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クラフトアルケミストの異世界素材録  作者: ねこちぁん


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ep.36 返事を書く夜

 朝、看板の下に封筒が落ちていた。


 風に揺れて、草に引っかかっていた。

 誰も気づかなかったのが不思議なくらい、白くて目立つ紙だった。


 孝平が拾い上げる。

 宛名はない。差出人も書かれていない。


 でも、封を切る手は、なぜか迷わなかった。



 手紙は、丁寧な字で書かれていた。


「火の輪の名前を聞きました。

 あなたたちが、火を囲んで暮らしていると。

 そこに行けば、誰かに会えるかもしれないと」


 それだけだった。

 名前も、場所も、過去も書かれていない。


 でも、火の輪の仲間たちは、黙って手紙を囲んだ。


「……誰だろうね」

 咲姫がつぶやく。


「知ってる人かもしれないし、知らない人かもしれない」

 リリアーナが、地図の端を見つめる。


「でも、火の輪の名前が届いたってことだよね」

 ぽぷらんが、しっぽで火をなぞった。


 火が、ぱちりと音を立てた。



 夜、火を囲んで、手紙をもう一度読み返す。


 誰かがぽつりとつぶやいた。


「……返事、出す?」


 孝平は、火を見つめたまま、うなずいた。


「火の輪から、はじめての手紙だな」


 ぽぷらんが、しっぽで砂に文字を書く。

 “ここにいます”と、ゆっくりと。


 火の光が、その文字をやさしく照らしていた。

火の輪に、手紙が届きました。


差出人の名前も、宛先もない。

でも、そこには確かに“つながりたい”という気持ちがありました。


火の輪は、まだ小さな暮らしです。

でも、名前があるから、返事が書ける。

火を囲んでいるから、誰かを迎えられる。


次回は、返事を書く夜のことを、もう少しだけ描く予定です。

火の輪から出ていく言葉が、どんな風に旅立つのか。


それでは、また火のそばで。

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