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40.分業

「さて、ではこれからお前達に儂の調べたことを伝える。」


みんなでゲートを歩きながらジーさんの説明が始まる。


「儂らが救わないといけない世界は四つ、それがどの世界か、どの世界でどの感情を集めようとしてるかまではわかっとる。どう手分けするかは自分達で決めるのじゃ。」


そう言ってゲートを開く。


「ここはパインちゃん達のいた世界とにとる世界じゃ。ここには異世界人特権があり、そのせいで一般人の嫉妬の感情が高ぶっとる。」


俺たちが最初に言った世界とほとんど同じ状況か。


「ここは僕達が行きますよ。師匠。」


ジーさんの話を聞いたタケル達四人の勇者が前に出る。


「僕達は以前、異世界人特権に甘えて自己を磨くことを放棄していました。それに沢山の人に迷惑をかけています。だから、その罪滅ぼしも兼ねて、似たような状況の世界を救いたいんです!」


「「「お願いします!」」」


四人は頭を下げる。


まあ、断る理由はない。任せる事にした。


「師匠! 必ずや師匠の期待に応えて見せます!」



そう言って直角のお辞儀をするタケル達を残して再びゲートに入る。


また、しばらくゲートの中を歩き次の世界に着く。


今度は今までで一番よくわからない世界に来た。街の建物は全て丸みを帯びていてカラフルだ。街の人には丸顔の人と四角い顔の人がいる。文化レベルはぱっと見ではわからないが車のようなものが走っているのでそれなりに高そうだ。


「では、次の世界じゃ、次の世界は傲慢の感情を刺激されとる。どうやら酷い人種差別で一部の民族が傲慢になっているようじゃ。」



なるほど、傲慢か。しかも人種差別を煽っているとは、なかなか解決するのが難しそうだな。


誰が担当すべきか悩んでいると……



ー山崎殿、この世界は我に任せてもらおうー


ノヴァが一歩前に出る。


「いいのか? 人種差別って結構根深いぞ。」



ー問題ない。傲慢な感情を抱く愚かな人間にさらに上の存在がいると教えてやればそれで良い。ー


とんでもないな、さすが竜王。考え方が違う。自分の存在の前では傲慢な感情を抱けるものなどいないと自負しているのだろう。


いっちゃ悪いがノヴァも相当傲慢だと思うぞ。


ー我の自信は傲慢ではない。自然の摂理だ。ー


「って、勝手に心を読むんじゃない!わかった、じゃあここはノヴァに任せるぞ。」


ーああ、任せろ。ー



こうして二つ目の世界はノヴァに任せ次の世界に向かう。


次の世界は今までの世界と違い、かなり未来的だった。立ち並ぶ高層ビル、空を飛ぶ車にドローン、街の至る所にいるロボット。まるでSFの世界に来たようだった。


ジーさんがこの世界に着いて説明する。



「さて、ではこの世界に着いてじゃが、ここは少し前まで山崎や松田の世界とさほど変わらぬ文明レベルじゃった。しかし、この世界の住人が理解できないレベルの科学を《堕ちた神》が持ち込んだ。それで一気に便利になった暮らしの中で人々は怠惰の感情を抱いておる。」


よく見てみれば車も自動走行のようだし、ロボットも人間を乗せて目的地までナビゲートしたり、かなり便利そうだ。急にこんな生活になったらそりゃ怠惰にもなるよな。


俺たちは周りの未来的な景色に見とれていた。今ならパインが俺たちの世界で興奮したのもわかる気がする。


そんな中、一人、明らかにみんなと違う表情の人物がいた。鏡だ。


「山崎さん、この世界、俺に任せて。絶対奴らの思い通りにはさせないから。」


今まで一番面倒くさそうにしていた鏡とは思えない、熱のこもった声だった。


「なにか理由でもあるのか?」


俺は少し気になって聞いてみる。


「ここは、俺のいた世界だ。自分の世界は自分で守る。」


「な⁈ ここが鏡の世界なのか?」


「間違いない。かなり景色は変わってるけど、文字とか、そこのテレビに映ってる番組の芸能人とか、どう見ても俺の世界だ。」


鏡は今までで一番真剣な目で俺をみる。


「この世界は俺に任せろ。自分の世界は自分で守る。」


力強くそういった。


「わかった。しくじるんじゃねーぞ。」


俺は鏡を信じることにした。そのままゲートに戻ろうとするがーーーー!


「ちょっと待つのじゃ。鏡、儂もお主に協力してやろう。この世界に残る。」


パインが残ると言い出した。


「なんで残るんだよ。俺一人で十分だ。第一ここは俺の世界だ。」


「うるさい、単純にこの世界の技術が気になったからじゃ! 儂が残りたいから残るんじゃ、わかったか!」



パインはこう言っているが実際は鏡を心配してるのだろう。もしこの世界に来た《堕ちた神》が直接鏡を襲ったら鏡になすすべはない。


筒香の時の俺のようにボコボコにされて終わりだろう。



パインもいた方がいいと判断し、言い争っている二人を後にして残った俺と松田で次の世界に行く。



最後の世界の説明が始まる。


「この世界は色欲の感情が渦巻いとる。最近急激に惚れ薬、媚薬が蔓延し、乱れた性の世界となっておる。おそらく薬の販売もとは《堕ちた神》じゃ。そこを叩けばどうにかなる。」



ちょっと待て、乱れた性だと?



あたりを見ると可愛く、爆乳から貧乳までありとあらゆる女の子がもうそれはそれは派手な格好で歩いていた。


夢にまで見た異世界ハーレムがこの世界でなら作れるんじゃないか?



「なあ、松田。この世界はむしろ保存すべきなんじゃないか?」


「何言ってるんですか、先輩まで色欲出しちゃダメでしょ。さ、こんな世界さっさと僕ら三人で終わらせましょ。」


さすが既婚者は違うな。動揺がない。


ってあれ? 三人?


「俺と松田の二人しかいなくないか?後一人って誰だ?」


辺りには誰もいない。


「先輩、僕の足元みて下さい。」


松田がため息混じりに足元に目線をやる。


そこには酔いつぶれて寝ているシュランがいた。



そういえば忘れてたな。松田が引っ張ってきてたんだっけか。





とりあえずこれで全ての世界に俺たちの仲間が行くことが出来た。








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今3話まで投稿してるので是非読んでみて下さい!

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