宙旅行にも行けたらいいねなんて盛り上がって、手抜き焼きそばをすすった。
わらしさまは、宇宙船もボクがのりちゃんに買ってあげるからね。大介は操縦覚えろよなんて無茶振りするから、ゲラゲラ笑ってしまった。
引きこもりだったわらしさまと、どこかへ行ける日が来るなんて思っていなかったので、わらしさまに見せてあげたかった景色をあれこれ思い出して心のメモに書き記した。
きっと、稲荷様や、カハクちゃん、チコちゃんも着いて来るだろうから、賑やかな旅行になる事だろう。お弁当のおかずは何にしよう。さっきまでご飯を作るのが億劫だったくせに、ゲンキンな私は、まだ行先も決まっていないお出かけ先の献立をあれこれ考え始めていた。




