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クラフトアルケミストの異世界素材録  作者: ねこちぁん


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ep.56 火の輪の船名会議

火の輪の海辺に、船の骨組みが立ち上がっていた。


イサリが打ったローミスリルの骨材に、舟の人々が板を張り、

 ぽぷらんがしっぽで◎を描きながら、火の輪の火をくべていく。


「……だいぶ、かたちになってきたね」


孝平が、組み上がった船体を見上げながらつぶやいた。


「そろそろ、名前を決めないと」



その夜、火の輪の火を囲んで、仲間たちが集まった。


「船の名前、どうするの?」


咲姫が、ぱちぱちと燃える火を見つめながら言った。


「火の輪丸……とか?」


「いや、それはちょっと安直すぎる」


果林が笑いながら突っ込む。


「“火の輪”って名前は入れたいよね」


瑛里華が、素材録をめくりながら言った。


「でも、“火の輪”って言葉、どこか静かで、あったかい。

 船の名前にするなら、もう少し……動きがほしいかも」


ぽぷらんが、しっぽで◎を描いた。


「じゃあ、“ホムラノワ号”はどう?」


火のホムラノワ――

 火をくべる輪。火を囲む場所。

 そして、火を運ぶ船。


「……いいな、それ」


孝平が、火を見つめながらうなずいた。


「この船が、また誰かを火の輪に連れてくる。

 あるいは、誰かを送り出す。……そんな船になるといい」



翌朝、船の舳先に、銀青の板が取り付けられた。


そこには、ぽぷらんのしっぽで描かれた“◎”と、

 火の輪の火で刻まれた文字が並んでいた。


――ホムラノワ号。


火の輪の海に、静かに、けれど確かに、

 ひとつの名が浮かび上がった。

今回は、火の輪の船に名前をつける回でした。


「名をくべる」という行為は、火の輪にとってとても大切なこと。

それは、ただのラベルではなく、“ここにいた”という証であり、

“これからどこへ向かうか”を静かに示す灯でもあります。


ホムラノワ号――

火を囲む輪、火を運ぶ船、そしてまた火の輪へと戻ってくる舟。

この名前には、火の輪の仲間たちの願いと、

物語のこれからがそっと込められています。


船に名前がついたことで、火の輪の物語はまた一歩、

“外の世界”へと広がる準備が整いました。


次回は、ホムラノワ号の初航海。

けれどそれは、冒険の始まりではなく、

“火の輪に戻るための旅”になるかもしれません。


それでは、また火のそばで。

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