43.ホワイトハッカー
今回は短めです。
山崎や松田と別れた後、鏡とパインは近くのファミレスに入っていた。
本当は鏡の家に行きたかったのだがゲートが開いた場所からはかなり離れていたので断念したのだ。
「それにしても、これじゃ怠惰にもなるよな……。」
ファミレスの様子を見るだけでも科学力の発達は察することが出来る。
まず店員が一人しかいない。この店が小さいとかそういうことではなくだ。料理を作る、運ぶ、接客、全てロボットがこなしている。店員は格好から察するに店を管理する警備員と言った所だろう。
値段もそうだ。鏡の記憶と照らし合わせるとメニューの値段は半分以下になっていた。大方食物の大量生産技術、輸送手段の発達などで安くしても元が取れるようになっているのだろう。
以前よりも質の低い労働で、以前よりも質の高い生活が送れる。鏡の世界はそんな世界へと改変されていた。
芸能人やスポーツ選手、作家に音楽家と言った大衆娯楽としての職業にはあまり変化は無いだろうがそれ以外の職業は軒並みこのような様なのだろう。
「とりあえず、まずはこの世界のどこかにいる《堕ちた神》を探さねばならんのう。」
パインはジュースを飲みながら話し出す。
ちなみにお金は鏡の口座からいくらか引き落とした。もともとこの世界の住人なので数日なら金銭面では困らない。
「まあ、無理だろうね。」
パインの提案を払いのける鏡。
「うーむ、敵が魔法を使用したならば居場所くらいは絞れるのじゃがな。」
「魔法が使われたら特定出来るの?」
「特定はむりじゃ、あくまでどの方角から反応があったかわかる、そのくらいじゃ。」
「それじゃ、やっぱり敵そのものを倒すってのは難しいそうだね。」
パインの魔法に頼るのは難しい。
「しかし、それならどうやってこの世界の怠惰の感情を無くせばよいのじゃろうか……、働けといっても無駄じゃろうしなぁ。」
「働かせること自体は簡単だよ。働かざるを得なくすればいい。問題はどうやってそれをするかだ。」
鏡はポケットから携帯を取り出す。それは鏡がこの世界にいた時に使用していた携帯だ。
「これはこの世界の中科学が発達する前の携帯だ。だけど今でもインターネットに接続出来る。」
鏡は彼の仮説を話し出す。
「多分だけど、科学の発展によって怠惰の感情が芽生えてるのはその技術を理解できてないからだと思う。」
「どういうことじゃ?」
パインはよく意味がわからず首を傾げる。
「科学ってのは革新的な発想や基礎実験の積み重ねで発展していく。だから終わりがない。どれだけ便利なものを作っても更に、更にと研究する奴がいて、それを買うために働く奴がいて、こうやって文明になっていく。でも、この世界の科学はそうじゃない。更に便利な生活を目指してない。」
「なんでそれがわかるんじゃ?」
「さっき携帯がネットに繋がってるって言ったろ? 調べてみた結果、この一年、どの分野においても技術革新と呼べるものはない。この便利な生活が始まってから、それ以上の技術も、便利な商品もほとんど開発されてない。はっきりいって異常だ。」
鏡の説明でパインも一応は納得する。
「お主の言いたいことはわかったのじゃが、どうやって働かざるを得ない状況にするのじゃ?」
パインの質問に鏡は邪悪な笑みを浮かべる。
「コンピュータウィルスを使ってこの世界の機能を麻痺させる。」
あまりネットに詳しくないパインでもあまり褒められた手段でないことは理解できた。
鏡の表情はどう見ても悪役だ。
「少しおかしいと思ったんだ。これほど発達した技術があるのに昔の携帯でもインターネットにアクセス出来るなんて。でも考えてみれば当然だ。《堕ちた神》はこの世界のインターネットをベースに技術を提供している。その方が既存の生活に新しく技術を組み込みやすい。一般人も新しく操作方法とか覚える必要もない。」
もうパインには何がなんだか分からない。
「ハッキングは僕の十八番だ。この世界の文明レベルを元に戻す。」
パインは今回は自分の出る幕はないかもしれないと思ったが……
「そういう訳だ、手伝えパイン!」
意外にも鏡はパインに手助けを求めてきた。
10000pv 、200p達成しました!
あとレビューもつきました!
本当に嬉しいです。
ありがとうこざいます!




