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星の代理戦争~Twin Survive~  作者: 一 弓爾
星の代理戦争 後編

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六十五話 最終決戦①

 それから十日間は回復と修行を主にしていた。

 

 綾島の様子は昔とは完全に変わった。口数が少なくなり〝復讐〟のみに固執している……。


「綾島さん。修行の成果もあってかなり強くなったな。《反射魔法》と《分身魔法》も使いこなせてるし!」光葵は意識的に明るく話しかける。


「……うん。強くなれば、復讐できる可能性が上がる……」綾島のどす黒い瞳には光を感じない。


「綾島さん。その……あまり自分を追い詰めないで欲しい」光葵は目を真っ直ぐ見て伝える。


「もう失いたくないの……。今の私の方が戦いやすい。戦力面でも感情面でも……」


「そっか……。俺もいるから頼りにはしてくれよ……」これ以上光葵は何も言えなかった……。


 ◇◇◇


 翌日、二人で古い洋館の近くを歩いていると守護センサーが反応した。センサーは相手が一人だと告げる。


 しかし、知覚した洋館に入ると、敵と思われる者は〝二人〟いた。二人とも異様な雰囲気だ。

 一人は清宮だが、右眼は〝魔眼〟額には金色に輝く〝第三の目〟が浮かび上がっている。その隣には大柄な西洋の甲冑を着た何者かがいる……。


「お久しぶり。日下部君と綾島さんだったよね?」清宮は穏やかな口調で尋ねる。


「そうだ……。お前の隣にいるのは何者だ?」光葵は静かに問いかける。


「彼は虎西とらにしさん。代理戦争の参加者じゃないけど魔法を使う『介入者』よ。天使サイドにもいるんでしょう? 伊欲さんからの情報共有だと赤髪の高校生くらいの女性だと聞いてるわ。その女の子はいないの?」清宮は取り繕う様子も無く言葉を返す。


「……その女の子は戦闘の結果魔法が使えなくなった。だからもう代理戦争には無関係だ」光葵が淡々と答える。


「そう……。『魔眼』で分かる。あなたは嘘をついていない……」


「一つ聞いていいか? 虎西って人は元々魔法が使えたのか?」光葵は単純な疑問を口に出す。


「いいえ。彼は私の魔法で『マナ知覚の覚醒者』になってもらった……」清宮は憂いのある声だ。


「ここからは俺が話しますよ、清宮さん」凛とした声で虎西が声を出す。


「俺は社会運動団体『Hоpes』の一員だ。『世界平和や平等』のための運動をしている。そして、Hоpesの代表が清宮さんだ。ある日『第三の目』と『魔眼』に目醒められた清宮さんが俺達に呼びかけた『全人類の救済のために命を懸けて助けて欲しい』と。もちろん、強制ではない。手を挙げた者は十三人だった。清宮さんの《第六感強化×付与魔法》で『マナ知覚の覚醒者』にしてもらったんだ」

 虎西は信念を感じさせる物言いをする。


「虎西さん、重要なところが抜けてるわ……。覚醒に成功したのは虎西さんだけで、他の十二人はみんな死んでしまった……」清宮は悲しげに宙を見上げる。


「皆、覚悟の上です。清宮さんの『全人類の救済』のために命を懸けたのです。俺もそのうちの一人です。気に病まないでください……」虎西は清宮に優しく声を掛ける。


「……そうね。私が行うべきは全人類の救済。みんなの命、絶対無駄にしない」清宮は芯のある声だ。


「……なるほど。そうだったんだな」突飛な話であり、光葵としては、正直驚きが大きい。


「そんなことはどうだっていい……。あなたがカイザー君と比賀さんを殺したの?」綾島がどす黒い瞳で殺意混じりに問いかける。


「……そうよ。私がカイザー君と比賀さんを殺した」清宮から淡々と返答がある。


「あなたが二人を……。許さない。殺す……」綾島の身体中から殺気が迸る。


「虎西さん……。すぐ戦闘になりそう。いけそう?」清宮は虎西に確認する。


「もちろん大丈夫です。清宮さん。全人類のために一緒に命を懸けます」虎西は真っ直ぐな声だ。


(影慈……!)――〝人格共存〟左右の瞳は琥珀色、陰のある黒へと変わる――。


「復讐、殺す……。《光魔法――覚醒の光明、思考浄化》……!」綾島は知覚力、感覚を目醒めさせ、かつ戦闘特化の思考回路に変貌する。

「《光速移動》……!」綾島は一気に清宮へ迫る。


「清宮さんには攻撃させません!」虎西が前に出て庇う。


「邪魔……。《光魔法――破邪の鉄拳、破邪の光輪》!」綾島は光速で《破邪の鉄拳》を五連撃、直後に《破邪の光輪》を放つ……。

 眩いばかりの光が発生し、少し遅れて爆音が鳴り響く。


 しかし、そこには虎西が〝無傷〟で立っていた。


「俺の《金帝きんてい魔法》は『魔金属』を創出できる。この甲冑も魔金属でできている」虎西が自分の魔法の説明をする。


「魔法の説明なんて随分余裕だな。あと、綾島さん一人で突っ込まないで!」光葵は大声を出す。


「我々のしていることは全人類の救済に必要なことだ。何も隠すことはない」虎西は信念を感じさせる言い方をする。


「ご立派な大義だな……!」光葵は状況を観察して考える。綾島の攻撃でも一切傷が入っていない。凄まじい防御力だ。どう崩す……?


「私も戦うわ《合成魔法》《付与魔法×水魔法――強化水龍》」清宮は《強化水龍》を六頭創出し、それぞれの龍が光葵と綾島に襲い掛かる。


 水龍の攻撃を躱すも、ピンポイントで《高圧穿孔》が清宮の両手それぞれから放たれる。光葵と綾島は急所を何とか避けるも、高圧穿孔で身体に複数穴が開く……。


「グッ……! 何だ? 予測しての攻撃なんてレベルじゃない。まるで、そこに行くことが分かっているかのような攻撃だ……」光葵は思わず、言葉に出す。今のままじゃ全力を出し切る前にヤラれる……。


「《闇魔法――闇霧》! 《身体強化、極み》……!」光葵は《闇霧》を広範囲に展開する。その上で一気に身体能力を引き上げ、不規則な動きでフェイントを入れ《擬似神槍グングニル》を清宮目掛けて投擲する。神速の槍がぶつかる衝撃音が響く……。


 しかし、虎西が防御に回っており、グングニルを甲冑と腕で受け止められる。


「クソッ! 俺の動きが予見されてるのか?」虎西の甲冑はよく見ると多少傷が入っている。ただ、即座に《金帝魔法》で修復されているのが分かる。数秒で元通りだ……。


 綾島はその間に清宮に攻撃するべく、光速で水龍二頭を破壊し《破邪の矢》を放つ。しかし、清宮の《強化水圧移動ウォータージェット》で躱され、《強化水刃ウォーターエッジ》でカウンター攻撃を入れられる。右肩から左上腹部にかけて鋭い水の刃で切り裂かれる。


「ぐっ……まだ……」綾島は戦闘を継続しようとする。


「綾島さん! 《風魔法――高速移動》!」光葵は超速で綾島を抱きかかえ洋館の窓硝子を突き破る。振り向きざまに《灰燼砲》を高出力で放つ。「一旦退避する。このままだと傷を負う一方だ……!」


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