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RDW+RTA ~リアルダンジョンズワールド プラス リアルタイムアタック~  作者: 相生蒼尉
第2章 『RDW+RTA+FUCHU+FUTSU act H3 ~3人のヒドインたちによる、附中とフツーの物語~』

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38 鳳凰暦2020年4月17日 金曜日放課後 通学路


 あたし――設楽真鈴の後ろの席から、男子らしい大声が聞こえてくる。


「かー、今日はダンジョンに行けねーのかー。今日で魔石、50個は越えると思ったのによぉ」

「ま、あせんなって。運がよけりゃ明日の土曜で超えるだろ。んでよ、来週末には100も超えて、スキル講習だな。おれら最強パーティーが外部生の一番乗りじゃねーか?」

「がははっ、だろーな」

「どのスキルにすっかなー」


 推薦男子が教室で調子に乗ってる。本当に、絵に描いたように調子に乗ってる。


 ……あたしたちはもうこの前の水曜日で100個超えたもんね。言わないけど。既にスキル講習の申し込みも終わってて、この一斉下校がなければ今日、スキル講習だった。明日、土曜日の14時からのスキル講習に変更だって。


 今日は学年集会が開かれて、その場で学年主任の佐原先生から全体指導があった。流れてた変な噂のほとんどが事実無根で、おかしな噂を流さないように注意することと、噂を流した中心人物たちについては、明日、明後日の土日のダンジョン禁止と、学年全体としても、各自で今後のよりよい学校生活を考えるために、この放課後はダンジョンを禁止して、帰寮(あたしは帰宅)し、もう一度ガイダンスブックをしっかりと読み直すように、ということになった。なんだっけ? ダンジョンアタッカーとして、トップランカーを目指す者として、その高みにふさわしい心を持て、とか言われた。それは大事なことだとあたしは思う。


 あたしはさっさと荷物をまとめて、席を立つ。


「お、推薦首席サマは、もう帰るのかよ?」


 後ろの席、推薦次席の上島鉄平が話しかけてきてウザい。


「帰るよ。じゃね」

「なぁ、おまえ、そろそろ30個くらいは取れたか?」

「なんとか頑張ってるけど、ね……。んじゃ、バイバイ」

「おー、女の細腕で頑張れよー」


 ……ぐ。ずっと剣道やってきたから他の女の子より太くて気にしてるところを! 嫌味か、コイツ⁉


 かなりイラっときたけど、軽く手だけ振って、すぐに平坂さんのところへ行く。


「平坂さん、帰ろ」

「あ、うん。帰ろっ、か」


 ちょっとだけいつもより動きが鈍い平坂さんが、荷物をリュックに詰めて立ち上がった。


「……あ、そだ。ねー、設楽さん、今日、早いから、ちょっと寄り道、どう?」

「わ! JKっぽい。さんせー!」


 おお、平坂さんからのお誘いだー! さっきのバカ上島のことなんか頭の中から吹き飛んでいく。

 二人で続いて教室を出て、昇降口へと向かう。


「実はね、参宮商店街に焼きたてパンのお店があるんだよねー。この前、朝、そっちから通学した時にすっごくいい匂いがしてて、いつか食べたいなー、って」

「焼きたてパン!」

「この時間はもう、焼きたてとは言えないかもねー。でも、狭いけど、イートインもあるみたいだからねー。あ、現金、ある?」

「あるある。地元民ですから! でも、ダンジョンカードもフツー、使えるよね?」


 あたしたちのダンジョンカードは、預金通帳と連動したプリペイド機能があるから、それで支払は可能だ。

 入学時に、親がある程度の金額を入れて、そこからはもう入金ができない特別な口座で、あたしたちはダンジョンで稼いだ分をギルドで換金してこの口座に貯金していく。そして、この口座が空になる、つまりプリペイド機能があっても使えなくなる、その状態を支払い不能といって、毎月、月末に支払い不能になったら退学になる仕組み。


 なんでも、ダンジョンアタッカーたる者、なんだっけ? 自分で稼げ、みたいなヨモ大附属ダン科の科訓があるそうで。ガイダンスブック、帰ったら読み直しとこ……。


 4月は最初に親が入金してくれた分があるから、まず退学になることはない。それにあたしのような地元民で寮生ではない場合、寮費の五千円の負担がないので、生徒会費の千円だけをどうにかすればいいから、ゴブリン10匹分だし、ほぼ退学にはならない。地元民有利な状態ではあると思う。ま、そもそもこの学校に地元民なんてほとんどいないけど。

 寮生はゴブリン60匹が月の最低のノルマで、1日5匹で12日だから、そんなに難しくないと思う。実はそう見せかけて、学食の昼食代とかも着実に積み重なっていくので、実際、1日5匹って感じでは通用しないけど。


 あと、レンタルではなく、自分用の武器を買って、それからすぐに大怪我で入院して、それで支払い不能になってしまう、なんてこともあるらしい。


 昨日までで、あたしは一万五千円くらいは稼いでるから、焼きたてパンぐらい、全然問題ない。そうあたしは思ったんだけど。


「ダンジョンカードでもいいけど、あまり油断してると、あれだよー、修学旅行費とか貯められなくなるからねー。せっかくの地元民有利の状況は利用しないと」

「そっか。じゃ、現金で」


 校門を出ていつもは右へ、坂を下りて行くんだけど、今日は左で、すぐそこにある階段を下りる。この階段は平坂神宮の大鳥居らへんにつながってる。中学の時、たまに部活の先生が思い出したかのように、ここで階段ダッシュをさせてきた。今となってはいい思い出だけど。


「商店街とか行かないなー。駅前のファッションビルだなー」

「私も、ホント、たまたま気づいたんだよねー。お正月は閉まってるし」

「そもそもお正月は神宮にいっぱい店が出るもんね」

「そーそー」


 階段で足元を見ながら、あたしと平坂さんは二人で言葉を交わす。


「……推薦男子、また自慢してたよ。自慢になってないけど」

「あー、なんとなく聞こえてたかな? もはや雑音でしかないけどねー。まあ、今の状態に気付いて改善しないと、あれじゃ、2組の附中の子たちに抜かれて、来年は2組以下だと思うなー」

「本当に、ありがとう、平坂さん」

「え?」

「平坂さんがパーティーに入れてくれなかったら、あたし、どうなってたんだろうって、マジで思う」

「あ……」


 平坂さんが一度、黙ってしまった。ひょっとして照れてたりするのかな?


「……お礼を言われるような、ことじゃない、かなー」


 なんて、謙虚な人なんだ!


 パンも美味しかったし、平坂さんとも仲良くなれた! たまにはダン禁もいいね!

 あたしはこの時の平坂さんの気持ちに、何も気づいてなかった。だって、あたしは本当に心から感謝してたから。







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― 新着の感想 ―
[一言] 目論見が成功してたら設楽さんは真面目だから5+帰り道しか狩らなそうだからねえ そら礼言われることじゃないわ
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