ポークビーンズ
拙作を読んでいただき、評価、ブックマークまでしてくださった方々、ありがとうございます。推しの作家さんの書籍化した作品をweb版と比較対象作業に入るため6/30の予約更新でしばらくお休みです。6/30更新分はちゃんと主人公危機一髪みたいなハラドキ無しで終わっています。エンディングも決まっているので今後はわらしさまとのお約束エピソードを執筆したらサクッと終わる予定です。よろしくお願いします。
るんたったるんたった。ちょっとスキップしはじめそうなくらい浮かれ気分で帰宅中の渡辺 のり子です。なんてったって今日は初のお給料日。浮かれないわけあ~りません。急に会社が倒産して無職になった時点で夏のボーナスは諦めていたし、暫くは貯金の食いつぶしを覚悟していた先月を思えば、この初任給のなんと神々しいことか。しかも、以前勤めていた会社よりも金額が高かった。アラサーだけどスキップしてもいいですか?
どうやら初任給出たらやろうと決めていたあれを決行する時がやってまいりましたな。わらしさま喜ぶかな?るんたったるんたった。
「渡辺さんが仕事を覚えるのが早かったから、外注に出していた分をお給料に上乗せしておいたよ。」
って社長に言われちゃったもんね。技術があるとお給料って上がるんだね。悠ちゃんのアドバイス通り資格取得講座を受講しなくて本当に良かった。悠ちゃんにも何かお礼をせねば。これからもっともっとスキルアップできるといいな。
鼻歌交じりでスーパーに向かう。今日は何が安いかな?ひんやりとした店内を見回す。まずは野菜コーナー。端っこで大豆の水煮が1袋88円。これは買うっきゃない。暑さを吹き飛ばすように甘すっぱ辛い料理にしよう。陽が長くこれだけ暑いと、スーパーの買い出しも皆さん遅くなるようで、19時回っているのに買い物客でひしめき合っている。どうしておばちゃんたちは、カートを持ったまま通路で立ち話するんだろう?こんな邪魔なところで立ち話し始めたら通れないし、欲しい商品が取れない。年をとると周りが見えなくなると言うけれど、気を付けよう。うん。明日は我が身。いつもだったらイラっと来るところだけど、今日の私は菩薩様の様なほほ笑みで横をすり抜けれる。だって今日、お給料日なんだもん。
空が薄いバラ色から薄紫水色と美しいグラデーションをつけている。翼をはためかす黒い影さえにも趣を感じる。綺麗な空。わらしさまにも見てほしいけど、我が家は住宅街だからこんなに空が広くない。ピロリンと撮影してわらしさまにLINEした。
はぁ。わらしさまといろんな場所に出歩けたらもっとわらしさまを楽しませてあげられるのに。
わらしさまは、家で引きこもる事がつまらなくなる日がくるのかな?本当はもっともっと楽しいことや美しい景色がある事を教えてあげたい。世界はこんなにも優しくて、美しいんだよほら見てごらんとわらしさまに伝えたい。
そんな訳のわからない衝動にかられながら帰路についた。
「ただいま〜。」
「のりちゃんおかえり〜。」
にこにこなわらしさまを見たら、別に引きこもりでもいいかと思ってしまった。
「今日はね、給食に出たメニューを懐かしんで作るよ。」
「のりちゃん、お肉入ってる?」
「もちろん入ってるから安心してね。」
2人はタッグを組み諸作業につくのであった。
玉ねぎ、人参、にんにく、セロリをフードプロセッサーでみじん切りにして、ひき肉と炒める。
大豆を投入して紙パックのカットトマトと水、コンソメ、ローリエでしばらく煮込んだら、ケチャップ、砂糖、醤油を足して完成。
懐かしい給食の大食缶どうぞ召し上がれ。
BGMには、火星で一人ぼっちになった男性の孤軍奮闘するさまを描いたあの映画です。
「のりちゃん。ご飯食べる時に見る映画じゃない気がする。」
「わらしさま。いつ何時アクシデントが起きるかわからないからね、予習は大事だよ。」
「でも、僕ジャガイモだけしか食べられないのは勘弁してほしい。」
「肉食男子には厳しい環境だね。火星から無事に脱出出来たらいくらでもお肉食べられるから、まずは火星から脱出しよう。」
こういう場面で女性は泣きわめくだけでちっとも生産的じゃないのに、男性は理性的で生きるすべを考えようとする。私だったら火星に一人置いてけぼりにされて、食料も底をつきた状態で生きながらえる努力をするだろうか?早々に生きる努力を放棄する気がする。あかん。沈んでいる場合じゃなかった。
「わらしさま。お給料が出たので、奮発してバーベキューパーティーしよう。」
「花火もする?」
「もちろん。」
「かはくちゃんといなりにLINEするっっ。」
我が家の新しくて楽しいスケジュールが決まりました。




