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座敷童が小豆ご飯に飽きたと言っています。  作者: ヴぃc
第3章 たくさんの幸せを見つけるゾ
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とうがんとシーチキンのひえひえ煮

拙作を読んでいただき、ブックマーク、評価、感想ありがとうございます。今後の更新スケジュールを活動報告にUPしました。よろしくお願いします。

「のりちゃ~ん。起きて。」


 ゆさゆさと私を揺さぶりながら必死に起こそうとするわらしさま。


「ん~まだ会社に行く時間には早いから、アラーム鳴るまでは寝かせてくれない?」

「ダメだよ。のりちゃん、今日はスイカを収穫する日だよ。」

「つるちょん切るだけだからすぐ済むよ。」

「そんなこと言わないでのりちゃん早く起きて。」


 昨晩確かに明日の朝になったらスイカを収穫しようと約束はした。約束をしたが只今AM5:30。眠らないわらしさまからしたら夜が明けるのを今か今かと待ちあぐねていたのだろう。仕方がない我が恋人お布団さんと決別するのは惜しいがわらしさまの収穫に付き合いますかのう。


「身支度したらした庭に行くからもうちょっと待っててね。」

「のりちゃん早く来てね。」


 のそのそと起き上がり洗面所で顔を洗う。もうセミが鳴いてるよ。勤勉なやつらだ。薄く日焼け止めを塗ってから庭に出た。


「わらしさまお待たせ。」

「待ちくたびれたよ。今からスイカ収穫するからのりちゃんしっかり見ててね。」

「しっかり見とくね。」


 開通式で紅白のテープを切るような厳かな手つきで蔓をカットすると、地面にハサミをおいてヨイショっとスイカを抱えたわらしさまは、しっかりした足取りで近寄ってきたと思ったら片膝をついてスイカを捧げ持った。見た目に反して力持ちだ。


「我この命を懸けて生涯のりちゃんを守り通す。」


 あちゃぁ~また私の電子書籍の本棚漁ったな。妖怪って不老不死じゃなかったの?突っ込みどころ満載だけど、わらしさまめちゃ真剣な顔してるし笑ったら確実にすねるよね。


「わらしさま、ありがとうね。美味しいご飯たくさん作るから一生守ってね。」


 スイカを受け取ろうとしたら、


「もう。そこは汝を生涯ただ1人だけの我の騎士に任命するくらい言ってくれなくちゃ。」


 ぷうっとほっぺたを膨らますわらしさま。28歳でそのセリフをリアルに吐けるのは林さんくらいだと思うよ。


「カンペがなかったからね。さぁ冷蔵庫にスイカ入れて冷やそう。」

「ダメダメ。のりちゃんにやり直しを要求します。」


 収穫が6時前でよかったぜとこの時思った。ご近所さんに見られたら恥ずかしくてしばらく顔を上げて歩けないところだった。シブシブやり直しに応じてからそそくさと家に入った。

 野菜室を占拠した大きなスイカを撮影したわらしさまは宙に浮くんじゃないかと思うくらい浮ついていた。


「これが記念すべきのりちゃんへの初プレゼント。これからも~っとも~っといろんな物をプレゼントするからね。」

「わらしさまありがとうね。もうたくさんプレゼントもらってるよ。この前もおばぁちゃんに会わせてくれたし、わらしさまが居てくれるだけでいいんだよ。」

「のりちゃんは欲が無いなぁ。」

「そんな事無いよ。物欲まみれだよ。」

「じゃぁ今一番欲しいものは何?」

「冷凍庫かなぁ。でも台所にはそんなスペース無いからなぁ。」

「ダイヤモンドの指輪とか欲しくないの?」

「料理するとき邪魔だからねぇ。」

「のりちゃんの喜ぶ物を探すのはむずかしぃなぁ。」

「スイカ嬉しかったよ。どれくらい甘いか楽しみだね。さぁ朝ごはんにしよう。」


 いつものようにフルグラをお皿に盛った。


 まだ出勤には早いから晩御飯を作っておく事にした私はとうがんを切った。水、鶏ガラスープの素、塩、しょうゆ、酒を鍋に入れ火をかける。とうがんとシーチキンを加えしばらく煮込む。冷めたら冷蔵庫の中へ。ついでに水茄子も塩に漬けて水けを絞ったら刻んだ大葉と一緒に昆布茶を振ってジップロックで冷蔵庫へ。

 まだまだ残暑が厳しいから今晩のご飯も冷たくいただくのだ。鶏そぼろと、とうがんも美味しいけどシーチキンの煮汁が浸み込んだとうがんは絶品なのだ。

 さてとツラ描いて仕事に出かけますかな。

 わらしさまはPCの前でマウスをカチカチさせていた。珍しくお手伝いに来なかったなぁ。


「わらしさまいってきま~す。」

「いってらっしゃ~い。」


 夏が終わろうとしているのにまだまだうだるような暑さに辟易しながら会社へと向かった。




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