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クラフトアルケミストの異世界素材録  作者: ねこちぁん


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ep.57 ホムラノワ号、還る

朝の海は、まだ眠っていた。

けれど、ホムラノワ号の舳先には、すでに風が集まりはじめていた。


「……いってきます」


孝平が舵に手をかける。

咲姫が浜辺から手を振り、ぽぷらんが◎を描いた。



ローミスリルの骨材が、朝日を受けて淡く光る。

帆がふくらみ、船が静かに滑り出す。


「風、悪くないね」


「この海、どこか懐かしい」


「それはきっと、“帰る”旅だからだよ」


イサリの声が、船底の音にまぎれて届く。



昼過ぎ、小さな入り江に着いた。

古い灯台が、崖の上にぽつんと立っていた。


「ここ、覚えてる」


「この場所から、火の輪を目指して歩いたんだ」


「じゃあ今度は、ここから“戻る”んだね」


孝平がうなずく。


「ホムラノワ号が、道しるべになる」



夜、灯台の上で火を囲む。

ぽぷらんの◎に、火がふわりと揺れた。


「この火、火の輪と同じ匂いがする」


「どこにいても、火の輪はつながってるんだよ」


「だから、帰る場所は、ちゃんとある」


孝平が、ホムラノワ号を見やった。


「……もう、ある」



夜明け前、再び帆を上げる。

灯台の火が、ゆっくり遠ざかる。


――ホムラノワ号、還る。


それは、旅の始まりではなく、

“帰るための旅”の、最初の一歩だった。

「出発」じゃなくて「還る」っていう感覚。

それが今回の芯だった。


火の輪は、ただの拠点じゃない。

誰かにとっての“帰る場所”であり、

誰かにとっての“目指す場所”でもある。


ホムラノワ号は、その間を静かに行き来する舟。

灯台の火も、ぽぷらんの◎も、

全部が“つながり”のしるしになっていく。


次は、風の記憶と出会う回。

火の輪の火が、どこまで届くか――

その先を、また一緒に。

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