四十八話 侍達との死闘①
その頃、光葵、朱音、カイザー、比賀の四人は仲間探しと索敵をしていた。
カイザーが何かに気づく。「先程から一瞬だけ敵の存在を感知できる。気のせいか?」
「もしかしたら、前に戦ったワープを使える仮面の男かも?」朱音が疑問混じりに話す。
「誘っているのか……? どうも、廃業したゲームセンターの方に存在を感じる」カイザーが少し険しい顔で光葵達の方を向く。
「カイザーの能力を知っている訳じゃないと思う。頂川は仲間の情報を売ったりしないだろう。ただ、敵は俺と朱音の『容姿』を知っている。目視で気づいて誘っている可能性はあるな……。敵の方が人数が多かったら撤退、同じ数以下なら戦うってのはどうだろう?」光葵は三人に考えを伝える。
「よく聞いたぞ日下部! 我はそれで良い。罠があれば我が魔眼で見破ろう」カイザーは嬉しげに話す。
「私もそれでいいよ!」朱音が明るく答える。
「私も構わない。あんた達の役にも立ちたいしな」比賀は力強く答える――。
二階建ての廃業したゲームセンターに着いた。
守護センサーが敵は三人だと知らせる。
「カイザー敵の位置は分かるか?」光葵が尋ねる。
「一階の入口から三十メートル程離れた所で固まっているようだ。前に聞いていた少女と、侍、仮面男だな……。罠は見当たらない」カイザーの言葉の端々に緊張を感じる。
「魔法を撃ち込みながら入る必要もないか。正面から行こう」光葵は少し低い声で伝える。
(影慈、行こう……)――〝人格共存〟左右の瞳は琥珀色、陰のある黒へと変わる――。
「また会ったな、日下部……。この前の借り返させてもらうぞ」志之崎の瞳に殺意が宿る。
「もうシノさん。チーム戦ですよ。あの人達は強い。全員で戦いますよ」幸一郎が釘を刺す。
「美鈴達が協力したら最強だからね!」美鈴の飾り気のない言葉が室内に響く。
「倒すぞ……!」光葵の声掛けに仲間全員が応える。
敵は《空間転移》を使い、複数箇所にワープホールを出現させる。そこから志之崎の《風魔刀》、幸一郎の《水製道具――カッティングトランプ》が高速で複数の斬撃を浴びせてくる。
「ぐっ……速い……!」
ワープホールはランダムに出現するため躱すのが非常に難しい……。
「私が防ぐ! 《乱生魔法――乱れ渦》」
比賀の魔法が空気の乱れを渦状に作り出し、風魔刀の斬撃、カッティングトランプの〝形状を乱し〟霧散させる。
「おおっ! すごいね!」幸一郎が興味深げに声を上げる。
「遠距離からあのワープホールを使われると面倒だ。近接戦に持ち込む方がいいだろう。私が乱生魔法で敵の攻撃をいなす。みんなも続いてくれ!」比賀が指示を出す。
仲間全員が同意し、各々の魔法も使いながら距離を詰めていき、五メートル圏内に突入する。
「侍と少女は近接戦が強い。ワープに気を付けつつ戦おう!」光葵が仲間に注意を促す。
近接戦に持ち込むも、敵三人の連携は非常に強力だった。
また、ゲームセンターの構造上、物品が多く志之崎の《乱射斬》による風の斬撃の〝物品との乱反射〟が光葵達を苦しめた。
「クソッ! 攻め切れない。近距離まで近づけば侍の刀での攻撃、少女の『見えない攻撃』がくる。仮面男のワープも厄介だ……」光葵は考える、どう攻めればいい……。
「日下部! 我が魔眼はワープホールの出現位置が分かる。おそらく位置座標を決めた上でそこにワープを発生させる魔法だ。少女の魔法は我が魔眼でも見抜けない。仮面男を分断できれば、我ならある程度有利に戦えるはずだ」カイザーから大きめの声で提案がある。
「了解。俺と朱音で侍と少女の相手をする。仮面男はカイザーと比賀さんで相手できるか?」
全員が同意の返事をする。
「比賀さん、打ち合わせがしたい。少しだけ来てくれ」光葵は敵と味方の間に《闇霧》を漂わせて視界を遮る。
「朱音、カイザー少しだけ防御頼む!」
二人の「了解」という声を聞き、一瞬の隙に比賀に仮面男の分断作戦を伝える。
――「すまん。待たせた! 俺と朱音の魔法で隙を作る。練習した技でいこう! 《複合魔法》《闇魔法×炎帝魔法――黒焔の帳……!」
黒焔の幕が幸一郎目掛けて放たれる。
「そんな直線的な攻撃当たらないよ」幸一郎は片目を隠しワープしようとする。刹那、身体が〝空間ごと引っ張られた〟ようだ。
「そんなこともできるんですか……」幸一郎は比賀の方を見ている。
比賀はまるで柔道で背負い投げをするように乱生魔法を使っている。幸一郎は周辺の空間ごと〝投げ飛ばされ〟数十メートル離れたクレーンゲームに激突する……。
「仮面男は『目の届く範囲』にワープできる。だったら、俺の闇魔法で目が届かなくすればいい……」光葵は再び、闇霧を広範囲に漂わせる。結果、志之崎、美鈴と幸一郎を分断することができた。
「お前やはり頭が切れるな……。油断ならん男だ。美鈴、注意しながら戦うぞ」
「了解、シノさん! コウさんも心配だし、早くやっつけよう!」美鈴の純朴な瞳に闘志が宿る。
「朱音、少女の『見えない攻撃』は俺が闇魔法を漂わせることで大体の位置が把握できる。俺の指示も聞きつつ戦ってくれ」光葵は隣にいる朱音に声を掛ける。
「オーケー! 光葵に合わせる形で戦うようにするね!」朱音が明るく応える――。




