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座敷童が小豆ご飯に飽きたと言っています。  作者: ヴぃc
第3章 たくさんの幸せを見つけるゾ
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お宝煮

 週初めってだけでも気だるいのに、こんなに暑いと溶けてしまいそうだ。改札口を抜けて事務所へと向かうだけなのに汗だくになってしまう。赤味噌県の夏は沖縄県民でも耐えられないと言われる程不快指数が高いそうで、確かに関東で電車に乗るとあまりクーラーが効いてないと感じるほど、こちらの電車はクーラーでよく冷やされている。暑い期間だけでもいいから、どこでもドアが欲しいと切実に思ってしまう。そう言えば大手車メーカーの工場で大抵1番に熱中症になるのは、外国人の派遣社員だって言ってた。赤味噌県の夏はそれ程過酷なんだ。

 事務所に着くとクーラーの冷気にやっと一息つけた。駅からの十数分は日傘をさしていてもアスファルトの照りっ返しでかなりダメージを食らうのだ。

 朝から全員が事務所に揃っていた。たくさん持って来て良かった。稲荷様が毎回お土産に大量の油揚げを置いていくから冷凍庫も油揚げに侵食されてきたので、お宝煮を大量に作って消費してみたのだ。

 中身が隠れてると喜ぶわらしさまは、中身が肉だったことに大喜びしていた。LINEで稲荷様にお宝煮を取りに来るよう伝えると、リビングに稲荷様が立っていた。緊急用の鳥居デビューが食べ物取りに来るだなんて予想通りで笑えた。玄関使わなくてもいいんじゃないの?と素朴な疑問を口にすると、玄関からお邪魔するのがエチケットなんだって。カハクちゃんにも届けてくれると請け負ってくれたのでお重2段を渡したら、煙のように消えてしまった。


「今日のお昼おかずの差し入れ持ってきたのでみんなで食べてください。」


 3人の中で一番喜んだのは林さんだった。お昼の時間になったと思ったら、ちょっとコンビニに行ってくると、このクソ暑い中走って行ってしまった。

 お重を開けたら不思議そうに社長が


「渡辺さん、いなり寿司をおかずにご飯食べるの?」

「社長違いますよ。これはお宝煮です。」

「のり子そんなにたくさん作って大丈夫なの?」

「友達が大量に油揚げを置いていくものだから消費するの手伝って。」

「そういう事なら遠慮なく頂くよ。僕のおかず交換はこれだよ。」


 アルミカップに入ったひじきと豆のサラダを渡してくれた。


「あ、これ青じそドレッシングですか?」

「そうだよ。この前渡辺さんと交換して食べた時に美味しかったから作ってみたんだ。感想聞かせてね。」

「社長も料理の腕着々と上がってるんですね。私より女子力が高い。」


 悠ちゃんがしょんぼりするふりをして嘆いてる。


「悠ちゃんは料理する気になったらすぐ上達するから大丈夫だよ。」


 バタンと勢いよくドアが開いてぜぇぜぇ荒い息をする林さんが帰ってきた。


「これ、食後のデザートにして。」


 差し出された袋の中には、私の大好きな濃厚チーズタルトが人数分入っていた。


「ありがとう。」


 林さんは意外と律儀だ。

 早速、林さんはお宝煮を食べ初めて食レポをアツく語ってくれた。


「社長、ひじきサラダこの暑い時期にはさっぱりして食が進みますね。」

「渡辺さんが教えてくれた青じそドレッシング買って来て和えただけだよ。」

「お料理は作ってもらったのを食べるのが一番美味しいですから、同じドレッシング使っていても、社長のひじきサラダの方が美味しいです。悠ちゃんも食べる?」

「いっただきぃ。」

「俺も食べたいっす。」


 2人にアルミカップを差し出した。


「お宝煮は僕でも作れるかな?」

「簡単ですよ。油揚げを2~3分茹でてから箸でゴリゴリして、端を切って袋状にして、シメジ、玉ねぎ、人参をフードプロセッサーでみじん切りにしたところに、ひき肉片栗粉を混ぜてこねた物を油揚げに詰め込んで爪楊枝で留めます。巾着のように絞るのが主流ですが、私はぎりぎりまで中身を詰めたいからお稲荷さんみたいに丸っこくしてます。あとは、だし汁、砂糖、塩、しょうゆ、みりん、酒で煮込めば完成です。お鍋にかけちゃえば他の作業ができるから、楽ですよ。」

「フードプロセッサーやっぱり買おうかな。」

「今はブレンダーとセットになった物が7000円弱で買えますよ。洗うのも簡単だから我が家は出しっぱなしにしてます。」

「へぇどのメーカー使ってるの?」


 商品のURLをLINEで社長に送った。

 〆に林さんの買って来てくれたデザートを4人で仲良く食べて午後の仕事へ備えて英気を養った。

 随分と私もこの環境に慣れたなぁとしみじみ思った。

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