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クラフトアルケミストの異世界素材録  作者: ねこちぁん


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ep.58 風の記憶と、灯のかけら

風が変わった。

ホムラノワ号の帆が、ふっと揺れる。


「……潮目が、動いた」


イサリが、海の音に耳を澄ます。


「何か来る?」


「いや、“何かがいた”って感じ」



入り江を出てしばらく、

海の上に、ぽつんと浮かぶ小島が見えてきた。


「地図には、ない島だね」


瑛里華が素材録をめくる。

けれど、そこには何も記されていなかった。


「寄ってみよう」


孝平の声に、誰も反対しなかった。



島には、誰もいなかった。

けれど、風が残っていた。


「……これ、火の輪の風だ」


咲姫が、草の間に落ちていた布を拾い上げる。

それは、火の輪の灯守が使っていた、古い帆布だった。


「誰かが、ここにいたんだ」


「そして、火の輪を目指してた」


果林が、帆布の端に縫い込まれた◎を指差す。


「ぽぷらんのしっぽ……じゃない。

 でも、同じように描かれてる」


「火の輪の火は、ここまで届いてたんだね」



島の中央に、小さな石碑があった。

そこには、風の記憶が刻まれていた。


『この島に、火を灯した。

 いつか、誰かが見つけてくれるように。』


孝平が、そっと碑に手を当てる。


「……見つけたよ」


ぽぷらんが、しっぽで◎を描いた。

風がふわりと吹いて、碑の上に火が灯った。


それは、確かに“火の輪”の火だった。

今回は、“風の記憶”との出会い。

誰かが残した火の痕跡を、ホムラノワ号が見つける回。


火の輪の火は、ただ燃えているだけじゃない。

誰かの願いや、祈りや、旅の記憶を、

風に乗せて、遠くまで運んでいる。


そして、受け取った誰かがまた、

その火を灯しなおす。


そうやって、火の輪は広がっていく。


次回は、風の記憶をたどって、

ホムラノワ号が“もうひとつの火の輪”に出会うかもしれません。


それでは、また火のそばで。

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