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座敷童が小豆ご飯に飽きたと言っています。  作者: ヴぃc
第3章 たくさんの幸せを見つけるゾ
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スイートポテト

 ポストに知らない企業からの不在連絡票が入っていた。再配達の電話をしてからわらしさまと夕飯の準備をしていると、大きな段ボールが届いた。何も買い物してないんだけど何だろう。不信に思いながら開封するとぎっしりサツマイモが詰まっていた。


「のりちゃん、これ僕が懸賞サイトで応募したサツマイモだ。やったやった~。当たった。」

「わらしさま、そんなにサツマイモ好きだったっけ?」

「違うよ。BBQした時にかはくちゃんが、ヒモヒモうるさかったから、頭にきて懸賞サイトに片っ端から応募したうちの1つだよ。」

「わらしさまありがとうね。私は、わらしさまの事ヒモだなんて思っていないよ。」

「ちゃんと、のりちゃんの事養うからもうちょっと待っててね。のりちゃんにはこの段ボール重たすぎるから僕が運ぶ。」


 順調に大きくなったわらしさまはもう小学6年生くらいになっている。私が見上げる日も近いかもしれない。

 大きな段ボールをひょいっと抱えて台所へ向かうわらしさまの背中を追いかけながら大きくなったなぁとしみじみ思った。

 段ボールにぎっしり詰まったサツマイモを撮影したかと思うやいなや、高速フリック入力で、LINEのタイムラインにUPしていた。相当『ヒモ』という言葉が気に入らないらしい。『引きこもり』の称号は甘んじてうけていたのに、……解せん。

 夕飯を食べてる間に蒸かしたサツマイモを、食後のデザートにアチチと言いつつ皮を剥き剥き半分こして食べた。甘いサツマイモに塩を振って食べるのは格別美味しかった。


「のりちゃん、たくさんサツマイモ蒸かしてたけど、あれはどうするの?」

「あれはスイートポテトにするんだよ。」

「僕もスイートポテト作るっ。」


 言うと思った。

 大量のサツマイモを裏ごしするのは手間がかかるけど、我が家にはブレンダーがあるから楽に潰せるもんね。

 わらしさまがサツマイモを潰す端からバターを加え、牛乳をすこしずつ垂らしていく。サツマイモの甘い香りが台所中漂う。


「のりちゃん、味見しちゃダメ?」

「一口だけだよ。」


 サツマイモを混ぜ合わせるわらしさまの口にスプーンですくったペーストを入れてあげた。


「のりちゃんこのままでも美味しいよ。」

「うんうん。このままでも美味しいけど、もうひと手間加えたらもっと美味しいよ。」

「もっと美味しくなるならがんばるっっ。」


 滑らかになったサツマイモにレーズンを混ぜたら、お団子状に丸めてアルミカップに入れていく。どろんこ遊びの延長みたいで形成は子供が喜ぶよね。どんな美味しいなんだろうと出来上がりを楽しみにしながらせっせと丸めるわらしさま。

 天板に並べたサツマイモのお団子ちゃん達に卵黄を塗ってオーブンで焼いた。焼き上がりを、火傷しないでねと注意しながら渡すと、かじりついては、ハフハフしている。どうやらお気に召してくれたようです。

 4回ほど続けて焼き冷めたスイートポテトをラッピングしていく。

 前回の料理とも言えない料理ではせっかくチコちゃんが訪ねて来てくれたのに申し訳ないからね。今日のスイートポテトはちゃんと料理と言えるだろう。

 4つの袋に詰めて、わらしさまの明日の分のスイートポテトは冷蔵庫にしまった。


 LINEで呼び出した稲荷様に、3つの袋を渡し、


「いなり、このスイートポテトは、僕が懸賞で当てたサツマイモで作ったんだからな。かはくちゃんにもそこんとこしっかり伝えてよ。」


 一生懸命念を押していた。


「わかった。のり子、チコの分まで悪いな。」

「チコちゃんの霊力が上がる保証はないからその事もきちんと伝えてね。」

「仙狐の尻尾は500年かけて9本に増える。オレの尻尾が既に2本になっている時点で、のり子の手料理は確実に霊力が上がる確証が取れてる。残念なのは尻尾優先だからか、わらしの身長に追いつけない事だけだ。」

「いなりに僕の身長は抜かさせない。」


 相変わらずの負けず嫌いな二人の戦いは静かに続いていた。毎度毎度、神使をデリバリーサービスに使うのもどうだかと思ったが、ついでだからと安請け合いしてくれた。

 新米が収穫できたからと、今日は油揚げではなくお米の袋を置いて稲荷様は鳥居の中に消えていった。


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