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座敷童が小豆ご飯に飽きたと言っています。  作者: ヴぃc
第3章 たくさんの幸せを見つけるゾ
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手羽先

 順調に仕事も終わりそうでチラチラ画面右下の時間ばかり見てしまう。


「渡辺さんなんだかソワソワしてるけどこの後デート?」

「そんな相手なんていませんよ。今晩友人が2人泊まりに来るんです。林さんこそお料理上手な彼女は見つかったんですか?」

「盆休みにバーベキューしたじゃん。行きの車で気が合う女の子が居たからチェックしてたんだ。ところがキャンプ場に着いて各自バーベキューの準備を始めたら包丁怖~い。とかぬかしやがって興ざめ。あ~あ~。渡辺さんみたいに美味しいご飯作れる彼女どこかに落ちてないかな~。」


 シナを作って声色まで変えたぶりっ子ちゃんの物マネが異様にうまかった。まさかこの厨二病患者は女性キャラも網羅しているんだろうか。

 まだまだ林さんの食事環境は改善されないようです。

 17時になったのでパソコンの電源を落として帰り支度をした。


「じゃ、お先に失礼します。」

「お疲れ様~気を付けて帰りなね。」

「ありがとう。林さんも頑張ってね。」


 急いで帰って夕飯の支度をせねば。きっといなりさまとかはくちゃんは、もう家でわらしさまと遊んでるはず。今日の夕飯も喜んでくれたら嬉しいな。


「ただいま~。」

「「「おかえりなさ~い。」」」


 リビングでは3人は頭を突き合わせてiPadの画面に見入っていたが、私が入ってきたらさっとOFFにした。なにやら悪だくみでも考えついたのかしら。


「のりちゃん、今日のご飯なぁに?」

「手羽先だよ。」

「私お手伝いする。」

「のり子、庭からちぎってくるものあるか?」


 カハクちゃんに先を越された稲荷様は、負けじとかぶせ気味にお手伝いを名乗り出た。

 わらしさまに至ってはさっさと洗面所で手を洗っている。なんだかこの3人の競争は多岐にわたりそうだな。血を見ることはないだろうけど、熾烈な接戦だけはやめてもらいたい。


「みんなお手伝いありがとうね。稲荷様はパセリをこれくらいちぎってきてね。」


 両手で量を示した。


「カハクちゃんとわらしさまは手羽先に塩と胡椒を振ってね。」

「僕胡椒!」

「それなら私は塩。」

「振り終わったら裏返して裏側もよろしくね。」

「イエッサー。」

「まかせて。」


 私は、お鍋に砂糖、しょうゆ、酒、みりんを加えひと煮立ちさせる。


「のりちゃんできたよ。」

「裏も表も塩ふれた。」

「ビニール袋に片栗粉を入れて手羽先をシャカシャカしてね。本数決めて順番にやるんだよ。」

「のり子パセリ持ってきたぞ。」

「稲荷様ありがとう。パセリを水洗いしたら茎をこれくらい残してちぎってキッチンペーパーで水気を切ってね。」


 平等にお手伝いを割り振るの難しいな。わらしさまが大きくなってきたからか、4人で台所に立つと作業スペースが狭い。ん?なんか違和感。


「のり子気が付いたか?」

「どこかはわからないけど、いつもの稲荷様とちょっと違う気がする。」

「オレも背が伸びたんだ。」

「私もちょこっとだけ伸びた。」

「それは2人にとっていい事なの?」

「わらしに見下ろされるのは屈辱。」

「オレよりちいさかったくせに今じゃ見上げなきゃいけないのはムカつく。」

「そうかね。今日もた~んと食べて大きくなぁれ。」


 油を温めて適温になったら手羽先を揚げていく。じゅわぁパチパチと手羽先を揚げる音が空腹感を増させる。揚がったらさっきのお鍋にからめてからバットに移す。割下のいい香り。


「稲荷様は揚がった手羽先にゴマを振る係、カハクちゃんはパセリと一緒に手羽先をお皿に盛り付ける係、わらしさまは冷凍庫に入ってるゴーヤの佃煮をチンする係ね。」


「まかせろ。」

「わかった。」

「ガッテンショウチノスケ。」


 メガ盛り2パックで足りてくれるといいけど。念のために、ここは白米のお供を伏兵につけておこう。


 出来上がった手羽先をテーブルに運んで


「さぁ召し上がれ。ご飯もたくさん炊いてあるからね。」

「「「いただきます。」」」

「手羽先はね両手に持って関節をばきっと折ると骨とお肉に分かれるからね。」

「「「は~い。」」」


 3つの手が手羽先にのびる。私が実演したとおりに一生懸命食べてる3人は無言。今日はカハクちゃんもフードファイトに参加するんだろうか。


「レモンをかけたい人はここにあるからね。」


 よく居酒屋とかで勝手に全部にレモンをかけちゃう人がいるけど、お好みがあるから一言聞いてほしいと常々思っている私は、各自に選べるようレモンを用意する派だ。


「のりちゃん、手羽先美味しい。」

「3人が手伝ってくれたからいつもの手羽先より3倍美味しいはずだよ。」

「ゴマがアクセントになってて美味しい。」

「ゴマはオレが振ったからな。のり子手羽先何本でも食べれそう。」

「ゴーヤの佃煮も美味しいから食べてみて。」

「のりこちゃんゴーヤ苦くないね。」

「甘辛く炊いてあるからね。」

「ごはんお替り。」

「オレもお替り。」

「私も。」


 手羽先を何本食べただの、ご飯を何杯お替りしただのまだまだ今日のフードファイトは続きそうです。スイカまでたどり着けるんだろうか。






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