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座敷童が小豆ご飯に飽きたと言っています。  作者: ヴぃc
番外編その1
56/93

栗の渋皮揚げ

拙作をお読みいただきありがとうございます。なんと続編のブックマークが1000件超えましたので本編にお礼投稿させて頂きます。久しぶりの大っきいのりちゃん、オッサン臭いです。

 カハクちゃんが生やしてくれた栗の木の下に、いがぐりが爆ぜるほどたわわに実った栗がたくさん落ちている。爆ぜた部分を両足で踏んで、中から栗を取り出す地味な作業を『チームわらし』のメンバーは延々としている。

 相変わらず4人は、誰が一番多く拾えるか競い合っていた。いがぐりで怪我しないように気を付けるのだぞ。

 この収穫対決は、どう考えてもカハクちゃんが優勢だと思う。


「いなり、そのいがぐりは僕が先に見つけたんだぞ。」

「うるさい、早い者勝ちだ。」

「かはくちゃん、あたしの分も託す。」

「まかせて。」


 男女対決になったようだけど、わらしさまと、稲荷様は、足の引っ張り合いが続いていた。協力し合わないと負けちゃうぞ。

 案の定、女子チームの圧勝だった事は言うまでもない。

 栗を水に浸けてしばらく放置プレイ。こうすると、虫に食われた栗だけが浮いてくるから選別に困らない。

 2ヶ月続けて新刊が出た、小さな巨人がバレーコートを所狭しと飛び回るスポ根漫画を見せてあげたら、またもやド嵌りした『チームわらし』のメンバーが、2vs2する為に取り寄せたのはビーチバレーボール。

 球技のセンスが全く無い私は得点表を操作するだけだ。あの前向きで、貪欲に試合にのめり込む小さな巨人大好きなんだよね。

 グッパーでチーム決めをすると、身長制限をつけた線に皆ピタリと大きさを合わせている。

 不正をしないで、正々堂々と戦う為のわらしさまルールだそうな。

 稲荷様は、尻尾に重点的に霊力を注いでいるからちょっと背が高い日本人の成人男性くらいだけど、3食私が作った料理を食べているわらしさまは、MAXアメリカのバスケットボールプレイヤーくらいの大きさに成長していた。暑苦しいから部屋の中ではちびっこサイズになってもらってるがな。

 日が暮れるまで延々とチームをグッパーで変えてはビーチボールバレーを繰り返す4人の体力よ恐るべし。

 昨日の晩仕込んでおいた牛スジカレーを温めて、皆んなで食べた。最近気がついたんだけど、稲荷様は、結構辛いものが苦手だ。やせ我慢して飲み込んでるふしがある。なのでカレーの時は、温泉卵とソースを食卓に置いてお好みでトッピングをする程を装って辛さがマイルドになる様に工夫している。

  寒くなって来たらすき焼きや、水炊きもいいな。漸くクソ暑かった夏も終わりを告げ、秋とは名ばかりの9月が終わろうとしていた。

  ハロウィン用に新しいカボチャレシピも考えなくては。


 ◆◇◆


『栗くり坊主』栗の皮を剥くハサミがあるよと教えられた時には、オレンジカッターをオススメされた時よりも有り難いと思った。

 モチロン人数分購入済みだ。

 今は、せっせと水気を切った栗の鬼皮を皆んなで剥いている。『栗くり坊主』は、楽に剥けるかわりに刃が磨耗するのが早いので毎年買い替えていた。一般の家庭ではこんなに早く磨耗しないだろうけれど、『チームわらし』の面々は初めて栗の渋皮揚げを作った時から栗ご飯よりも魅了されたらしく、秋のお気に入りメニューの一つとなっている。その為にカハクちゃんが栗の木を増やしたぐらいだ。

 だから、栗の鬼皮剥くのは4人とも嬉々として手伝ってくれた。

 後はただただひたすらに低温で揚げて、串が通ったら、油切りをして塩を振るだけの至って簡単なおやつだ。

 渋皮はパリパリで、しょっぱく、中身はホクホクで甘い。正に触感も味覚もスパイラルしている。こういう相反するものが、両立できる調理法は、お子ちゃま味覚の人には不評だろうが、嵌る人には堪らないレシピだろう。

 お土産用にも栗を揚げたから、少々油酔いをしてしまった。

 途中焼き師わらしさまが、交代を名乗り出てくれたが、皮を剥くまで5人でやったので、揚げるくらいは私がしないと、霊力も妖力も上がらないだろうから頑張った。

 そのかわり、自分へのご褒美にキンキンに冷えたビールを用意しておいた。

 まだ暑さ冷めやらぬ初秋に、秋の味覚代表である栗を、甘じょっぱいスパイラルで頂く贅沢。ビールの冷たさに、栗の渋皮揚げの舌を火傷しそうな熱さ。温度差のスパイラルまで加わって、私は、贅沢な休日の昼下がりを堪能した。

 ごめんね。みんな。今晩の夕飯はデリバリーで宜しくね。はぁ〜極楽じゃぁ。

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