ep.46 火の輪の夜
火が、灯った。
流木と蛇の骨で組んだ即席の焚き火台に、ぽぷらんが火をつける。
ぱちぱちと音を立てて、炎が立ち上がる。
その周りに、火の輪の子どもたちが集まっていた。
咲姫が、ミスリルのナイフ“輪刃”を手に、魚を捌いていく。
「……このナイフ、すごく切れるのです」
孝平が、蛇肉を串に刺しながらうなずく。
「鍛冶場で作った道具が、こうやって使われるのって、いいな」
ルカとナナが、焼けた魚を取り合っている。
ミオは、蛇肉をじっと見つめてから、ひとくち。
「……うまい。ちょっとスパイスほしいけど」
リリアーナが、海藻を刻んで塩と混ぜる。
「これ、ふりかけてみて」
夜風が、火の匂いを運んでいく。
空には、まだ隕石の名残のような光が、ちらちらと残っていた。
「……また、こういう夜が来るといいね」
ミオの声に、誰かが「うん」と答えた。
火の輪の夜が、静かに更けていく。
火を囲む夜、やっぱり好きです。
この回は、派手な展開のあとにちょっと落ち着く場所として書きました。
“輪刃”が初めて料理に使われるのも、ちょっとした節目。
道具って、作ったあとにどう使われるかで、また意味が変わってくるんですよね。
次回は、島に名前がつきます。
火の輪に、またひとつ“かたち”が増えます。
それでは、また火のそばで。




