桃モッツァレラ後編
拙作をお読みいただき、ブックマーク、評価、感想をありがとうございます。まさか、ブックマークが1K行くとは思っていませんでした。エピローグ完成したらストック分全部投下する予定です。短い間でしたがお付き合い頂きありがとうございます。
量増し大作戦はサケとキノコのクリームシチューに決定した。毒を食らわば皿までよと、カハクちゃんも夕飯食べに来るかLINEで聞いたらすぐ来ると返事が返ってきた。
テーブルの前でカハクちゃんと、チコちゃん、稲荷様が具材を刻んでいる様は、野外学習のような様相を呈している。シチューはいいやね。具を増やせばいくらでも量が増やせるもんね。お手伝い大好き3人組のお陰で我が家のまな板と包丁が増えた事は言うまでもない。
自称『焼き師』のわらしさまは、塩コショウして小麦粉をまぶしたサケを嬉々としてバターで炒めている。
さてさて、桃で何を作ろうか。冷蔵庫の在庫チェック。そうそう『トマトとモッツァレラのカプレーゼ』が食べたいと思って買い置きしたモッツァレラチーズがあったんだった。それなら、一時期SNSで騒がれた『桃モッツァレラ』にしようか。
「……惜しい。レモンが無かった。」
「のりこちゃんレモンが欲しいの?」
忍びのごとく音もたてず背後にカハクちゃんが立っていた。
「そうなの。今から作るメニューには絶対レモンが必要なの。ちょっとスーパーまで買いに行ってくるね。」
「大丈夫。すぐ出せる。」
カハクちゃんの手の中からずずずずとレモンが浮かび上がってきた。
「植物なら何でも出せる。」
「カハクちゃん。あリがとう。」
花魄という妖怪なら誰でもできる事なのか、平然としながらレモンを渡された。
「材料全部切れた。」
「じゃぁ一緒に『桃モッツァレラ』作る?」
「作る。」
「のり子オレも材料全部切れたぞ。」
「あたしも終わりました。」
「じゃぁわらしさまシチュー任せちゃってもいいかな?」
「イエッサー。」
SNSで『桃モッツァレラ』が話題に上がっていた時、間違ったレシピが横行してそれを食べた人たちが、美味しいと書き込んでいるのを見てとても驚いた。よく女性は、有る物で代用してレシピを改悪すると言われるが、男性も同じじゃないか。代表して一般人の意見を述べさせてもらうなら、1回目に作る時にはレシピ通りに作るべきだと思う。2回目からは自分の口に合うようにアレンジすればいいのだから。
稲荷様とチコちゃんにモッツァレラチーズをちぎってもらっている間に、カハクちゃんと桃の皮をむいて一口大に切っていく。
桃とモッツァレラチーズをお皿に盛ったら、塩、黒コショウを振り、うちにはゼスターが無いからレモンの皮を千切りにして、美術担当のカハクちゃんに盛り付けてもらう。
オリーブオイルを回しかけたら白ワインビネガーをかけて、『桃モッツァレラ』の完成です。
お皿を運んだりバゲットを焼いたりしていると、
「のりちゃん、シチューもできたよ~。」
「みんなそれぞれシチュー皿持ってわらしさまによそって貰ってね。」
「「「は~い。」」」
まるで給食当番の様相だ。
遅ればせながら、我が家の食卓テーブルは4人掛けなので、折りたたみ椅子を一つ出す。
「わらしさま5人で座ると狭いから小さくなって。」
「アイアイサー。」
シュルシュルと5~6歳サイズに戻る。それを見た稲荷様とカハクちゃんも小さくなってくれた。うん。5人でテーブルを囲んでも圧迫感が無くなった。それでは手を合わせて
「「「「「いただきます。」」」」」
はぁ。桃の過度な甘みにレモンの皮の苦みと爽やかさ、チーズの塩気とワインビネガーの酸味が奇跡のハーモニーを奏でている。バルサミコ酢やレモン汁使ったら絶対この美味しさは再現できないもんね。
チコちゃんはありがたそうに桃モッツァレラを食べている。
「のりちゃん、僕たちが作ったシチュー美味しい?」
「とっても美味しいよ。」
ちょっとしたアクシデントにより、遅い夕飯になったけど、みんな笑顔だった。
「そう言えばさっきやっていたゲームは4人揃わないとプレイできないの?」
「そんなことないよ。」
「わらしといなりはよく二人でプレイしてる。」
「そうなの?」
「のりちゃん、1人でもプレイできるけど、あのゲーム、カップルでプレイしてる人が多いから、いなりと2人で組むと、早く4人チームになれるんだよ。」
「バカップルが多いから、ボイスチャットこっちにも丸聞こえなのに普通に今日の出来事とか話し始めてウザい。男の方がかっこつけて『お前のことは俺が守ってやるよ』なんて言いながら一番先に死んでダサい。」
稲荷様の辛口評価。確かに、先に死んだらダサいね。
泊まっていけばと誘ったけれど、3人はまた来るからと帰っていった。
よくよく考えてみれば今晩のご飯ほとんど私料理らしい事してないけど、チコちゃんの霊力はあがったのだろうか?カミノミソシル。トゥービーコンティーニュド。




