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座敷童が小豆ご飯に飽きたと言っています。  作者: ヴぃc
第1章 アラサー無職彼氏ナシから頑張るゾ
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いなり寿司前編

 炊きあがったご飯にすし酢をかけて切るように混ぜていく。うちわ係は、わらしさまと稲荷様。どちらがたくさんあおげるか競争している。何に対しても張り合ってゲーム感覚にしてしまうのは流石男の子だね。……妖怪と神使だけど。

 酢飯を半分ずつにして、片方は汁気を切ったひじき煮を混ぜる。お稲荷さんに混ぜる気満々だったので、今日のひじきは大豆じゃなくて枝豆が入っている。わらしさまにそちらを混ぜてもらって、もう片方は梅キュウリ、じゃこ、ゴマを稲荷様に混ぜてもらう。

 その間に汁気を切った油揚げを優しく広げていく。混ぜ終わった酢飯を3人で仲良く油揚げに詰めていく。欲張ってたくさん入れるとお揚げさんが破れちゃうから優しく優しく詰める。

 先に酢飯詰めを離脱した私は、沸かしたお湯にうどんスープの素を入れて、4等分した餅を入れた餅巾着を沈めていく。花ふも入れて煮立たせる。テーブルに載せきれるかな?

 小アジの南蛮漬け、切り干し大根の煮つけ、餅巾着のおすまし、2色のいなり寿司、刻んだ紅しょうがを添えれば今日のおうちご飯の完成。


「「「いただきます」」」

 

 ハイスピードで撮影会を終えた稲荷様は、いなり寿司をもりもり食べていく。間違いなく稲荷様は大食漢だったみたい。わらしさまは、またもや油揚げの中身が気になるらしく餅巾着にかぶりついてる。私はいなり寿司をたべてる。今日もおばぁちゃんの梅干し美味しい。


「のりちゃん、お餅が入ってた!!」


 嬉しそうなわらしさま。中身見えない系がツボみたいだから今度はお宝煮を作ってあげよう。


 「今度は違うものを入れて作るから楽しみにしていてね。」

 「オレはこの魚が美味しい。」

 「昨日はカレー味だったんだよ!ね、のりちゃん。」

 「稲荷様もわらしさまもリクエストしてくれたらまた作るから遠慮なくたくさん食べてね。」


 悠ちゃんの分のお稲荷さん残るか心配っだけど、思いのほか稲荷様が小アジの南蛮漬けに嵌ったお蔭でお弁当分が十分確保できた。今度遊びに来たらもっといろんな物を作ってあげようと誓った。


 お風呂場から聞こえる歓声がリビングまで響きわたる。あんなに2人ではしゃいでいたらしばらく出てこないだろうなとぼんやり考えながら読みかけの本に目を落とす。分厚いからしばらく積読していたけど、読み始めたら止まらない。

 不登校な生徒達が鏡の世界に迷い込む話。この作家さんは新しい作品を出すたびにどんどん読み手を引き込む力が増していると思う。明日は10時に悠ちゃんの事務所に行かないといけないから夜更かししてる場合じゃないんだけど、続きが気になって最後まで読んでしまいそうだな。大人になるとマテが出来なくなっていくよね。物語を作るのは時間がかかる事は重々承知してるんだけど、読む側からしたら、一日千秋の思いで早く先を読ませてほしくて、渇望感が半端無い。


 1時間は風呂場にいただろう2人が、ドタバタと走りながらリビングに入ってきた音で、私は本の世界から現実に戻ってきた。わらしさまのほっぺたが真っ赤になってる。

 コップにコーラを注いでそれぞれに渡そうとしたら、キツネのお面を外した稲荷様がいた。あらあら、稲荷様もカハクちゃんと同じで恥ずかしがり屋だったのね。慣れてきたら無口じゃなくなるのかな?


「のりちゃん、いなりすご~く長い間潜っていられたんだよ。僕負けちゃった。」

「勝った。」


 ドヤ顔の稲荷様。そもそも妖怪や神使って息してるんだっけ?謎が多い生物だよね。潜りっこ1時間もやってたのか。無邪気だな。


 私もお風呂に入ってこよ~っと。


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