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RDW+RTA ~リアルダンジョンズワールド プラス リアルタイムアタック~  作者: 相生蒼尉
第2章 『RDW+RTA+FUCHU+FUTSU act H3 ~3人のヒドインたちによる、附中とフツーの物語~』

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31 鳳凰暦2020年4月15日 水曜日昼休み 国立ヨモツ大学附属高等学校1年職員室


「失礼します」


 がらっと扉を開けたと同時に、平坂さんが中へと入っていった。あたし――設楽真鈴としては、中学校1年生で何度もやり直しさせられた職員室への入り方が身に染み付いてるので、あんなに堂々と勝手に入っていくのは怖い。恐る恐る、平坂さんの後ろに、隠れるようにしてついて行く。


「おい、入室許可はまだ……」

「そのようなことはどうでもよろしいのです、冴羽先生。いいですか、悪意ある、そして根も葉もない噂によって、この附属高に、いえ、後々にはこの国に、さらには世界に大きな影響を与える重要で優秀な人材がいじめによって傷つく危険にさらされているのです。なぜこのようなところでのんびり座ってらっしゃるのですか、この給料泥棒は! すぐに動いてください!」

「落ち着け、平坂。おまえの言いたいことはひとつもわからん」


 ……あたしもそう思います、先生。気が合いますねー。


「これが落ち着いていられますか! 彼がそのようなことをするはずがないのは明白です! まさに無実の罪なのですよ? すぐにでも学年集会、いえ、全校集会、いえ、全国会議を開いて、噂を否定して、このいじめを止めさせなければなりません!」

「こりゃ、ダメだ」


 先生ははいはいという感じで、片手で平坂さんを追い払うようにしながら、その後ろのあたしを見た。あしらうって、こういうのを言うんだろーな。


「こいつが言ってる彼って、誰かわかるか、設楽?」

「あ、あたしですか? え、ええっと、平坂さんが言ってる彼というのは、鈴木くんです」


 ……わあー、こっちに振られたよー。確かに鈴木くんの無罪は主張してあげたいけど、平坂さんの勢いがありすぎて今はちょっと引いてる。あたし、入学初日に、ちらっと平坂さんと鈴木くんが話してた以外で、平坂さんと鈴木くんが関わってるとこ、見たことないんだけど⁉ なんでそんなに熱いの、平坂さん⁉


「鈴木はなんて言われてる? どんな噂だ?」

「あたしが直接聞いたわけじゃないんで、又聞きですけど、なんか、女の子を無理矢理どうのって言われてます」

「誰が言ってた?」


 ……誰って言われても、あの中だと外村さん以外はほとんど知らない。カラオケにはいたなー、という感じだ。


「それはよくわかりませんが、あたしが聞いたのは、学食から戻ってきたクラスメイトの女子たちです。たくさんいたので、誰とは言えません」

「それで、なんでおまえまでここにいる?」

「えーと、平坂さんに連れられて、ですけど、あたし自身も、同じ中学校ですから、鈴木くんがそんな人ではないと、先生に伝えたく思ってここに来ました」

「そうか、そういや、おまえも平坂北中だったか……」


 先生がほんの少しだけ考え込むように自分のあごに手を添えた。


「それで、なんで平坂は鈴木のことをこんなに怒ってんだ?」

「えっと、たぶん、ですけど、平坂さんと鈴木くんが同じ小学校だからじゃないかなーと」


 そう伝えると先生は本気で驚いたみたいで、目を見開いた。そんな驚くことかな?


「すまんが、具体的な事実を元に、鈴木がどんな人物だったか、教えてくれ、設楽」


 ……うわー、難しい話はあたし、ちょっと苦手なんだけど、鈴木くんって人を知ったら、先生も助かるかも?


 ついさっき、お弁当を食べながら平坂さんに話していた中学校時代の鈴木くんの話を、あたしは先生にも繰り返した。

 鈴木くんのテストの予想問題の話と、それによって起きた、ふたつの事件について。

 ひとつは鈴木くんの予想問題を転売した生徒がいて、そのことで鈴木くんが販売方法を変えたため、それで予想問題が手に入らなくなった人たちが、販売方法が変わるきっかけになった転売くんをすっごくいじめちゃって、転売くんは転売くんではなく転校くんになったこと。


 先生の顔がすんごく歪んでるけど、その気持ち、わかります。


「でも、先生、それって鈴木くんが原因かもしれないけど、鈴木くんがいじめたり、いじめさせたりしたんじゃないですから。鈴木くんは悪くないんです」

「あ、ああ。そうか。そうかもな……」


 もうひとつは社会の先生の事件。これは、鈴木くんのよく当たる予想問題に対抗して、先生が教科書の隅っことか、どうでもいいような、授業とあんまり関係ない問題を出すようになった結果、生徒がそれに文句を言い出して、最終的にはその先生のいうことをきかなくなって、いつの間にか、その先生がいなくなって、別の先生がやってきたこと。


「マジか……」


 先生は机に肘をついてその手で自分の顔を隠すようにしてうつむいた。学校の先生の話だから生徒が転校した話よりも気持ちがわかるのかも。


「でも、先生、これも、別に鈴木くんがやらせたとか、そういうんじゃないです。鈴木くんは悪くないんです。だから、鈴木くんは、悪い人じゃないし、変な噂の方がたぶん、間違ってます」


 あたしは鈴木くんの無罪を主張できて満足だった。別に今回の噂について、何の証拠にもなってないとは思うけど。鈴木くんは人格的には問題な……いのかな、本当に? あれ?


 まあ、あたしの隣では平坂さんも満足そうに力強くうなずいてるし、あたしとしてはやり切った感がすっごくある。深く考えるのはもういいや。


 だけど、先生は疲れ切った表情になって、「とりあえず、佐原先生と相談しとくわ」と言って、あたしたちを職員室から追い出したのだった。


 その放課後に、平坂さんは先生から花の水やりを命じられた。職員室で暴走した罰らしい。先生ってば、給料泥棒とか罵られてたのに、意外と優しい罰だった。







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― 新着の感想 ―
[一言] いやー、5分で最低2千円稼げる(鈴木調べ)んだから放課後の水やりは厳しい罰だよw 実際の附中組が2層で狩りしたときの時給いくらなんだろうか
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