ep.43 海鳴りの兆し
海が、ざわついていた。
ぽぷらんが、しっぽをぴくりと動かす。
「なんか、くる」
その言葉に、咲姫と孝平が顔を見合わせた。
風が止まり、波が引く。海面が、不自然に静かになる。
次の瞬間、海が盛り上がった。
巨大なウミヘビが、海面を割って姿を現す。
鱗は黒曜石のように硬く、目は赤く光っていた。
「……でかっ」
孝平が思わず声を漏らす。
咲姫がすぐに弓を構え、矢を放つ。
だが、矢は鱗に弾かれ、海に落ちた。
「効かない……!」
火の輪の子どもたちが、浜辺に集まってくる。
ぽぷらんがしっぽで“×”を描いた。
そのとき、リリアーナが静かに前に出る。
「……星を、呼ぶ」
彼女の手のひらに、淡い光が集まり始める。
詠唱が、波の音に溶けていく。
「星のかけらよ。
この地に落ち、
眠れるものを、
目覚めさせよ――」
空が、裂けた。
炎をまとった光の粒が、夜のような昼に落ちてくる。
咲姫が目を見開いた。
「ちょ、ちょっと待ってなのです、リリアーナ! それって――」
だが、もう止まらない。
星が、落ちる。
火の輪、初の“海との遭遇”でした。
咲姫と孝平の「効かない」っていうリアクション、書いてて楽しかったです。
ぽぷらんの“×”も、地味に好きな描写。
リリアーナの魔法、ちょっとやりすぎ感あるけど、
このくらいのスケール感があってもいいかなと。
次回、島ができます。たぶん。
それでは、また火のそばで。




