28 鳳凰暦2020年4月17日 金曜日 放課後 小鬼ダンジョン入場ゲート前
ヨモ大の学長と附属高の校長がいて、あれは佐原先生か。2年の時は担任だった。ヨモ大附属の卒業生でもある私――宝蔵院麗子にとっては懐かしい人だ。
「宝蔵院、元気にしてたか?」
「お久しぶりです。校内の出張所にいるのですが、なかなかお会いできずに申し訳ありません」
「まあ、わざわざお互い、行き来するものでもないしな」
「そうですね」
佐原先生が微笑んだ。
「もう卒業して大人になったおまえにこんなことは言いたくないが、今日は立会人として、しっかり確認して、納得しろ」
「はい?」
「おまえの報告書のせいで、学校は大忙しだ、この馬鹿もん」
「……申し訳ありません」
「まあ、いい。おまえも、認めざるを得ん」
「何がです?」
「陵の上を行く、天才が現れたってことを、だ。まあ、天災の方かもしれんが……」
陵の上を行く? あのクソ小生意気な少年が? そんなことがあるはず……。
「来たぞ、マジックポーチの確認を」
あの時、受付にいた二人がやってきた。私の顔を見ても、特に何もない。少し、苛立ちが心を揺さぶる。無視するな。そう思うが、少年は私のことなど、まるで忘れたかのようだった。マジックポーチの専有を解除してもらい、中身を確認。ポーション類や武器、それに魔石が出てきた。
「この魔石は、不正するつもりだったのでは?」
あえて嫌なことを言ってやった。
「ああ、朝と昼で小鬼ダンに入った時の分かー、どっか別のところで管理しといて下さい。広島さんが数は確認してるので」
「岡山です」
私の言葉は、この少年の何も揺るがせない。
「問題はあるか?」
「……いいえ」
佐原先生に問われて、そう答えるしかなかった。
「では、二人はダンジョンへ」
「はい」
「はいぃ」
入場していく背中を見て、まだ私の苛立ちは消えない。




