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座敷童が小豆ご飯に飽きたと言っています。  作者: ヴぃc
第2章 仕事も私生活も楽しむゾ
33/93

菜の花とオイルサーディンのパスタ後編

 頭の中が真っ白になってしまった。


「社長すいません。亀井住宅さんの案件保存できませんってエラーが出てるんですけど。」

「どれどれ。」


 モニターを覗く社長は悠然としている。


「あ、これはもう諦めて。」

「すいません私どこか余分な場所いじくってしまったんでしょうか?」

「違うよ。僕がうっかりしていた。システムのアップデートこのパソコンしてなかったんだよ。渡辺さんのせいじゃないよ。」

「でも今までは保存できていました。」

「できたりできなかったりするからバグで、それに対応するためのアップデートなんだよ。幸い亀井住宅さんのはまだ締め切りじゃないから明日にでももう一回やってくれればいいよ。」

「そんな。私の残業代要りませんから残って仕上げていきます。」

「システムアップデートした後他もメンテナンスしたいから時間かかるんでもう今日は帰ってゆっくり休んで。」

「わかりました。パソコンのメンテナンスよろしくお願いします。」

「せっかく完成させてくれたのにごめんね。お疲れ様。気を付けて帰ってね。」


 はぁ。なんかしっくりこない。自分の失敗じゃないと言われても、こまめに保存してたらもっと早くに問題解決したし、使ってるシステムのヴァージョンとかもちゃんとチェックするように自分でメンテナンスできなくちゃいけなかったんだ。他の人達は自分でメンテナンスもするから、社長は私のパソコンもメンテナンス勝手にできてると思っていたんだろうな。それなのに舌打ちもせず、ねぎらいの言葉までかけてくれた。頭が下がるよ。

 これが慣れてきたら、事故の元ってあれだよね。最近調子に乗っていたのかもしれない。初心に戻って指さし確認だ。明日からはノーミスで仕事できるように気分を切り替えよう。


「わらしさまただいま~。」

「のりちゃんお帰り~。なんだか元気ないよ。」

「今日ね、仕事で失敗しちゃった。」

「そうなの?早く僕がのりちゃんを養えるようにならなくっちゃ。」

「わらしさま大丈夫だよ。クビじゃないから。」

「クビじゃないの?」

「うん大丈夫。今日は元気になるご飯にしようね。」

「僕お手伝いする。」

「よろしくね。」


 冷凍庫からなばなを取り出す。春になると大量に買ってきて茹がいて絞って使う分ずつラップして保存している。春じゃなくても食べられるようにたくさん冷凍するけどすぐなくなっちゃうのでここぞという時にしか食べない。

 今日みたいに落ち込んでる時には大好物を食べて元気になるに限る。


「わらしさまはパスタを茹でてね。」

「イエッサー。」


 オリーブオイルにニンニクと鷹の爪を入れて香りを移したら、なばなとオイルサーディンを入れて炒める。ニンニクは動物も食べないって言われてるけど、こんなに美味しいもの食べられないなんてかわいそう。これほど食欲をそそる香りはないのにね。この香りに更に醤油を追加。香ばしい香りがまたまた食欲をそそるのです。


「パスタ茹で上がったよ。」

「ざるに移して湯切りできる?」

「やってみるっ。」

「火傷しないようにね。」


 湯切りしたパスタをソースに絡めたら今日のおうちご飯完成です。

 暑くなったらスープは冷たい方がいい。ヴィシソワーズは、プロが作るメニューだと私は思っている。調味料少し分量違ったら絶対台無しになるから冷蔵庫から買い置きのコーンポタージュをカップに注いで冷凍パセリを振りかける。


「のりちゃん運んでいい?」

「お願いね。」


 では手を合わせて


「「いただきます。」」


 なばなの苦みがアクセントになってオイルサーディンの存在に花を添えている。菜の花だけになんちゃって。


「のりちゃんおいしいね。」

「わらしさまがパスタを茹でてくれたから美味しさ倍増なんだよ。」

「僕もっともっとお手伝いするからドーンと任せてね。」

「いつも助かっているよ。庭のスイカもすくすく育っているね。」

「8/10になったらスイカを裏返すようにかはくちゃんが言ってた。」

「カレンダーの印はそれだったんだね。楽しみだね。」

「毎日甘くな~れ、甘くな~れって言いながら水まきしてるから、すっごく甘いスイカをのりちゃんにプレゼントするから楽しみにしててね。」


 美味しいご飯と嬉しい約束で、気持ちのしぼんでいた私の心はじんわり温かくなった。

 その夜遅く「ドンマイ。私も最初の頃はそんな失敗ばっかりだったよ。明日も一緒に頑張ろう。」って悠ちゃんからLINEが来ていた。

 持つべきものはやっぱり心の友だよね。

 明日も頑張るゾ。


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