33.ヒット・ラーンプ
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突如、街で爆発が起こる。
俺とパインからそう遠くない建物が崩れる。
立派な装飾もただの瓦礫と化す、あたりは埃が舞っている。
「パイン! 怪我はないか?」
「あるわけがなかろう。たとえすぐ近くで爆発が起きても平気じゃ。」
流石、魔王。驚いてすらいない。
とりあえず街の人にも怪我はないようだ。
しかし……、ちょっと街の人の反応がおかしい。
なぜかまったく怯えてない。むしろ喜んでいる……?
俺は近くにいた女性に話を聞く。
「すいません、ちょっといいですか? 僕ら旅の者なんですけども。」
「どうしたんですか? 」
「どうして爆発があったのに皆さん驚いてないんですか? 」
「よそから来た人ならわからないかもね。今この街にはね、反政府軍がいてね、それで現政府軍の施設を爆破してるのよ。今の政府がひどい独裁者なもんだからみんなの不満はたまっていたしね。」
うーん、要はテロ行為だろ? いくら爆破されるのが政府の施設だけとわかっていても驚きそうなもんだが……、どうやら今の政府はかなり嫌われているのだろう。
それにしてもこれはかなりいい情報かも知れない。
ジーさんは俺たちを半ば無理矢理この世界に放り出した。
しかし、実はちゃんと説明書きをくれていた。松田と別れてパインと二人になった時に気づいたのだが、ポケットにエネルギーに変換できる感情の種類を書いた紙をみつけたのだ。
紙によると、いわゆる七つの大罪と呼ばれる感情がエネルギーに変換できるらしい。
今の女性の話を聞く限り、民衆はテロを起こすほどに今の政府に不満を抱いてる。
これは憤怒の感情にあたるのではないか?
もしそうならば、この感情を生み出せるのは現政府関係者のみ、わざと圧政をしいて民衆の怒りを買う。その可能性が高い。
「パイン、とりあえずこっからは政府関係者の情報を中心に探っていくぞ。」
「了解じゃ!」
俺とパインは現政府の有力者、とりわけ一代でのし上がってきた者がいないか調べることにした。
おそらく、《堕ちた神》が送り込んだ能力者は転生、もしくは転移してきた奴だろうからな。
今度は爆発を見て喜んでいた人たちを中心に話を聞く。
「どうだったパイン? 怪しい噂のあるやついたか?」
「いたぞ! 多分、そいつが《堕ちた神》の手先じゃ。山崎は?」
「いた。絶対こいつだろ! ってのが一人。」
俺とパインの言う人物は同じだった。
現政府の最高司令官 ヒット・ラーンプ。彼は10年前まで無名だった。しかし、現在この世界を統治している現政府軍に入団するやいなや、八面六臂の大活躍ですぐに出世。異例の若さでで現政府軍のトップ、つまりはこの世界の支配者となったのだ。
彼は天才的なアイデアや戦術、武器などを次々と生み出し稀代の天才と呼ばれているそうだ。
しかし、その全ても、例えば保険のシステム、火薬の発見、蒸気機関の開発など、全て俺たちの世界にある考えや技術ばかり。
「どう考えても《堕ちた神》の手先、能力者はこのヒット・ラーンプじゃの。どうするのじゃ? 倒すだけなら儂だけでもできるぞ?」
パインが物騒なことをいう。
異世界チートが気にくわないだけだった今までならそれでよかったかも知れない。しかし、今回はそれじゃダメだ。
「もしヒット・ラーンプが能力者じゃなかったら意味がない。却下だ。」
「こいつが能力者でないなどあり得るのか?」
「可能性としてはな、こいつを裏で操っている、表舞台には出てこない奴がいるかも知れん。」
その可能性がある以上、不用意な攻撃は絶対にしないほうがいい。
能力者が裏で指導者を操ることに徹しているのであれば、現在の独裁者、ヒット・ラーンプを倒しても第二、第三の独裁者が現れるだけだ。民衆の怒りを収めることは出来ない。
俺はパインにそう説明する。
「じゃあ儂が第二、第三の独裁者も倒せばいいではないか? 魔法も持たぬ人間相手なら簡単じゃぞ。」
パインが反論する。
やっぱり発想はまだお子様だな。
「もしパインが、現政府が立ち行かなくなるまで独裁者を倒し続けたとして、その後どうするんだ?」
「その後?」
「突然、指導者がいなくなればこの世界は混乱する。下手すれば現政府の軍が武力で抑えてる民族が独立戦争とか起こす可能性もある。」
「なるほどのう。たしかに儂の父がいなくなった時も、混乱に乗じて魔王の座を奪おうとする者もおったしのう。」
実体験もあるためパインは納得してくれたみたいだ。
ん? ちょっと待てよ……。
今までの流れを整理すると、
①独裁者の政府のせいで民衆の怒りがたまる。
②独裁者を倒しても代わりが出てくる可能性がある。
③代わりが無くなるまで倒し続けたら今度は国を治める組織がなくなり混乱が生じる。
④どうしよう……。←今はここだ。
俺は一つ作戦を思いつく。
「現政府がなくなった後も統治する組織があればいいんだ。パイン、行くぞ、現政府をぶっ潰せるかもしれない。」
俺はパインを連れて反政府軍の元へ向かうことにした。
簡単な話だったんだ。いつの時代も圧政、独裁を打ち砕くのは判を押しように決まっている。
そう、革命だ。
今、わざと少し短かめで書いてます。
一話一話のボーリュームってもう少しあった方がいいですかね?
ツイッターとか感想欄で意見があればよろしくお願いします。




