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座敷童が小豆ご飯に飽きたと言っています。  作者: ヴぃc
第1章 アラサー無職彼氏ナシから頑張るゾ
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春雨サラダ前編

 朝起きたらわらしさまが居なくなってるなんて夢オチ設定は無かった。妖怪は寝なくても平気なんだろうか?リビングのローテーブルに置いたノートパソコンの前に正座してマウスをひたすらカチカチさせているわらしさま。

一時嵌っていた擬人化された船を育てる某ゲーム。

 わらしさまは、私が課金までしていたのにずっと放置プレイしていたそのゲームをいたくお気に召したようで、嬉々としてプレイしていた。

 戦果を見せてもらえば流石『座敷童』というべきか、私がどれだけ課金しても物欲センサーに反応されてゲットできなかったキャラクターを続々と手中に収めていた。くっ、これが徳の違いなんだろうか?チクショウ悔しくなんてないやいっっ。


「わらしさまおはよう。朝ごはん食べる派?」

「小豆ご飯以外なら食べるっっ」


 そもそも小豆ご飯の作り方知らないし。一応クックパッド先生で調べておくかな。

 なんて心のメモに刻んで2人分のフルーツグラノーラにココアを振りかけたお皿をダイニングテーブルにセット。


「牛乳はお好みでかけてね。めしあがれ。」


 モニターの前からしゅたっと高速移動で食卓に着くわらしさま。


「「いただきます。」」


 牛乳が嫌いな私はそのままバリボリ音を立ててフルグラを食べる。わらしさまは、そのままで半分食べて残りに牛乳をかけるつもりの様だ。


「私、ハローワークに行ってくるけど、一人でお留守番できる?」


 昨日の残りのグリンピースご飯を三角に握りせっせとおにぎりを生産してわらしさまに尋ねると、


「僕お留守番得意だよ!!げーむの続きをしてのりちゃんを待ってる。」


 家にとりつく妖怪なんだからお留守番できる?なんて愚問であった。


「じゃぁ、お昼はこのおにぎり食べてね。」


 5合炊いたグリンピースご飯はすっからかんになってしまった。ランチボックスには、おにぎり、たくわん、花型に切った赤いウインナー。信号か!?と突っ込みたくなるけど、お弁当にはこの3色入ってないと落ち着かないんだよね。


「じゃぁいってきます。何かあったらパソコンから私のスマホにメールしてね。」

「うん。のりちゃんいってらっしゃい。」


 わらしさまは、私に背を向けたままマウスをクリックする右手の動きは止めず、左手をひらひらと振っていた。今日中にキャラクターコンプリートする気満々だな。ふふん。どんなに運がよくったてレベリングしないと改二にはできなんだからもだえ苦しめばいい。



 ◆◇◆


 今日も暑かったなぁ。今晩のおかず何にしようかなぁ。夕方になったとは言え日没が遅くなったこの頃は18:00でもまだ明るい。食材を物色するべくスーパーに入っていくとヒンヤリとした風が吹いてきて少し汗ばんだおでこに心地いい。キウイが山盛り積んであるコーナーに『本日のおつとめ品』の文字が。これはもうアレを作るしかない。と俄然やる気が出た私は目当ての棚まで足早に移動した。


「ただいま~。」

「おかえり~。」


 帰宅の挨拶が出来る相手が居るのが嬉しくて勢いよくドアを開けた私を出迎えたのは、相変わらずマウスをクリックしているわらしさまの背中。本当に1日中プレイしてたみたい。足痺れないのかな?本物の子供じゃないし、妖怪なんだから目が悪くなることは無いよね?


「のりちゃんお帰り。今日のご飯なぁに?」

「今日は、春雨サラダだよ。」


 フルーツが安売りしていると、何故だか作りたくなるのが春雨サラダ。よ~したくさん作っちゃうぞ~。春雨を湯がいている間に、ニンジンときゅうりをスライサーで千切りにして塩を振りかけておく。水切りした材料を、ごま油、酢、しょうゆ、砂糖、すりごまで和えて味がなじんだら、缶詰のミカン、プチトマト(赤・黄色・オレンジを入れるのがちょっとしたこだわり)、キウイを投入して完成。

 酸っぱいからキウイ嫌いって人にもこのレシピだとすんなり食べてもらえるんだよね。かく言う私も会社のBBQで差し入れされたこの春雨サラダを、キウイが食べれませんなんて断る勇気もなく恐る恐る口に入れたのが素晴らしい出会いになったのだ。食べず嫌いヨクナイ。

正式名称はバンサンスーというそうです。

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