あれから3年
魔神グレゴとの戦いを終え、ギンとエイムは再び旅立つ事を決め、他の仲間はそれぞれの帰るべき場所へと戻り、その日から約3年が経過した。
ある日プレツにあるスップに居を構える2人、いや3人暮らしの家族が朝に会話をしていた。
「ブライアン、今日の漁は近海だから大体2、3日で帰ってくるのよね?」
「そうだな、まあ調子が悪けりゃあ無理すんなよ」
「ありがとう、でも大丈夫よ一時に比べれば少しは調子良くなったし、この子の為にも少しは動いた方がいいらしいから」
ブライアンはブロッス帝国と魔族との戦いの功績によりプレツ水軍への入隊が許された。平時は漁業にも従事しており漁師志望のブライアンにとっても願ったり叶ったりだ。
戦後、ルルーとは恋仲となり、結婚を望んだが身分違いを理由にルルーの両親より反対をされる。しかしブライアンの元上官ニフラやルルーの上位者であるムルカ、ミッツ教団の司祭の説得もあり、ブライアンが入り婿をするという条件で認めたのである。
結婚後はスップの教会の近くに居を構えて暮らしている。ルルーは現在第一子を妊娠中であり、出産をひかえている。
「じゃあ気をつけてね」
「へっ、今更俺が海で死ぬわけないだろう」
「もう、そういう油断が命とりなのよ」
「へえへえ、分かりましたよ」
この2か月後ルルーは女の子を出産し、子が成長するとルルーは再び聖職者としてミッツ教団の活動に従事し聖母としてその名を歴史に残したのだ。
ミッツ教団の教会で教徒が集まり、司祭が教徒達に呼びかけていた。
「では皆様、本日もよろしくお願いします」
「はい」
なんと神官戦士であったムルカが司祭となっていたのだ。前司祭が高齢を理由に引退すると司祭の座を引き継ぎ、ミッツ教徒を導いていたのだ。
「すっかり司祭らしくなりましたねムルカ」
「司祭様!」
「私はもう司祭ではありませんよ」
「そうでしたね、しかしまさか私を推挙してくれるとは思っていませんでした」
「ムルカ、最初から聖人などという存在はいないと私は思っております。1度は憎しみに囚われましたが、それを乗り越え、若者を見守りながら戦ってきたあなたなら、きっと司祭の任を全うできると私は思っておりました」
「いえ、私にまだ生きる資格がある事を教えてくれたのは彼らです。彼らや彼らの子が安心して過ごせる未来を作るのが私の役割であると思っています」
後にムルカは特使としての経験も活かし、他国との会談には積極的に参加し、救いを求める者がいれば他国にも教徒を派遣し、少しづつ戦争で傷ついた人々を癒していったのだ。
ここはスール、ジエイはスール国王にある報告をしていた。
「どうやらリース公国が他国への侵攻を目論んでいるようにございます」
「それは誠だな」
「こちらも軍備を整えつつ、秘密裏にリースに使者を送りましょう、ブロッスやプレツへの協力要請が必要でしょう私が行って参ります」
「うむ、頼んだぞ」
「はっ!」
ジエイは得意の諜報任務を続けており、今回の戦いで得た信のある者に直接協力要請を行い、戦いを小規模に抑える動きに従事していた。ジエイの名こそ歴史には残らなかったが、平和維持への貢献は高く、子孫代々ジエイの文を家宝にしている家もあるとか。
グラッスではヨナが帰還後に弟であるフランツの後見人となり、慣れない領地運営をしていた。フランツ成人後は近衛兵となる予定であったがある時、グラッス国王マルスより求婚され妃候補となったのだ。そして現在ヨナには新たな試練が待ち受けていた。
「……あああ、ああ」
ドレスのような衣装に身を包み、ヒールの靴を履いていたヨナは突如転倒し、侍女であるニーに注意を受ける。
「ヨナ様、せっかく国王陛下におみそめされましたのに、これでは妃候補から脱落してしまいますよ」
「ううう……だってさ……」
「言い訳は聞きません、ヨナ様がお妃になりたいのならニーは少しでもふさわしいように力を貸す義務があります」
「ううう……頑張る……」
その後ヨナは正式に妃となり、トッポックス領も無事フランツに引き継がれた。元々傭兵仲間に貧困者が多かったこともあり、貧困政策に力を入れ民衆の支持を多く得たヨナは後世、夫であるマルスと共に良き民生家としてたたえられたのだ。
とある船で1人の若者が多くの屈強な男達にげきを飛ばしていた。
「野郎ども、ここに例の海賊共がいやがるからとっちめて宝を取り返そうぜ!」
「おおお!」
ウィルは父の元から独立しヨナが指揮していた傭兵団の何人かと共に新たな海の傭兵団を結成し、海賊から宝を取り返す仕事を生業にしていた。
この過程でウィルの男気や強さ、カリスマに惹かれて傭兵団は少しづつ強大化し、ウィル水軍が結成され海賊たちを恐れさせたのだ。
プレツの港町ニリではミニルが観光ギルドでの仕事を続けていた。そんなある日ミックサック団が公演に訪れ、リーザとミニルが会話をしていた。
「お久しぶりですリーザさん」
「お久しぶりねミニルさん、まさかまたこうして会えるとは思わなかったわ」
「私もです、兄は家を出て、他のみんなもそれぞれの故郷に帰りましたし」
「そう、実はね私ミックサック団を辞めて姉の元で暮らそうと思うの」
「え、そうなんですか?」
「姉も甥が成人したら女王様の座を退くみたいだし、これからの姉と協力して少しでもピトリを良くしていきたいの、そこであなたも私達に協力してくれる?」
「え?私がですか」
「ええ、お芝居は続けたいし、個人公演でもスケジュールとか管理してくれる人がいればありがたいわ」
「リーザさん、私リーザさんにあこがれていた部分もありましたからリーザさんのお手伝いができるなら行きます」
この後ミニルはリーザと共にピトリに赴く、やがてリーザが独自に劇団を作るとミニルは事務方としてリーザを支えていったのだ。
ここはとある城か館の一室、女性が赤子を抱いてあやしているとある人物が入室する。
「エイム、それからジェフ帰ったぞ」
「お帰りなさい、ほらジェフ、お父様が帰ってきましたよ」
ギンはエイムと旅を続けたのち、カイスの要請でルワールのあった地の領主に就任し、エイムを妻として迎える。更にエイムの育ての両親も領内に呼び住んでもらっているのだ。
半年ほど前にエイムは男の子を出産し、ジェフと名付けた。
「プラナさんお元気でしたか?それからプラナさんとカイス陛下のお子様も」
「ああ、本当はエイムも連れて行きたかったんだがな」
「仕方ありません、ジェフに遠出はまだ厳しいですし、ジェフを置いていくのも心もとなかったし」
「侍女に任せても良かったのにエイムは自分で世話をしたがるな」
「私の生みのお母さんは私が育つ前に死んでしまい、育てのお母さんは自分の子供が生めませんでした。だからせめて私は可能な限り自分でお世話をしたいんです」
「エイム……」
ギンはそっとエイムを抱きしめ声をかける。
「これはお前が辛い中でもあきらめずに頑張った結果、それができる幸せを手に入れたんだ」
「いいえ、あなたがずっと私に寄り添ってくれて大切な仲間から支えられたからです」
「それは俺だって同じだ」
「これからもお願いしますね」
ギンはやがてこの地を帝都に次ぐ都市として発展させ、エイムもまた領主の妻としてギンを支える傍ら魔法教室を開き、あらゆる身分の子に魔法を教えたのだ。まだ辛い試練は続くが平和の実現、維持の為に彼らの戦いは違った形で続くのだ。
~FIN~ 魔法戦士ギン




