ep.38 地の声を聞く
夜が明け、火の輪に静かな朝が訪れる。
ぽぷらんが、しっぽをふるふると揺らしながら、森の奥へと歩き出した。
誰に呼ばれるでもなく、何かに導かれるように。
それに気づいた咲姫が、そっと後を追う。
やがて、孝平、リリアーナ、瑛里華、子どもたちも続いた。
森の奥、苔むした岩の裂け目。
そこに、ぽぷらんがちょこんと座っていた。
岩の隙間からは、ほんのりと温かい風が吹き出している。
「……あったかい」
ミオがつぶやく。
「地面の下、まだ火が生きてるのかも」
咲姫が、岩肌に手を当てた。
しっとりと湿っていて、でも確かに、ぬくもりがあった。
孝平が、岩の隙間を覗き込む。
「……洞窟だ。奥に続いてる」
「入ってみよう」
瑛里華が、火の輪の灯を手に取った。
中は、思ったより広く、空気も澄んでいた。
壁には、古い道具の痕跡。誰かがここで暮らしていた気配。
そして、奥へ進むにつれて、空気が変わる。
湿り気とともに、ほんのりと金属の匂いが混じってきた。
「ここ……鉱山だったのかも」
リリアーナが、足元の石を拾い上げる。
それは、かすかに光を帯びた鉱石だった。
「これ……ただの石じゃない」
咲姫が、目を細める。
「地の奥が、何かを語ろうとしてる」
ぽぷらんが、しっぽで地面をトントンと叩いた。
まるで、「ここだよ」と言っているように。
火の輪の人々は、静かにうなずいた。
言葉を旅立たせた夜の次に、地の声が届いた朝。
それは、火の輪にとって、もうひとつの“はじまり”だった。
火の輪の人々が、初めて“地の奥”に足を踏み入れた回でした。
ぽぷらんの導きは、いつも不思議です。 言葉を持たないけれど、彼(彼女?)のしっぽの動きには、どこか“確信”のようなものがあります。
火の輪が言葉を手に入れた夜の次に、今度は地の声が届く。 それは偶然ではなく、きっと“世界が応えてくれた”のだと思っています。
次回は、いよいよ鉱石との出会い。 ただの資源ではなく、火の輪の人々が“どう向き合うか”が試されるお話になる予定です。
それでは、また火のそばで。




