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クラフトアルケミストの異世界素材録  作者: ねこちぁん


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ep.37 ことばの火種

 夜、火の輪に紙が広げられた。


 ぽぷらんが、しっぽで押さえている。

 風が吹いても飛ばないように。


「……誰が書く?」


 咲姫がつぶやく。

 火のそばには、孝平、リリアーナ、瑛里華、そして子どもたち。


 誰もが、少しだけ迷っていた。


「“ここにいます”って、書けばいいんじゃない?」

 ミオが言った。


「それだけじゃ、伝わらないかも」

 ルカが首をかしげる。


「でも、伝えたいことって、なんだろう」

 リリアーナが、紙を見つめる。


 しばらくの沈黙。

 火の音だけが、ぱちぱちと響いていた。



 最初に動いたのは、孝平だった。


 炭で、紙の端に一文字ずつ書いていく。


「火の輪は、ここにあります。

 名前を持ち、火を囲み、暮らしています。

 あなたが来るなら、迎える準備はあります」


 書き終えると、ぽぷらんがしっぽで丸を描いた。

 火の輪の形。


「……これで、いいかな」


 孝平が顔を上げると、みんながうなずいた。


 ナナが、ぽつりと言った。


「この手紙、風に乗るかな」


「乗るよ」

 瑛里華が笑った。

「火の輪の名前が届いたんだもん。言葉だって、きっと届く」



 翌朝、手紙は火のそばに置かれていた。


 ぽぷらんが、しっぽで火を囲む。

 風が吹く。


 紙が、ふわりと舞い上がった。


 誰かに届くかは、わからない。

 でも、火の輪の言葉は、たしかに旅立った。

火の輪から、はじめての返事が書かれました。


それは、長い手紙ではありません。

でも、“ここにいます”という言葉には、

火を囲んで暮らす人たちの、静かな決意が込められています。


火の輪は、まだ小さな灯りです。

でも、言葉が風に乗れば、誰かの心に火種をともせるかもしれません。


次回は、火の輪に届く“返事”の話になるかもしれません。

あるいは、手紙を見た誰かが、また歩き出す話かもしれません。


それでは、また火のそばで。

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