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座敷童が小豆ご飯に飽きたと言っています。  作者: ヴぃc
第3章 たくさんの幸せを見つけるゾ
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スペアリブのコーラ煮

 今月2度目の3連休も最終日。あれからも、パソコンが届いたり、QUOカードが届いたり、本当にわらしさまが手当たり次第に懸賞サイトを渡り歩いていたのがうかがえるラインナップだった。


 段ボールが届く度に、写真を撮ってはLINEのタイムラインにせっせとあげていた。もうみんなわらしさまを『ヒモ』だなんて思ってないよと何度言い聞かせてもかたくなに写真を撮り続けた。こんなにわらしさま頑固だったっけ?


 フライパンでスペアリブに焼き色をつけている『焼き師』わらしさまは、到頭私の背を追い越してしまった。一体どこまで成長するのか、『勝事件』から2週間以上が経つのに、もっと妖力を高めなければのりちゃんを守れないと躍起になっていた。




「のりちゃん、スペアリブ焼けたよ。」


「後は茹でこぼして、コトコト煮るだけだから、好きな事してていいよ。」


「のりちゃん、本当にコーラでお肉煮るの?」


「そうだよ。コーラ凄いんだよ。」


「お肉がおやつみたいになっちゃわない?」




 でかい図体で台所をウロチョロされると狭くてしょうがない。




「わらしさまちょっと狭いから味付けするまで見届けたいなら、お鍋が見えるぎりぎりの大きさになって。」


「は~い。」




 小さくなるのが不満なのか唇をとんがらせながらも小さくなってくれた。


 茹でこぼしたスペアリブにコーラ、塩、醤油、酒を入れてアルミホイルで落し蓋をしたら、後はコトコト煮込むだけ。




「お砂糖は入れないの?」


「コーラが甘いからお砂糖はいらないんだよ。」




 大切なお肉がちゃんとしたおかずになると理解したわらしさまはとてて~とリビングに走っていった。


 煮汁が沸騰したので弱火にしてタイマーをセットした。


 リビングのソファーに座ってアメリカで大絶賛を浴びた写真集の続編を眺める事にした。ニューヨークだけではなく、世界中で見つけたおしゃれ上級者が掲載されている他、被写体のライフスタイルがエッセイとして収録されているのが見どころ。ゲームに飽きたのか、後ろか覆いかぶさるようにのぞき込んでいるから、小さくなって隣に座ったらと横にずれてわらしさまのスペースを空けた。


 非日常的なファッションだったり、シックだったりするのに、共通してるのが皆、背筋がピンと伸びている事。




「ここに載ってるおじいさんや、おばあさんは普通の人なの?」


「自分で決めたことをやり続けて、人生を楽しんでいる素晴らしい人たちだよ。私もこんな風に自由な人生を歩みたい。」




 老いることのないわらしさまには、年老いていく事を楽しむなんて到底理解できないだろう。




 ◆◇◆




 朝出かける時にわらしさまが、今日はできるだけ急いで早く帰ってきてと珍しく駄々をこねた。


 稲荷様達にも昨日しつこいくらいに今日うちに来る確認をしていたっけ。来てくれなかったら大量に煮込んだスペアリブが台無しになってしまう。今までだって約束をすっぽかされた事ないのに一体今日のわらしさまは何がしたいんだろう。




「ただいま~」


「「「「おかえりなさ~い。」」」」




 ドタドタと玄関までお出迎えしてくれた4人は私が帰ってくるのを首を長くして待っていたようだ。




「わらし、のり子が帰ってきたんだからもったいぶらずに早く教えろよ。」




 いつもならご飯を優先させる稲荷様が催促した。


 さっとiPadを開いて見せた画面には、インターネットバンキングの入出金明細が表示されていた。名義こそ私の名前になっているけど、本日YOUTUBEから38万円振り込まれている。


 ……私より稼いでるよ。




「ほら、僕『ヒモ』じゃないでしょ。」


「「「わらしがお金稼いでる。」」」


「僕はもっともっとお金を稼いで、のりちゃんの欲しいものは全部買って、のりちゃんがやりたい事は全部させてあげて世界で一番幸せなおばあさんにするんだっ。」




 幸せのベクトルがどうも違う方に向いている。わらしさまとは、幸せについてじっくり話し合わないといけないと痛感した。


 どうやら、私は座敷童に一生養われる事が決定したようです。




「わらしさま養ってくれてありがとうね。とりあえず、晩ご飯にしようか。」


「「「「は~い。」」」」




 賑やかな食卓を囲んで今日もおうちご飯を美味しく食べましたとさ。明日は何作ろうかな?



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