●第五話 Aランカー 景山玄
駅に似た渋谷の新ダンジョンの捜索は難航した。
「くそ、ここも空振りか。しっかし、クッソ広ぇな」
四つ目のホームに降り立ち、曲利があきれたように言う。
「周囲に人影はありません。次はどうしますか、曲利さん。やはり順番に右から?」
「いや待て、久々津。こいつぁ、あきらめていったん戻り、捜索隊パーティーを組織的に組んだほうが早いかもしれん。二次災害も心配だしな」
こちらを見て言う曲利だが、二次災害と言っても自分の心配では無く、僕と柑奈の心配だろう。
「一応聞いてみるんだが、マッピング系のスキルを持っているヤツはいるか?」
「いえ、そういうのは晶が得意なんですが」
「今はいないか。じゃあ、戻るぞ」
「わかりました」「それがいいですね」
「ふう、良かった。反対されたら、説得する自信が無かった。オレはそんな柄じゃねえしな。ま、あとは伊月や国交省の連中がなんとかしてくれるだろう」
出口に向かっていると、すでに捜索隊が組織されたらしく、複数のパーティーがこちらに歩いてきた。
「おやおやおや、誰かと思えば、曲利さんじゃあないですか」
黒いローブの魔術師がおどけたように声をかける。
「景山か。お前が捜索隊に加わるとは、意外だな」
「ククク、ええまぁ、捜索なんて私にはぶっちゃけ、どうだっていいんですよ」
「何だと?」
「アーハイハイ、ついでに一般人を見つけたら救出活動は一応やっておきますから、そう目くじらを立てないでくださいよ。ところで、その後ろの人物、面白い目をしてますねぇ。ほうほう、【竜眼】とは、これは珍しい」
今、見抜いたのか? コイツ、【鑑定】持ちか。
「【竜眼】だと? 猫目かと思ったが」
「竜ですよ。しかし、残念ですねぇ。『百花繚乱』のメンバーとは」
「いや、こいつらは…………」
「トップシークレットですか? ま、コレも何かのご縁、私の名刺をお渡ししておきますので、魔術やレアアイテムの売買にご興味があればご連絡ください、久々津くん。では失礼」
ふわりと飛んできた名刺を掴む。Aランククラン『ゴースト』と記されている。
では、今のが景山玄、Aランカーか。
「悪かったな、久々津、お前を勝手に『百花繚乱』のメンバーみたいに言っちまって」
「いえ、曲利さんは何も変なことは言われてませんし。でも、あえて否定しなかったのは、『ゴースト』にあまり良いウワサを聞かないからですか?」
「その通りだ。見ての通り景山もいけ好かない野郎なんだが、伊月がバリバリに警戒しててな。『ゴースト』はAランククランだから他より危険なダンジョンに向かうことも多い連中だ。それを差し引いても、『ゴースト』はメンバーの死亡率が高いんだとさ」
「確かに、感じが悪いタイプでしたね。救出作戦や捜索もまるで興味なさそうでしたし。しかもその態度を隠そうともしなかった」
柑奈が言う。
それに、さっきのメンバーたちは、景山を除いてほとんどがオーラが青やくすんだ緑だった。緊張や恐怖はああいう色を出すのかもしれない。
ギルドに認定されたトップクラスであるAランク。冒険者の最高位に君臨するAランカーは日本に現在7人しかいない。
聖騎士 一条遥
モンク 志藤守
侍 曲利雄馬
剣聖 水月心
魔術師 景山玄
聖女 泉優
人形使い 八雲巧
八雲を除けば、今の景山でこのうちの五人とすべて顔合わせしてしまった。日本の冒険者の人数は百万人ほどだが、頂点はそのうちのたった七人。Aランカーと顔見知りとは結構、凄いんじゃなかろうか。
「曲利さん、聖女の泉さんってどんな人なんですか? 会ったことあるんじゃないですか?」
僕は他のAランカーにも興味が湧いて聞いてみた。
「あー、無駄な期待はするな。字面は確かに完璧なんだが、アレはそんな清らかなもんとは違う。真逆、残念すぎる金の亡者だよ。美人ではあるがな。あのサイトの顔写真は盛りすぎだ。AIまで使ったらしいぞ。十歳くらい若く見える」
「そうですか……」
まぁ、晶が聖女に頼んで治療してもらおうと言い出さなかったのも、そういう理由からだったんだろうな。
「景山と八雲には気をつけておけ。何を考えているか、腹の底が読めない連中だ」
「はい、ご忠告、ありがとうございます」
八雲巧は顔写真が仮面だった。
「なぁに、オレも先輩として、可愛い後輩どもには親切にしてやらんとな」
「雄馬、残りの一般人は見つかったの?」
「うお、伊月、もう来たのか。いや、それが……」
「まだなら、さっさと装備を調えてきて。分かってる? これは時間との勝負だってことを」
「そうだった!」




