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RDW+RTA ~リアルダンジョンズワールド プラス リアルタイムアタック~  作者: 相生蒼尉
第2章 『RDW+RTA+FUCHU+FUTSU act H3 ~3人のヒドインたちによる、附中とフツーの物語~』

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29 鳳凰暦2020年4月15日 水曜日朝 通学路


 私――平坂桃花は、今日は8時23分に家を出ました。このようなギリギリの時間に家を出るなど、お手伝いの千代さんにものすごく心配されてしまったので、実は申し訳ない気持ちでいっぱいなのですけれど、こうしないとギリギリに教室に入る彼の通学状況を観察することは難しいと思うのです。


 ……昨日までの二日間がたまたまで、今日は今までのように早くに登校して読書をしている、などということがなければよいのですけれど。


 それにしても、不安です。遅刻するという公立中の方は、これを毎日のように感じて登校しているのでしょうか? 有り得ない感覚です。理解できません。

 ついつい、急ぎ足になってしまいますけれど、それでは意味がないのです。


 彼は昨日、冴羽先生からの呼び出しがあったようなのですけれど、それを平然と、しかも堂々と拒否していました。損害賠償と慰謝料などというあの返しは流石です。誰にも真似できないと思います。ますます彼への興味をかき立てられてしまいました。


 ただ、そのことで彼が月曜日の朝のアンケートと関係があるかもしれないと噂になってしまいました。正直、あれほど堂々と拒絶するのですから、彼自身にはやましいところなど微塵もないのだろうと思います。

 特にアンケートで問われていた不適切な男女交際など、絶対に彼には有り得ません。もう一つの魔石の売買については、今の私にはそのことで彼を見極めるだけの情報がありません。ただ、あの彼の態度なら、それについても無関係に決まっています。


 今朝はどうしても時間が気になって、周囲を確認して彼を探す心の余裕に乏しいのですけれど、どこかで見逃してしまったのでしょうか。やはり彼を見つけることはできません。

 だとすると昨日までの二日間がたまたま遅くなっただけなのでしょう。非常に残念な気持ちで正門を抜けて、昇降口へと向かいます。


 ところが昇降口で、左側から彼が私の目の前に駆け込んできました。


 ついに! ついに彼を発見しました!


 思わず足を止めて見惚れてしまいます。彼はほんのりとしたグレープフルーツのような柑橘系の香りを残して靴を履き替え、中へ入っていきました。


 私ははっと時間がギリギリであることを思い出し、彼の後を追います。

 今、10メートルほど前を彼が歩いています。背筋はすっと、自然体でまっすぐに伸びていて、おそらく百七十五センチはあるかと思われますけれど、高校一年生の男子生徒はまだ成長期だそうなので、きっとまだまだ伸びるのでしょう。


 彼の後を追うように教室へ入り、視界の端を彼で埋め尽くします。既に教室にはほとんどの生徒がいるので、私が彼の観察をしていることについて気取られる訳にはいきません。

 ちょうど彼が読書用の本を開くタイミングだったようで、外はブックカバーに覆われていてこれまでわからなかった本のタイトルがページをめくる一瞬で見えました。

 鍛え上げてきた動体視力に感謝したいと思います。彼が今読んでいる本は『日本八百万神聖国の歴史の中に見るダンジョンと現代のダンジョンの比較検討』でした。今日は家に帰ったらマングローブ通販ですぐに取り寄せます。著者や出版社までは見えませんでしたけれど、このタイトルならタイトルだけでなんとかなるでしょう。


「モモっちがギリギリとか珍しいねー」

「ちょっとねー」


 外村に応じながら、私は頭を働かせます。


 昇降口の左側から来たということは、彼は南門となる正門ではなく、平坂駅に通じる西門を利用しているということでしょうか?

 そうすると、県道から学校へ向かうのではなく、県道を渡って、さらに国道の方へ進んでから西門への急坂を登ることになります。数少ない電車通学の生徒が西門を利用するのですけれど、彼は何のために西門を利用するのでしょうか。


 あの柑橘系の香りは、いわゆる汗拭きシートではないかと考えられます。ということは、西門前の急坂で坂道を走る肉体トレーニングでもしている、そういうことでしょうか?


 とにかく、明日の朝は西門へと遠回りして、それでいてギリギリに間に合う時間を計算して……。







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― 新着の感想 ―
[一言] おお、ギリギリ来るその時を見ればどっちから来たかわかるのか 全然思い付かなかったけど、ストーカーじみてきたぞw
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