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セツなきミライは砂時計にながされて  作者: すずと
秋葉美月編〜女心と秋の空。幼馴染の心は夢と妄想に移ろう〜

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第28話 ナツからアキに移ろう。ナツの思い出は夢なのか……

 とっくに夏が過ぎたっていうのに、行ってもいない花火大会やら海に行った夢なんか見ちまって、俺は欲求不満なのかもしれないと呆れてしまう。


 そりゃ彼女は欲しいよ。その欲求は常に持ち合わせている。

 だからって夢にまで反映させないで欲しいってもんだ。

 夢を見ている時は楽しいだろうけど夢から覚めた時、「あーあ、夢かよー」という落胆なんて言葉じゃ足りないくらいに気分が落ちる。

 うーん、でもだな、今回の夢は非常に良かったのだよ。


 今回の夢は鮮明に覚えており、どうにも顔の綻びが取れないでいやがる。


 ニヤニヤとしながら渡り廊下にある自動販売機で、午後のコーラでも楽しもうとコインを入れた時だった。


「てい」

「あ!」


 掛け声と共にサイダーのボタンが押されてしまう。


 ボタンを押した犯人は夏枝七海だ。


 もうすっかり秋と呼べる気候になった世間に合わせて、彼女も衣替えをしており、冬服の我が校の制服を身に纏っている。


 ブレザー姿も爽やか美人を思わせる夏枝。心なし、胸元の校章である鷹のマークも美人に着てもらって誇らしげに見える。


「ごちー」


 言いながら缶のプルタブを容赦なく開けやがる。


 プシュっ。


 秋なのに夏を彷彿とさせる、夏の忘れものみたいな爽やかな音が聞こえてくる。


 これまた、ごくごくと遠慮のカケラもない良い飲みっぷりで、サイダーを飲みやがっておいでです。


「ここまでの犯行、わずか七秒。お主、初犯じゃないな?」

「完全犯罪の夏枝七海、他人の自動販売機を押す技術は健在である」

「あ、うん。最低な技術は健在させないで滅びてください」

「確かに最低かも。でも、最低具合で言えば、さっきの《《四ツ木》》の顔こそ最低だったけど?」


 反射的に頬をさわってみせる。どうやら、先程の俺の様子をちょっぴり見られたらしい。


「なに考えてたの? 難しそうな顔してるかと思ったら、急にニターっとして。だいぶ気持ち悪かったよ?」


 訂正。一部始終見られたらしい。恥ずかしい。


「いやー。お恥ずかしい限りだね」

「なに考えてたの? ほらほら、元カノに教えてみ」

「元カノったって、そりゃ先輩から言い逃れするためだけの一夏の思い出だろ」

「一夏の思い出ね……。《《デートの一つもしてない》》のに思い出になる?」

「思い出というには美化しすぎたな。ほんと、都合の良いように使われただけだったわ」

「やっぱりデートくらいは行ってた方が良かった?」


 偽物の恋人の設定を作り出したからにはデートでもしないとなんて考えていたんだけど、デートをする前に先輩の件が解決した。


 それにより、夏休みに入る前に全てを終えてデート機会ってのはなかったな。


 花火大会で告白された。その後に海に行った。そんな夢を見るってのは、心のどこかで《《夏枝と本物の恋人になりたかった願望があったのかもしれない》》な。それが夢に反映された。


 おっと。夢の中の夏枝を思い返してしまい、顔のニヤけが出そうになっちまった。


 ありゃ夢の話。俺は夏枝との恋は偽物。全部、俺の妄想。夢の中での出来事だ。


「夏枝と過ごす一夏の思い出も魅力的だとは思うけどな」

「なんということでしょう。もう夏はとっくに過ぎ去ってしまったね」

「残念」

「その節はお世話になりました」


 丁寧な言葉と同時に繰り出されるピースサイン。


「だけどさ、先輩問題もスッキリ解決してみんなで夏を過ごせたから良かったよな」


 みんなで行った、海や夏祭り。カラオケ、ボーリング、ダーツ……。ん? 後半は夏関係ないような……。ま、面白ければなんでもヨシ! だね。


「言えてる。最高の夏だったよね」


 みんなで過ごせた夏を振り返ってふたりで笑い合う。


 そこから、夏枝と夏休みの宿題の絵日記を発表するみたく、無邪気に思い出を語り合う。


「夏の思い出を語るの楽しいけど、サイダーの件は忘れてないからな」

「てへ。バレてる」


 あざと可愛いこの元カノ様へ、サイダーくらい奢ってやってもいっか。

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― 新着の感想 ―
[一言] 消えたのは全部ではないんですね。 致命的なイベントだけ起きないようにうまく修正したのかな。 秋はどんなことになるのやら。
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