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座敷童が小豆ご飯に飽きたと言っています。  作者: ヴぃc
第2章 仕事も私生活も楽しむゾ
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ベトナム風オムレツ

「のりちゃんどう?伸びてる?」


 柱に背をぴたっとくっつけて聞いてくる。稲荷様の身長を追い越した日に定規とボールペンでわらしさまの身長を記してあげたら、毎朝身長チェックが日課になった。


「まだ伸びてないねぇ。そんなに早く身長は伸びないと思うよ。」

「もっと早くにょきにょきって大きくならないかなぁ?」

「にょきにょきって伸びたらきっと体がミシミシしなって痛いんじゃないかな。」

「痛いのはやだねぇ。」


 朝の恒例行事も終わったところで食卓を二人で囲んだ。安定のフルグラである。

 今日は、縁側でゲームをプレイするわらしさまの隣に寝ころんで積読を消化してやる。ビバ何でもない1日。ビバ何でもない休日。なんて素敵な響き。

 結婚が破談になったり、会社が倒産したり目まぐるしかったあの頃の私に教えてあげたい。どん底まで落ちたら後は上がるだけだよ。すぐに幸せな日々が訪れるから安心してって。

 クチナシの花の甘い香りが風に乗って漂ってきたので、庭に目を向けた。カハクちゃんが虫よけに植えてくれたラベンダーが満開になっている。今度の休みはガーゼでのれん作ろう。のれんにポケットたくさん縫い付けたら、ラベンダーを全部のポケットに入れよう。きっとのれんが揺れるたびにラベンダーの香りがほのかに漂うだろう。


 クチナシの甘い香りを楽しみながら、ページをめくる。最近はざまぁな作品を読み漁ってたけど、異世界いきなり絶体絶命モノを腰を据えて消化することにした。主人公が死んだら話は続かないんだから、何とか切り抜けるって。と分かってはいるのです。わかっていても臨場感あふれる文章に引き込まれあたかも自分もその場でピンチに陥っている緊張感、絶望感、を味わう。危険のない立ち位置でスリルを味わえるなんて最高です。時間を忘れて冒険の世界に潜り込んでいった。


 午前中はそこまで気にならなかったけど、流石にお昼からは暑くてリビングで読書をする。わらしさま暑くないのかな?


「わらしさま、お部屋でゲームしたら?暑くないの?」

「もうちょっとで犯人が解りそうだから、これが終わったら。部屋に入る。あ、また宣伝。もういいところなのに。」


 課金したらその宣伝動画は飛ばせるけど、24時間プレイできるわらしさまには是非とも無課金を貫いてもらおう。今の勢いだとプレイするゲーム無くなってもいけないからね。

 殺人現場から証拠を見つけて誰の証言が本当で、誰が噓をついているか突き止める。そんな殺伐としたゲームにも手を出していたとは驚き。私はめんどくさいからすぐ答え見ちゃう。見た目は子供だから、難しいこと理解できなさそうに見えるけどわらしさまの頭の回転は速い。

 花の顔(はなのかんばせ)で頭脳明晰ってどこのヒーローだよ。小さなナイトさんは真面目にセンター狙えそうです。


 7冊読み終えたら流石に肩が凝ったのか、頭が痛い。久しぶりに読書三昧を楽しんだ。細切れに読むのも楽しいし、一気に読むのも楽しい。そしてお気に入りは何度も反すうするように牛読(ぎゅうどく)するのが更に楽しい。実りのある休日であった。そろそろ晩ご飯の準備をしよう。

 台所に向かう私に気が付いたわらしさまもとてて~と台所について来た。


「のりちゃん、今日のお手伝いは何?」

「卵を5個割ってマヨネーズをちょっと入れたら泡だて器でしっかり混ぜてくれる?」

「イエッサー。」


 わらしさまのお料理能力も着々と高くなっている。林さんもお料理すれば侘しいコンビニ生活から抜け出せるのにね。

 私はトマトをざく切りにしてスイートチリソースと共にフライパンで炒め始めた。


「のりちゃんこれくらい?」

「うん。これくらいで十分。ありがとうね。」

「後は、卵が固まったら完成だよ。」


 溶いた卵をフライパンに入れたら蓋をして焼きあがるのを待つだけ。

 焼きあがる間にスープと野菜サラダを2人で準備した。

 では手を合わせて


「「いただきます。」」


 トマトの酸味とチリソースの甘味、辛みが不思議なハーモニー。トマトがたくさん余ってた時に教えてもらったレシピ。ベトナムに本当にあるオムレツなのかは謎だ。友達にこのレシピを聞いたときは味の想像がつかなくておっかなびっくりチリソースを小出しした。

 今となっちゃぁ、卵と、トマトの水気で味が薄まるから遠慮なくドバドバ入れてる。


「のりちゃん。オムレツ美味しいけど、今日どこにもお肉が入ってないよ。」

「あっ!」


 我が家には肉食男子がいたんだった。

 わらしさまよそんな日もあるさ。


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