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恋をしたら死ぬとか、つらたんです  作者: イサギの人
第五章 ウッキウキ☆初めてのデートは死の香り♡
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52限目 ブルーメちゃんと生きています

 優斗からのメールをゆっくりと開くヒナ。

『いつ暇ー?』から始まるそのメール。


 内容はというと……。



『おっす、ヒナ(^^)

 明日からゴールデンウィークだろ、

 良かったら一緒にどこかに遊びにいかない?

 金土は部活があるんだけど、日曜日空いているからさ。

 よろしく(^^)』




「くはっ」

「ご主人様!?」

 

 吐血し、ケータイの画面を血で濡らすヒナ。

 彼女は慌ててティッシュで画面の血液を拭き取りながら。


「ゆ、優斗くん……あいかわらず、まっすぐ……」

「それだけで血を吐くなんて、ご主人様オトコノコに免疫ないんです?」

「いや、まあ、その……」

「ま、ワタシとしたことが、ごめんなさいなのです。

 こんな乙女ゲーを嗜む女子が、充実した青春を送ってやがるハズないですもんね。

 ブルーメちゃんうっかりなのです」

「えっと」


 頬をかくヒナ。ブルーメはひとりで勝手にウンウンうなずく。

 まあいいか、と思いながらもヒナはケータイを顎先に当てて。


「……どうしよう」


 悩みながら文面を考える。

 例えばこういうのはどうか。


『ごめんなさい無理です。

 あなたとどこかに出かけることはできません。

 そんなことをしたら互いに不幸になることは間違いありません。

 やめましょう、優斗くん。

 そしてお互いすべてを忘れて、新しい人生を歩んでゆきましょう』


 あ、だめだこれ。

 なんだか離縁の手紙のようになってしまう。


 頭の中から振り払った。次だ。

 

『むーりぃー(乂>_<)』


 軽すぎる。

 なんだか押し切られるような気がする。


 その間を取って。


『ごめんね、優斗くん。

 その日、わたし用事があってダメなんだー(TT)

 また今度誘ってね!』


 よし、こんなところだろう。

 正直、行きたい気持ちがないわけではない。

 

 というか、絶対楽しいに決まっている。

 楽しすぎるからまずいのだ。

 優斗とのデートなんて絶対ヤバい。

 

 たぶん前日にはドキドキして眠れずに死ぬだろうし。

 当日の朝には服を選ぶときにも死亡するに違いない。

 待ち合わせに向かう最中に死んで、優斗の顔を見ての即死は避けられまい。

 どこにいこうか、なんてふたりで話していたら死ぬに決まっているし、

 デートっぽい会話が出てくるたびに死んでしまう。

 一体何回死ねばいいのかわからない。

 イメージトレーニングの中だけでも死にすぎて頭がおかしくなりそうだ。


 どうせセーブポイントも、自宅に帰るまではないのだろうし。

 そんな死屍累々だと、またゲームが進まなくなっちゃうし。



「……さすがにちょっと、いただけませんよね」

「えっ、お断りしやがるんです?」

「ええ、まあ。色々とご迷惑をかけちゃいますし」

「ま、仕方ないのです。

 ご主人様みたいに女子力の低いコムスメが、

 イケてるBOYとお付き合いをしたいと言いやがるなんて、

 そりゃあ相手方もご迷惑しちゃうってもんなのです。

 身の程を知るのは、謙虚でちょっとだけ見直してあげるのです、ドブご主人様」

「う、うん」

 

 横から口出してくるブルーメに苦笑いし、ヒナは小さくうなずく。

 だからお断りのメールを送ろうと――受け取ったメールを閉じたそのときだ。

 目の前に、ウィンドウが。


 ――ポップした。

 

『カレンダーにマークが付けられました。

 その日は【ぜったいイベント】です。

 ぜったいに参加しなきゃいけません。 

 三島優斗とのデートを成功させるために、

 しっかりと準備を整えて、望みましょう!』


 ……。


 ぱちぱち、とまばたき。

 徐々に徐々にその言葉の意味が飲み込めて。


 ……。

 

 ヒナの顔が青ざめてゆき。

 ついに。


「――うええええええ!?」

 

 こうしてヒナは、とてつもなく女子力の低い叫びをあげたのだった。

 



「ど、どうしよう……」

 

 ヒナはケータイをダウジングロッドのように動かしながら、オロオロする。

 そんなヒナを見て、薄く笑うのはブルーメ。


「ま、おめでとうございますなのです。

 現実世界ではとてもオトコノコに相手にされないご主人様を、

 ここにいるメンズたちはさぞかし慰めてくださりやがることでしょうね」

「どうしようどうしよう……どうしよう……。

 なんとかなるかな、大丈夫かな……。

 うん、まあ、大丈夫、かな。

 これまでも大丈夫だったんだし……。

 わたしならできるよね、きっと、うん、大丈夫」


 自分に言い聞かせるようにつぶやくヒナに。


「そんなに焦ることはないのです。

 そのために、このスーパーAIのブルーメちゃんがついてあげているのです。

 とりあえず、は」

 

 ブルーメは上から下までヒナを眺めて、ため息をつく。


「その、服をなんとかしやがらないといけませんね」

「えっ、あ、そうだよね」

 

 ヒナは何度もうなずいた。

 初日の夜に確認した。自分が持っているお洋服は、制服、ジャージ、それにパジャマだけなのだ。

 

 ヒナは鞄を叩き、アイコンをポップさせる。

 その中にある財布を取り出し、とりあえず中身を確かめた。

 

 初期所持金はぴったり一万円。

 良かった、これならそれなりの服は揃えられそうだ。

 

「……えっと」

 

 ヒナはお財布を握り締めながら、ブルーメを見つめて。


「お洋服って、どこで買えばいいんでしょう」

「ぷっ」

 

 白猫は噴き出して笑う。


「ま、そうなのですね。

 ご主人様のような万年ジャージの干物女は、

 おひとりでお洋服も買えやがりないのですね。

 仕方ないことですけれど、ちょっとさすがにそれはどうかと。

 ブルーメ、ブルーメ思っちゃいます。思っちゃいますなのです」

「えっと」

「このゲームの中では、お洋服を買う方法は二種類ありやがります」

 

 したり顔で指を立てるブルーメ。

 口は悪いけれど、ナビとしての仕事はしてくれるようだ。


「ひとつは通販ショッピング。

 机の上にある通販雑誌を日記みたいに叩くと、

 ウィンドウがポップしてお買い物ができるのです。

 商品は翌日届きやがりまして、

 新しいお洋服を買うためには、どこかから雑誌を入手する必要があるのです」

「あーなるほどー」

 

 小さくぱちぱちと手を叩いて、ブルーメの説明を聞き入れるヒナ。

 ブルーメは平民の娘に教えを解く貴族の令嬢のように。


「二つ目は、放課後や休日の自由行動でお買い物にいくことなのです。

 そうすることで、直接お着替えをしやがったりして、

 四季ごとのHITアイテムをGETすることができるのです。

 激モテコーデをクラスの友達よりもいち早く手に入れたいなら、断然こちらがオススメなのです」

「わー、楽しそうー!」

「ま、もちろん最初に行けるところは近場だけだったりしやがります。

 百地凛子や他にも色んな友達に聞いたりすると、行ける場所が増えていきやがります」

「すごいすごーい!」

 

 無邪気にはしゃぐヒナを見て、ブルーメは小さく首を振る。

 これだから無知無能な学生は、とでも言いたげだ。


「ゲームの世界でもおしゃれできると楽しいもんね!」

「ま、そうなのです。

 せめてゲームの世界でも着飾れるといいのです」

「じゃあ今セーブするから、今からお洋服買いに行こうね」

「ビジネスの時間内なら、いくらでもお付き合いしやがるのです」

 

 すまし顔でうなずくブルーメに、ヒナは「えーへーへー」と微笑む。

 この世界の楽しさを味わい尽くすのは、まだまだ先のようだ。

 

 ヒナはセーブし、ブルーメとともに家を出るのである。

 とりあえずは、三日後に迫った現実から逃避するかのごとく。


 ブルーメより一言:いっつもへらへらしやがってばっかりで、ご主人様ちょっとなんだか情けないのです。

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