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32.邪神の企み

筒香の事件から一週間がたった。


俺、松田、パイン、鏡の四人は会社の屋上に集まっていた。みんなの視線の先にはジーさんがいる。


「では、《堕ちた神》に取り調べをした結果わかったことを話すぞい。」


今日はジーさんがみんなを集めていたのだ。


ジーさんは筒香に協力していた《堕ちた神》について話す。


「結論から言うと奴は下っ端じゃ。奴自身は《堕ちた神》ではない。」


「どういうことだ? 別に黒幕がいるのか?」


「そういうことじゃの。黒幕がなにを企んどるかまではわからんかった。おそらく下っ端は計画の核心までは知らないようじゃな。」


ふーむ、つまり今回の事件の根っこはまだ掴めてないのか。


「ところで……」


松田が質問する。


「なんでその下っ端は筒香の手助けをしたんですかね?」


たしかに気になる。筒香の野望を手助けしたところで得することなんてあるのか?


「筒香は実験に使われたんじゃ。」


ジーさんは答える。


「人間の強い感情をエネルギーに変換することが出来るかどうか、筒香で試していたんじゃ。」


「エネルギー?」


「ああ、使い道はわからんが黒幕は感情を糧に大きなエネルギーを得ようとしているようじゃの。」


ジーさんはここでいったん咳払いをする。


「それでじゃ、今回皆に集まってもらったのは他でもない。黒幕の野望を阻止して欲しいんじゃ。」


はぁ⁈


「ちょっと待てジーさん! 俺、下っ端にさえ入院するほどボコボコにされたんだぞ⁈ 無理に決まってるじゃねーか!」


「安心せい、なにも直接戦えとは言っておらん。奴らは別の世界でも感情からエネルギーを得ようとしてるようじゃ。それを阻止して貰いたいのじゃ。」


「それって具体的にどうすればいいんですか?」


松田が尋ねる。


「簡単じゃ、奴らはエネルギーをたくさん得るために各地に能力者を送っておる。そして各地でたくさんの人間から強い感情を生み出そうとしておる。だからそれを阻止して貰いたい。」


「阻止って言われても……。」


「ええい! つべこべ五月蝿いんじゃ! 入院して丸くなったのか山崎! いいからさっさとたおしてこい!」


ジーさんは俺たちの足元にゲートを出す。


扉が開いて俺たちはゲートの中に落ちていった。


「ふざけんな、クソジジィいいいいい!」



しばらくゲートの中を落ち続けてーーーー




ドスン!




ゲートから落ちた。どうやら異世界に来たようだ。



「たくっ、ふざけやがって。それでここはどこだ?」


周りを見ると薄暗くどうやらどこか、路地のような場所のようだ。


「建物の感じ的に中世のヨーロッパっぽいですね。」


「ここは少し埃っぽいのう。」


「てゆーかなんで俺まで?」


みんな口々に感想を言う。



「それでこれからどうします?」


松田が尋ねる。


「僕らターゲットの能力者の顔も名前も知らないんですよ?」


「それなんだよな……。」


今回の異世界チート討伐は流石にヒントが無さすぎる。


俺が悩んでいると……


「おじいさんさ、能力者は沢山の人間から強い感情を生み出そうとしているっていっていたよね。見た感じこの世界、テレビとかネットみたいなものもなさそうだし、強い感情を生み出せる位置にいる人物ならある程度絞れるんじゃない?」


鏡が話す。


「どういうことじゃ? 鏡。」


パインはイマイチわかってないようだ。


「つまり、貴族とか王様、有名な冒険者とか、たくさんの人に影響を与えられる人なら強い感情を生み出すのも容易なんじゃないかってこと。」


鏡の推理は的を射ていると言えるだろう。


「よし、なら大衆に強い影響を与えてそうな人物を探すぞ。出来るだけ人間離れしたエピソードを持つ奴とかに注意して探せ。」


「わかりました!」

「わかったぞ。」

「俺もやるの?」

「当たり前だ。」


こうしてとりあえずやることは決まった。


というかジーさんのくれた情報が少なすぎてこれくらいしか出来ることが無いってだけだけどな。


まったく本当に適当なジジイだ。


俺、パインと松田、鏡の2グループに分かれて書き込みを開始する。



「おい、山崎! 海じゃ、海があるぞ!」


「そだねー、すごいねー。」



「おい、山崎!スラム街じゃ、スラム街があるぞ!」


「そだねー、すごいねー。」



パインと一緒になったのは失敗だったかもな。この世界はどことなくパインのいた世界に似ている。パインは懐かしくてテンションが上がりっぱなしなのだ。


道行く人々に話を聞きながら、パインにも相槌を打つこと数十分。ことは突然起きた。



ドッガーン!



街中で突如、爆発が起こった。




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