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クラフトアルケミストの異世界素材録  作者: ねこちぁん


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ep.51 火の輪の再調整

火の輪の朝は、静かに始まった。


昨日、銀青の札に名前を刻んだ仲間たちは、それぞれの場所で火を囲み、

 火の輪の“これから”を、胸の中で思い描いていた。


ぽぷらんが、しっぽで灰をならしながら言った。


「火の輪が、ひとつの“かたち”になったから……次は、火の流れを決めるときだね」


孝平はうなずいた。

 火の輪は、ただの避難所ではなくなった。

 火を囲み、暮らしを整え、名を刻んだ今――

 それぞれが、次の一歩を選ぶ時が来ていた。



「風の谷に、行こうと思います」


咲姫が、静かにそう言った。


隣に立つ果林と瑛里華も、うなずく。


「風の国のこと、ずっと気になってたのです」

「素材の流通も、そろそろ整えておきたい」

「風の谷の錬金術師たちとも、話をしてみたい」


咲姫たちは、火の輪の火を携えて、風の谷へ向かうことを決めた。


「アリシアも、別の島へ行くんだろ?」


孝平が尋ねると、アリシアは肩をすくめた。


「ええ。素材の出どころを探っておきたいし、交易の道も見ておきたいからね」


リリアーナは、火の輪に残ると言った。


「記録は、ここで続けるわ。……この火の輪の、今を」


ルミナもまた、静かにうなずいた。


「私は、火のそばにいます。……それが、私の役目ですから」



ぽぷらんが、しっぽで灰をなぞり、◎を描いた。


「火の輪の“真ん中”は、ここにある。……だから、また戻ってこられるよ」


孝平は、火を見つめながら、仲間たちの顔を順に見た。


咲姫、果林、瑛里華、アリシア――

 それぞれの道を選び、火の輪を離れる者たち。


リリアーナ、ルミナ、ぽぷらん、サヤ、餡子熊王、イサリ――

 火の輪に残り、暮らしを整えていく者たち。


そして、舟で流れ着いた人々。

 彼らもまた、少しずつ火の輪の一部になりつつあった。



火の輪の火が、ぱちりと音を立てた。


それは、別れの音ではなく、

 それぞれの選択を、静かに受け入れる音だった。

火の輪の再調整回、読んでくださってありがとうございます。


今回は、仲間たちがそれぞれの道を選ぶ場面を描きました。

火を囲んで過ごした時間が、ただの“避難”ではなく、“暮らし”になっていたこと。

そしてその暮らしの中から、次の一歩を選ぶ静かな決意が生まれていくこと。


火の輪は、まだ小さな場所です。

でも、誰かが旅立っても、誰かが残っても、

火のそばに“◎”があれば、また戻ってこられる。

そんな信頼と余白を、物語の中に残しておきたいと思いました。


次回は、火の輪に残ったイサリが、火を見つめる回です。

鍛冶屋としての彼が、火の輪の火に何を見出すのか――

よければ、また火のそばで見守っていただけたら嬉しいです。


それでは、また火のそばで。

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