●第十四話 竜骨刀
「で、この竜の骨をオレに加工しろと?」
下町の工場のガレージで、つなぎ姿の職人が眉をひそめながら現物を観察している。
「ええ、僕の知る限り、ご高名な職人といえば、あなたしかいないので」
遥に紹介してもらった陶冶だけ。
「くだらないお世辞はよせ。オレは気まぐれで気に入った剣しか打たねえから、悪い評判のほうが高名だろうよ。だが、大きさはデカ物だが、これは本当に竜の骨なのか?」
『見て分からぬとは、この職人、あまりたいした腕ではなさそうだな。それよりドワーフを連れてこい、ドワーフを』
「なっ!?」
「この世界にドワーフなんていません」
『なに? 絶滅したのか? いや、人族との戦争で地下に姿を隠したか……?』
「……お、おいおい、頭ん中に、直接声が、どうなってやがる。ここはダンジョンが近くにねえってのに、なんて魔力だ」
『ふふん、我が脳みそと心臓と魔石さえあれば、お前達など一瞬で消し炭にするだけの魔力が放出できたのだがな』
「骨だけになっても喋れるのかよ。おもしれえ、よし、運ぶのを手伝ってくれ。まずはCBNドリルで硬さと材質をチェックしてみるか」
陶冶がそう言うと、万力の台座の上に固定させ、レバーの付いた固定式のドリルを始動。慎重にゆっくりと下ろす。チュリーン、ジリリリという金属がこすれ合う音がしたかと思うと、派手に黄色い火花が飛ぶ。
「んん? げげ、刃が……いや、それよりも傷一つ、つけられねえってか」
「難しいですか?」
「いや、まだダイヤモンドとアダマンタイトの刃がある」
『ぬ、アダマンタイトを持っておるとは、こ奴……』
黒いドリルの刃先と交換し、再び回転を始動させてレバーを下ろす。
「全員、少し下がってろ。破片が飛ぶと危ないぞ」
さきほど違い、今度は青白い火花が散り、いったん陶冶がレバーを上げて回転を切った。
「行けるな。アダマンタイトならほんのちょっとずつだが削ることはできる」
「「「おおー」」」
『今の高速回転する道具はなんと呼ぶのだ?』
「ドリルだ」
『ドリルか……原型は見たことがあるぞ、ギムレットと呼ばれていたかな。だが、これほど一点に集中して高速回転すれば、我の骨も簡単に穴が開くか。いやよくぞここまで技術を高めた。褒めてやるぞ』
「ま、このドリルを最初に設計したヤツが凄いんだが」
『そうか。実を言うと今、我は魔力で抵抗したのだ。次は逆に力を与えてやるから、もっと簡単に削れるぞ』
「それを聞いて安心したぜ。アダマンタイトの刃は出回っている数が少ないからな。なんでも、アダマンタイト同士で削らないと、歯が立たないらしい。電極や高熱ではダメなんだとさ」
「へぇ。ああ、なら代金ですが、アダマンタイト鉱石でもいいですか? まだ荒削りで、必要があればもっと不純物の部分を削りますけど」
「おお! アダマンタイト鉱石を持ってるのか! それを早く言え。で、装備は何を作る? どんなものがいいんだ?」
「このショートソードに合わせてください。手に馴染んでいるので、同じ大きさがいいです」
「だが、材質が変わると、重心や重さも変わるぞ。まぁ、これだけ大きい骨なら、六本は余裕で取れるから、重さを同じにしたものと、大きさを同じにしたものと、それぞれ作ってやろう」
「ありがとうございます」
「あと、オレの個人的なオススメなんだが……いいか?」
「もちろん、どんな剣なんですか?」
「剣じゃなくて刀だ。さっきも見たと思うが、この骨はアダマンタイトに次ぐ硬さと強靱さがある。つまり、かなり薄くしても折れないはずだ」
「なるほど」
僕のショートソードと刀、それに柑奈のダガーを作ってもらうことにした。
竜の魂のことは困ったことではあるけれど……竜骨の刀、これが完成すれば確実にパーティーは強くなる。
僕はもう間違えない。トロールのボス戦のような危機になる前に――もっと強くなるんだ。




