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座敷童が小豆ご飯に飽きたと言っています。  作者: ヴぃc
第1章 アラサー無職彼氏ナシから頑張るゾ
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ごぼうカレー後編

 朝のラッシュアワーは、予想以上にぎゅうぎゅうのすし詰めで、移動中に読めたらいいなと持参した本など取り出せるスペースもなかった。暑くなったとはいえクーラー対策に薄手のカーデガン羽織ってきて正解だった。他人の汗をかいてジトっとした腕と密着したまま電車に揺られるなんて不快感に40分も耐えられないもんね。

 そんな満員電車を下車した時はほっとしてしまった。ただいまの時刻8:30。初日なので余裕をもって来てみたが事務所の鍵が空いていない。ダメ元でインターホンを鳴らしてみた。


「はい。」


 眠そうな社長の声。


「おはようございます。渡辺です。」

「ごめんごめん。今開けるから。」


 ガチャっとドアが開いて、スウェット姿の社長が現れた。


「渡辺さん早いね。」

「就業30分前には出勤していた方がいいかと思ったんですが、早すぎました?」

「明日からは9時ぎりぎりでいいよ。後で鍵も渡すね。」


 以前の会社は就業前に掃除をするのが普通だったけど、ここは就業後から掃除でいいらしい。


「渡辺さん初日から悪いけど、僕徹夜明けでもう少し仮眠とるから、このデータ入力しててくれるかな?お昼になったら休憩してね。じゃ、よろしく。」

「承知しました。」


 ふわぁとあくびをしながら、社長は仮眠を取りに別室へ移動した。徹夜しなくちゃいけない程修羅場だったんだろうか。締め切りがある仕事って大変だ。各自の机の上は触らないようにとのことだったので、掃除はあっという間に済んでしまった。それからは、渡されたデータをひたすら打ち込んでいった。キーボードを打つ音だけがカチャカチャ響いて、事務所内の静かさが際立っていた。


 モニターの時計が12時を回ったので、お昼休憩にすることにした。

 今日は、めんたい高菜のチャーハン。ごま油の香りがたまらない。わらしさまが我が家に来てから、1人でご飯を食べる事がなかったので、ちょっと味気ない。スケジュールボードを見ると悠ちゃんは、現場へ直行直帰となっている。データ入力終わったら、一回Google driveをチェックしてみよう。

 まだ休憩時間だから、追いかけ中の作家さんが更新しているかチェックする。前回絶体絶命のピンチってとこで続くになって悶えまくったのだ。あんな危機的状況を一体どうやって回避するのか自分でも想像したけど、いい案が浮かばなかった。どうか推しが死にませんようにと祈るしかない。

 やった更新されてる。いそいそと読み始めたら、


「お疲れ様で~す。」


 林さんが入ってきた。


「お疲れ様です。社長は仮眠とってます。」

「了解。」


 ひょいっと私のパソコンを覗いた林さんは、


「あ、これ更新されてたの?やべぇノーチェックだったわ。前回あんなシーンで終わるから続きが気になってしょうがなかったんだ。早速俺も読む。」

「私も今更新知ったところなんです。」


 お互い小説の世界に潜っていった。くっそ。またここで引き延ばされちゃぁもだもだするじゃないかと読了後に続きを渇望する例の発作が。


「うおおおおおおおお。何でこんなとこで終わるんだよおおおおおお。」

「ですよね?ですよね?区切りがいいとこまで放置しておいてまとめて読んだ方が心の安定を保てる気がします。そうは言いつつも更新通知来たら読んじゃうと思いますが。」

「これは必殺違う作品読んできをまぎらわすしかないな。渡辺さんおすすめある?」


 自分のモニターにブックマークページを表示して林さんに見せる。


「この辺が完結してて安心して読める作品ですね。」

「これ読んだ、こっちは読んだことない。へぇこれ読んでるなら、かなめって作家さんの作品おすすめ。俺のブックマークページも見せるわ。」

「読んでみます。」


 あら?意外とイケメン眼鏡と会話が普通にできた。共通の話題があってよかった。厨二病発病中だけあって異世界転生物が多いな。ざまぁ物にも手を出してるか。流行りだし鉄板だね。正社員初日にして、緊張しないでイケメン眼鏡とも仕事が出来そうです。


 ◆◇◆


 無事正社員1日目を終わらすことができた。さぁお家へ帰ろう。何てったって今晩は1番寝かせたカレーがわらしさまと待ってるもんね。


「わらしさまただいま~。」

「のりちゃんおかえり~。さっき炊飯ジャーがピピピッピピピって鳴ったよ。」

「ジャストタイム!!!それじゃぁお夕飯の準備するね。」


 野菜室から大鍋を取り出して温め始める。


「わらしさまこのお鍋お玉でぐるぐるかき回してくれる?」

「イエッサー。」


 敬礼するわらしさまかわいい。その間に私は弱火でフライパンに卵を2個投下。もう1つのコンロでフライパンにバターを溶かしながら炊飯ジャーからサフランライスを入れて、レーズンと炒める。


「のりちゃん。カレーがぐつぐつ泡立ってきたよ。」

「もうちょっと湯気が出るまで頑張って混ぜてね。」

「は~い。いい匂い。早く食べたいな。」

「私も早く食べたい。」


 サフランライスにカレールーをかけて目玉焼きをトッピングすれば今日のおうちご飯完成。

 熱々をフーフーしながら我先にと2人はカレーライスを口に運ぶのでした。


 その晩、林さんからさらにおすすめ作品がLINEに投下されていた。










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