39.戦友、再び
「ふう、随分久しぶりにかんじるのう。」
パインは少し嬉しそうだ。
俺たちは今、ジーさんに協力してもらいパインのいた世界に来ていた。
なぜかって? 最強の仲間達にもう一度力を借りるためだ。
「さて、レオンの手下が大罪の感情を集めるまであまり時間がないかもしれない。手分けしてみんなを探すぞ。」
初めて異世界に来た時に仲間になったもの達、城将軍タイガー、最強のソロ冒険者シュラン、そして竜王ドラグニール・ノヴァ、いくつかの世界を回ったが彼らに匹敵するものはいなかった。
俺は今まで異世界チートを倒すためにはその世界の住人が中心にならなければならないと思ってきた。
基本的にその考えは今も変わらない。
だが、レオンは別だ。奴は何度も転生を繰り返した、言うならば「異世界間チート」だ。
多数の世界に手をかけてるなら多数の世界から抵抗されても文句は言えないだろう。
何しろ、レオンの野望が叶ってしまった場合、どの世界も無くなってしまう可能性はあるのだ。
「とりあえず、俺は王城に行ってタイガーの行方を聞いてくる。」
「儂は師匠のところに行きたい。」
「なら僕と鏡くんはシュランさんですね。」
と言うことで、俺がタイガーを、パインがノヴァを、松田と鏡はシュランの元へ向かい、協力をお願いする事にした。
「じゃあ、一旦解散。」
そう言って一同は別れる。
みんなを見送って俺も城に向かう。
ちなみにジーさんは俺の横にいて貰っている。仲間を集め次第ゲートを開いてもらうためだ。
しばらく歩き城に着く。
以前、勇者四人で警備をしていた時と違い、沢山の鎧を着た兵士が城の周りにいた。
俺は門番に中に入れてもらえないか聞いてみるが当然ダメだ。
異世界特権がなくなった今、俺は部外者でしかない。いれてもらえるはずないか……。
どうしようかな、と思っていると。
「あなたは、山崎殿ではありませんか。お久しぶりですね。」
俺に話しかける者が。
彼は馬車を止め俺の近くにくる。
「久しぶりですね!プリン・プルルン公爵。」
その男は以前俺は達に協力してくれた貴族のプリン・プルルン公爵だった。
「公爵がどうしてここに? 」
「今日は他国の貴族との会談がありましたね。それで王城まで。山崎殿こそどうしてここに?」
「少し長い話になるんですが……」
俺は簡単に現状を説明し、タイガーと会いたい旨を伝える。
「なるほど、タイガー将軍ならば天下一武闘大祭の後再び城将軍になりましてね。会いたいなら私とともに城内に入ってください。」
俺はタイガーならまた城将軍になっていると思っていたがやはりその通りだったか。わざわざ城まで足を運んだのが無駄にならずに済んだ。
俺は公爵の言葉に甘えてそのまま城に入った。
公爵に案内された部屋で待つ。
しばらくすると部屋のドアを開ける音がしてーーーー
「久しぶりだな、山崎殿。元気にしてたか?」
そこには、以前スラムで見た時とは違いその身に立派な鎧とそれに負けない威厳を携えた将軍、タイガーがいた。
「久しぶりだな、タイガー将軍。」
懐かしいとともに、頼もしい感じもした。
「公爵から聞くに、儂に話があるそうだがなんだ?」
「それなんだが……ってわけで、今俺たちには人手も時間もない。協力してくれないか?」
俺は公爵に話した事と同じことをタイガーにも話す。
タイガーは少し申し訳なさそうな顔をして……
「すまない。前のようになにも任務がないなら山崎殿を手伝うこともできた。しかし今は王からこの城を守るように命じられている。いくら山崎殿の頼みでも城をないがしろにするわけにはいかない。」
俺の協力の要請を断る。まあ、当然か。俺がタイガーの立場でも断るだろう。
ここでさらにお願いしてもタイガーに迷惑をかけるだけだ。俺はおとなしく引き下がろうとする。
「山崎殿、俺は協力することはできないが代わりの人物を紹介しよう。」
しかし、ここで思いもよらない発言がタイガーから飛び出す。
誰かはわからないがとてもありがたい話だ。
俺はタイガーにお願いしてその人物を紹介してもらう。
タイガーは部屋の外で待機していた部下にその人物を呼びつけるように命じる。
しばらく部屋で待つと、
コンコン、とドアがノックされ四人の男が入って来た。それは俺もよく知っている人物だった。
「師匠、お久しぶりです。」
そこには、タケルを始めとした四人の勇者がいた。
「どうだ、山崎殿。懐かしいだろう。彼らは特権がなくなった後、俺の部下として城の警護についてもらっている。」
タイガーは軽いサプライズくらいのつもりらしい。
しかし……ぶっちゃけ気まずい。
俺はタケル達に師匠ずらしたあげく負けるように画策して、しかも異世界人特権までなくしたんだぞ。
タケル達からしたら裏切られた気持ちでいっぱいだったはず……
「師匠! 僕達少しは立派になったでしょうか。」
へ?
「天下一武闘大祭で僕達勇者は全員敗北しました。そしてそれは師匠が仕組んだってことも聞きました。それは僕達に挫折を与えるためですよね?」
うーん、タケル達は俺のした事をめちゃくちゃいい方向に捉えてるようだ。
「師匠がいなくなってからも、毎日雑巾掛けの修行を続けています! 絶対に足は引っ張りませんので連れて行って下さい!」
「「「お願いします!」」」
四人はビシッとお辞儀をする。
罪悪感ハンパないな。ま、いっか。
「見ればわかる。少しはマシにったようだな。」
「「「「師匠!」」」」
便利だし師匠ごっこは継続するとするか。
てか、実際こいつら強いしな。四人揃えばノヴァとも互角くらいの強さはあるだろう。
少し予想外の展開だったが結果オーライだ。
とりあえず協力な助っ人をゲットできたので、そのまま四人を連れて城を出る。
みんなとは、城下町のギルド会館の前で集合と言ってあるのでそこに向かう。
俺たちがついた頃にはすでに全員揃っていた。
「おう、久しぶりだな。ノヴァ、それに……なんでシュランは倒れてるんだ?」
そこには人化した竜王ドラグニール・ノヴァと顔を真っ赤にして倒れてるシュランがいた。
「えーとですね。シュランさんが協力して欲しいなら飲み比べで勝てって言うから飲み比べしたんですけど……」
あーなるほどな。そういえばシュランは酒にはすごく弱いんだったな。大方酒の二、三杯も飲んだところで倒れたんだろう。
「一杯目で倒れちゃいまして。」
よっっわ⁈ これだけ低く見積もった予想の下をいくなんて。
こんなんだけど戦闘においては勇者を圧倒出来るほどの実力があるんだよな。人は一面を見ただけでは語れないといういい見本だ。
ー山崎殿、お主さらに強くなったか?ー
ノヴァが精神に語りかける。
「いや、たしかに以前と比べたら体力は上がったかもしれないけど……強くはなってないと思うぞ。」
俺は異世界に行くようになってから、ジョギングを始めている。今まで行った異世界は車がないのがスタンダードだったのである程度の体力はあった方がいいのだ。
しかしノヴァが言っているのはそういう事ではないようで……
ー魂のことだ。以前より力強くなっている。どこか一皮向けたような感じだー
「そうか? 俺としては特に自覚も無いんだけどな。」
ノヴァにしかわからない何かがあるのだろう。
とにかく、これで全員揃った。
考えられる限り最高のメンツだ。
「これから俺たちはレオンの野望を打ち砕く。全員覚悟はいいか?」
俺はみんなの目を見る。
確認はいらなかったか。
「それじゃ、ジーさんゲートを開いてくれ。」
俺が頼むとジーさんはすぐにゲートを開いてくれる。
「儂は神であるがゆえに、他の世界に直接的に干渉することはできん。だから、頼んだぞ。」
「ああ、任せとけ!行くぞ!」
俺たちはゲートに飛び込んだ。
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