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星の代理戦争~Twin Survive~  作者: 一 弓爾
星の代理戦争 後編

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六十七話 最終決戦③

 ここから戦いの展開が大きく変わる。

 影慈の予想している、清宮の特殊能力の未来視、思考伝達で清宮、虎西共に攻守が優れている点は変わらない。

 

 しかし、〝人数が増えたこと〟〝比賀の《空間裂断》〟を警戒していること、何より〝虎西の左腕が義手になったことで動きがやや遅く〟なっている。


「綾島さん、比賀さん! まずは甲冑を倒す! 俺と綾島さんで隙を作り出す。そこを比賀さんの魔法で決めてくれ!」光葵は叫ぶ。


 二人から「オーケー」との返答がある。


 清宮の《強化水龍》《高圧穿孔》《強化水刃》は常に急所を狙ってきている。


 そして、虎西の《金帝魔法――構築、魔金属の投斧なげおの》での高速攻撃も強力だった。

 だが〝攻略方法〟が定まっている光葵達の行動は最適化された――。


「ここで決める……。《光速移動×反射魔法――光彩陸離》!」綾島は虎西に超光速で接近。その勢いを乗せたまま強烈な《破邪の鉄拳》を六連撃放つ。


 虎西が少しふらついた隙に光葵が「《闇魔法――闇霧固め》」を発動する。虎西の動きを闇霧で固めて止める。


「《合成魔法》《乱生魔法×空間転移――空間裂断》……!」比賀が虎西に魔法を放つ。


 清宮は《強化水龍》で虎西を助けようとする。しかし、強化水龍諸共に虎西は縦に両断される。

 地面に堕ちた虎西だったモノは金属音を虚しく響かせる。


「虎西さん、ごめんなさい……。私があなたの意志を継ぎます……」清宮は切なく呟く。


「このまま倒しきる! いこう!」光葵は気合を入れる。


「これが最後の復讐……確実に殺す……」綾島の瞳が黒く輝く。


「カイザーの仇は取らせてもらう。悪いが三対一だがな……!」比賀は覚悟を言葉に出す。


「私は負けない。来なさい……! 《魔眼×付与魔法――強化版魔を狩る黒衣》!」清宮が声を張り上げる。魔眼の黒い輝きが全身に広がる。


 光葵達三人の一斉攻撃が清宮に放たれる。《破邪の砲弾》《擬似神槍グングニル》《空間裂断》。


 清宮は全てを予見し躱したようだ。そして、《強化水龍》《高圧穿孔》《強化水刃》を放つ。


 清宮の攻撃はタイミングが完璧であり、完全に躱すことは不可能だった。三人共傷が増えていき、血が舞い散る。


 だが、全員が回復魔法を使えるため何とか戦闘を継続していた。


 一進一退の攻防が続く。ただし、清宮には〝攻撃は一度〟も当たっていない……。


「このままじゃ三対一とはいえ、体力かマナが尽きる……。攻撃を当てないと……」光葵は焦る。



 その時影慈の声が聞こえてくる。


(清宮を観察していて分かった。おそらく、未来視は〝清宮の視野範囲の未来〟が予見できる。比賀さんの急な参戦に対応できてなかったからね。まあ、魔眼があるから視野範囲は広いだろうけど……。あと、これは完全に予測だけど未来視は視野範囲の〝未来の可能性を見れる〟能力なんじゃないかと思う。僕達の攻撃のテンポが不意に変わった際に〝未来視ではなく反射神経〟で躱してる時があった。〝未来の可能性が最も高い行動に対して〟清宮が動いているならそこに勝機がある)


(そうか……そういうことか……影慈。本当にお前と一緒に戦えてよかった)


(うん。僕も思ってるよ。みっちゃんと会えて……一緒に戦えてよかった……)


(おう! いくぞ影慈。最終決戦だ……!)



「綾島さん! 比賀さん! 次の攻撃で決めたい。『未来の可能性を分岐』させる! そこでできた隙を衝きたい。協力してくれ……!」光葵は乱戦状態のため大声で伝達する。


「未来の可能性……。了解」綾島は短く返事をする。


「未来の可能性か、なるほどね。私も次の攻撃は強めにいくよ」比賀の左眼に鋭く光が奔る。


「何か策略があるみたいね……」清宮は静かに呟く。


「まずは私の速さで……。《光速移動×反射魔法――光彩陸離》!《光魔法×分身魔法――残照ざんしょう》!」綾島は清宮に超光速で突っ込む。


「相変わらず速いね……。でもここでしょう? 《付与魔法――超敏捷アップ》……」

 清宮の一瞬で速度を引き上げた《強化水刃》が綾島を両断する……。


 刹那〝綾島〟から《遍く浄化の光》が放たれる。


 清宮は〝予見外〟の攻撃にワンテンポ遅れて攻撃を躱したようだ。

 綾島の残照は超高精度の分身を作る魔法だ。清宮に〝誤認識〟させるには打って付けだ。


「《乱生魔法――乱空移動、心魂乱打》……!」比賀は清宮の隣に高速で移動する。そして《心魂乱打》を放つ。

 清宮は〝反射神経〟で攻撃を躱したように見える。なぜなら、綾島の攻撃を回避する際に、ワンテンポの遅れが生じているため、動きに無理が感じられたからだ。


 そして、清宮は一見攻撃を躱せているように見えたが、攻撃は清宮の頭部に当たる。比賀は《心魂乱打》と同時に《空間転移》を使っており、比賀の攻撃はワープホールを通じ若干位置がずれていたのだ。


「うっ……」清宮は呻き声を上げる。


 今なら、乱生魔法で心と魂を乱され〝未来視〟に綻びが生じるはずだ……!

「コレで決める……!」〝光葵と影慈〟はマナを高出力に練り上げていく。


「まだ私は……」清宮は光葵を見据える。


「さあ、どの攻撃が来るだろうな……。いくぞ!」光葵は一気に加速して清宮に接近する。


 次の攻撃は完全に予見することは不可能なはずだ。〝未来の可能性を分岐〟させたからだ。光葵には〝人格が二つ〟ある。そして〝人格共存状態〟も入れると未来の可能性が単純に〝三つに分岐〟する。そして、光葵と影慈は事前の打ち合わせで、それぞれの攻撃の可能性をほぼ同じにした。


「私は『未来視』に頼らなくてもあなたに勝つ!」清宮は叫ぶ。清宮も直感で、光葵と影慈の考えに気づいたのかもしれない……。


「はぁぁああああ!」清宮の五頭の《強化水龍》と《強化水刃》が光葵に襲い掛かる。


「負けねぇ!」《擬似聖盾アイギス》まずは〝人格共存〟での防御。〝主人格交代、影慈〟《黒風炎刃》《擬似神槍グングニル》攻撃で水龍を霧散させる。〝主人格交代、光葵〟《理の反転》黄金色に光る右手で清宮の左頬に触れる。


 瞬間、清宮のHP、MPがそれぞれ逆転する。つまり、マナは回復するが、一度も攻撃を受けていなかったが故にHPはゼロとなる……。


 清宮の魔を狩る黒衣がゆらゆらと霧散していき、額の第三の目の金色の輝きは徐々に薄れていく……。どことなく穏やかな顔で清宮は静かに息絶える……。


「……ふぅ。終わった……」光葵は一度に魔法を多く使い、かつ《理の反転》を高速で使用したため、マナが減り過ぎて意識が朦朧とする。俺自身ギリギリ生きてる感じだな……。


 清宮から〝第六感強化〟の奪取はできている。


「みんな勝ったよ……」環、頂川、ルナ姉、カイザー、朱音の顔が浮かぶ……。


「……ルナ姉、カイザー君、仇は取ったよ……」綾島はどことなく雰囲気が柔らかくなる。


「ルナさん、ガキ……見ててくれたか?」比賀は空を見上げる。


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