ひつまぶし
拙作を読んでいただき、ブックマーク、評価、感想ありがとうございます。原稿用紙4枚くらいちゃちゃーぱんぱーんって書けるだろ?って私が読者なら思います。思いますが、すいません誤字探しに疲れました。
うだる暑さ、風もない炎天下、アスファルトから陽炎がゆらめいている。
そんな昼下がりに長蛇の列。土用の丑の日限定で建てられたテントの中では側溝に炭火を入れた即席の炭火焼き仕様で串に刺された鰻が焼かれている。
並んでるお客さんより、焼いてるおじさん達の方が何倍も暑そう。頭や首に巻いたタオルは使い物にならない程濡れている。
土用の丑の日だけ異様に値上がりする鰻の蒲焼を、それと分かっていても当日手に入れたい赤味噌県の人達。みゃーみゃー市にある有名な鰻の老舗は逆に土用の丑の日は鰻の供養の為休みになる。書き入れ時に休む強気、流石です。
そんな長蛇の列を通り過ぎて私はスーパーの自動ドアをくぐった。
ふぅ。天国じゃぁ。炭火焼の鰻も美味しいけど、すぐ食べるわけじゃない時はパックの鰻の方が美味しいと思う。
お魚コーナーの冷たい鰻の蒲焼きを奮発して4匹買う。わらしさまから生活費を好きに使っていいよと言われているけど、特に今迄と変わりのない生活を送っている。
目的のブツをゲットしたのでそそくさとレジに並ぶ。
いくらパックの鰻の蒲焼きと言えど夕方には品切れてしまうので、今日はこんなかんかん照りの中、真昼間からスーパーに来た。作戦は大成功。鰻の蒲焼きゲットだぜ。
帰る途中ショルダーバッグからペットボトルを取り出して水分補給をこまめにする。500mlなんてあっという間に無くなってしまう。そうは言っても1L持ち歩くのは重い。この暑さだから、みんなも途中でペットボトルを買い足すんだろうけど、自販機で2日続けて生ぬるいペットボトルが出てしまった私は、コンビニかスーパーでしかペットボトルを買わないと決めている。うん。立派な自衛手段だと思う。
日陰が無い道をトボトボ歩いて帰る。サッサと歩けばこの暑さ地獄ともオサラバできるかもと、サッサ歩きしてみたら余計にライフゲージを削られた。かくなる上はノーガード戦法しかない。
「わらしさまただいま〜。」
「おかえりなさ〜い。のりちゃんミルクセーキ出来てるよ。」
「わらしさまありがとうね。」
「今氷も砕くからちょっと待っててね。」
年々わらしさまのスパダリ度が上がって来てると感じる今日この頃。わらしさまは人をダメにする座敷童子だ。
ガガガガと音を立ててブレンダーで氷を砕いたわらしさまは、クラッシュアイスをたっぷり入れたグラスにミルクセーキを注いだ。
牛乳、卵、砂糖を混ぜただけの飲み物なのに、同じ材料のプリンよりサッパリしている飲み物を、ふっとおばぁちゃんが夏によく使ってたなぁと思い出してわらしさまに作って飲ませたら、ド嵌りしてしまった。牛乳は料理にしか使わないので常備しないし買うとしても200mlだったが、今や1Lパックが常備されている。
「わらしさまの作ってくれたミルクセーキ美味しそう。」
「のりちゃんの為に心を込めて作ったよ。さぁ召し上がれ。」
クっ、ちびっ子の癖にチョイチョイ萌えるセリフを挟んでくる。わらしさまのiPad からこっそり電子書籍のアプリを削除したのに、サクッと復元してしまい、私の本棚を漁ってはネタを投下してくる。
物語の中だけでもたまにはキュンキュンしてもいいじゃないか。勝でリアルな恋愛にはこりごりした私で渡辺の家系は終わる。私が居なくなった後わらしさまに美味しいご飯を食べさせてくれる人が見つかるといいんだけど。まぁそんな先の話を今から考えてもしょうがないよね。
クールダウンしたところでお米を5合洗って炊飯器のタイマーをセットした。
鰻の蒲焼きは、買ったけど肝心のご飯が炊けてなかったら目も当てられないものね。
重要な任務は全て完了したのでわらしさまと、スウェーデンのスティーブンキングと謳われた作者監督のヴァンパイア映画を見た。友人が貸してくれた作品だが、初見で全く意味が解らず数回見た後にレビューを読んで原作を取り寄せた作品だ。わらしさまどんな反応するかな?
映像は綺麗だけど設定がイマイチよく分からなかったとボヤくわらしさまに上下巻を渡したら、のりちゃんの意地悪っっと拗ねられた。そりゃぁ私だけ理解できなかったのかと、焦る気持ちをわらしさまにも味わって欲しいもの。
気分を切り替えて鰻の蒲焼きを細切りにしたら、お米の炊けた炊飯器にぶっこむ。沸騰したお湯にうどんスープの素を入れかき混ぜたら急須に移す。
刻みのり、小口切りにした万能ネギ、わさびを乗せたお皿と、赤味噌の麩とわかめが入った味噌汁、お新香を付けたらひつまぶし定食の完成です。
最初はそのまま、次はネギとわさびで、その次はネギとわさび、のりにだし汁をかけて、最後はお好みで食べるがお作法だけど、私はだし汁一択。
わらしさまはわさびを乗せすぎたみたいで鼻がツーンとすると涙目になっていた。
食べそびれたので、のりちゃんとわらしさまに美味しく食べてもらいました。




