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クラフトアルケミストの異世界素材録  作者: ねこちぁん


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ep.53 素材録:ローミスリル

火の輪の裏手にある岩場。

 そこに、ぽっかりと口を開けた小さな洞窟がある。


孝平とぽぷらんは、そこへ足を踏み入れていた。


「このあたり、前にミオたちと来た場所だよね」


ぽぷらんが、しっぽで壁をなぞる。

 岩肌には、かすかに青や赤の筋が走っていた。


「うん。あのとき見つけた鉱脈、もう一度ちゃんと調べておきたくて」


孝平は、素材録を開きながら、足元に注意して進んだ。



洞窟の奥へ進むにつれ、空気が変わっていく。

 ひんやりとした風の中に、かすかな熱が混じっていた。


壁のひび割れから、赤銅色の光がにじみ出している。


「……あった」


孝平が、そっと手を伸ばす。

 指先に、じんわりとした温かさが伝わってきた。


「これが……ローミスリル」


赤銅色に鈍く輝く鉱石。

 手に取ると、まるで心臓のように、ゆっくりと熱を返してくる。


「魔力を蓄えて、少しずつ返す性質があるんだよね」


ぽぷらんが、しっぽで◎を描いた。


「火の輪の火と、相性よさそう」


孝平は、慎重に鉱石を掘り出し、素材録に記録していく。


ローミスリル:赤銅色の魔法鉱石。

 熱と魔力を蓄え、時間をかけて放出する。

 火の輪の火に近づけると、共鳴して脈動する。



さらに奥へ進むと、空間が広がっていた。


天井からは、かすかな水音が響いている。

 岩の隙間から、ぽたぽたと水が滴り落ちていた。


「……水の気配がある」


ぽぷらんが、耳をぴくりと動かす。


「この先、何かあるかも」


孝平は、足元の岩を踏みしめながら、そっとつぶやいた。


「火の輪の下に、まだ何かが眠ってる気がする」


素材録のページが、風にめくられた。

 次の記録を待つように、白紙のまま、静かに揺れていた。

今回は、火の輪の地下に眠る“ローミスリル”をめぐる素材録の回でした。


赤銅色の鉱石が、じんわりと熱を返してくる感触――

それは、火の輪の火とどこか似ていて、

「すぐに燃え上がらなくても、少しずつ温めていく」そんな在り方を感じさせてくれます。


孝平とぽぷらんの探索は、派手な冒険ではありませんが、

一歩ずつ素材と向き合い、記録し、火の輪の暮らしに繋げていく――

それこそが、クラフトアルケミストとしての彼の旅なのだと思います。


そして、洞窟の奥に響いた“水の気配”。

火の輪の下には、まだ何かが眠っているようです。


次回は、イサリの鍛冶場が本格的に動き出します。

火の輪の火と、素材の力が交わる瞬間を、どうぞお楽しみに。


それでは、また火のそばで。

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