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座敷童が小豆ご飯に飽きたと言っています。  作者: ヴぃc
第3章 たくさんの幸せを見つけるゾ
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トマトの煮びたし

拙作を読んでいただき、ブックマーク、評価、感想ありがとうございます。今後の更新スケジュールを活動報告にUPしました。よろしくお願いします。

「のりちゃんのおばぁちゃんこんにちは。」

「わらしさま何言ってるの?」

「だってこの人のりちゃんのおばぁちゃんでしょう?」


 いつもおばぁちゃんが座ってた席を指さすわらしさま。


「私には見えないけれどおばぁちゃんがそこに居るの?」

「うん。えーっとえーっとあーしてこうしてむーーーー。」


 わらしさまが唸りながら力んでるのをじっと見つめていたらもやもやした霧がおばぁちゃんの席に流れていった。その霧が消えると亡くなったおばぁちゃんがニコニコしながら座っていた。


「おばぁちゃんっ。会いたかった。」


 行儀悪くもガタっと椅子を蹴飛ばしておばぁちゃんに駆け寄る。


「のり子ちゃん元気そうだね。おばぁちゃんも会いたかったよ。」

「のりちゃん良かったね。」

「わらしさまありがとう。」


 えっへんと手を腰に当てて胸を張るわらしさまの頭を撫でまわす。


「その子はどこの子なの?」

「おばぁちゃん、わらしさまは座敷童だよ。」

「僕のりちゃんちに住んでるんだよっっ。よその子じゃないよ。」

「座敷童ってこんなに綺麗な子供だったんだねぇ。もうちょっと小さい子供を想像していたよ。」


 すくすく育っているわらしさまは、私の頭2個分小さいくらいだから大体小学3年生くらいに見えるだろう。

 こっちにおいでとわらしさまに手招きするおばぁちゃん。『幽霊VS座敷童』文字にすると殺伐として感じるけど実際は、おばぁちゃんとひ孫みたいにほのぼのしている。


「おばぁちゃん、僕のりちゃんのご飯を毎日食べてどんどん大きくなってるんだよ。」

「のり子ちゃんは小さい頃からお料理が好きだったからねぇ。一人ぼっちで淋しくないかと心配していたけど、こんなにかわいらしい同居人がいたら賑やかでいいね。」

「いなりや、かはくちゃんもよく遊びに来るんだよ。」

「あらあらお友達も遊びにきてくれるの。」


 その友達も神使と妖怪だけどな。身振り手振りで話すわらしさまをおばぁちゃんはニコニコしながら相槌をうっていた。目の前の幸せな風景がにじんでいく。涙って嬉しくても出るんだね。こっそり涙をぬぐいながら、おばぁちゃんの好きだったお茶を沸かした。


「おばぁちゃんだけなの?お父さんとお母さんは帰ってこないの?」

「あの子達はもういないよ。どこかで新しい人生を生き始めているよ。」

「今度は、交通事故にあわない平穏な人生を歩んでほしいね。」

「そうだね。」

「おばぁちゃんは、いつ生まれ変わるの?」

「さぁいつなんだろうねぇ。それまではのり子ちゃんの様子を見に来るよ。」

「僕ものりちゃんと一緒におばぁちゃんをお迎えするよ。」


 ぴょんぴょん飛び跳ねながら力説するわらしさまの必死過ぎるアピールーが笑いを誘った。


「わらしさまがずっとのり子ちゃんと居てくれるなら一安心だね。」

「のりちゃんは僕が守るからおばぁちゃんは大船に乗ったつもりでいてね。」


 細い腕に力こぶを作るポーズをしているが、あまり強そうに見えないわらしさまをおばぁちゃんは、コロコロ笑いながらうなずいていた。

 それから、庭に回って育てているスイカやバジルなんかを得意げに披露していた。


 まさかおばぁちゃんとまた食卓を囲む日が来るとは思わなかった。今晩はおばぁちゃんのリクエストでトマトの煮びたし。

 十字に切ったトマトを湯剥きしたら、だし汁に塩、しょうゆみりんを加えた鍋にトマトを加え少しにったせたら冷蔵庫で冷やす。冷たくなったら乾燥ゆずの皮を乗せたら完成。生のゆずの皮だと、使い切らなきゃと思うあまりにゆずを大量に乗せてしまいだしの味も何もかもが消えて残念な結果になるので我が家はお手軽乾燥ゆずの皮を好んで使っている。

 隣ではおばぁちゃんがいなり寿司を作ってくれている。


「のり子ちゃん、梅干し来年は漬けてみたら?」


 残り少なくなった梅干しの瓶をのぞき込んでおばぁちゃんがそう持ち掛けてきた。


「一度挑戦してみたんだけど、おばぁちゃんみたいにうまく漬からなかったの。」

「塩少なくしたんじゃない?」

「そんなにたくさん塩入れるの?」

「たいてい失敗するのは、塩が少ないか、赤紫蘇を良くもんでない時だよ。」

「そうなんだね。もうおばぁちゃんの梅干しが食べれなくなったと諦めていたけれど、来年は梅干し漬けてみるよ。」

「のりちゃん、僕も梅干し漬けるの手伝うよ。」

「来年のお盆はのり子ちゃんとわらしさまの梅干しが食べれるんだね。楽しみにしているよ。」


 そんな約束を残して送り火の煙と共におばぁちゃんは帰っていった。

 おばぁちゃんと3日間過ごしている間にいろんな話をしたが、勝のことは一言も口にしなかった。察しのいいおばぁちゃんは聞かなくても分かったのだろう。

 でも胸を張って言える。おばぁちゃん、私今とっても幸せだよ。

「のりちゃ~ん。ピピピッピピピって鳴ったよ~。」

「は~い。今行くよ~。」




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